見出し画像

私の妻は元風俗嬢⑩

 筆者、復活する。何故復活したかというと、そろそろ連載休止から1年半が経とうとしているからである。あと、そろそろつぶやきだけではアクセス数が取れなくなってきているからである。人から忘れられるのはとてつもなく恐ろしいことである。恐ろしさのあまり、身の毛もよだつ。筆者は毛深いので全身がハリネズミのようになること必至である。

 さて、それではなぜ「ダメ社員の日常」ではなく、「私の妻は元風俗嬢」を更新するかというとこちらの方が、数字が取れるからである。あと、筆者は最近復帰した芸人と同じくらい「驚異的なだらしなさ」の持ち主なので、お金の振込期限を忘れてしまい、せっかく入金されたお金を下ろすことが出来なかった。悔しいので、もう一度、ゼロから出直すことにしたのである。

 前置きが長くなったが、これから第二部を始める。コロナ禍で退屈を持て余している人が増えたであろう。そして、今までの日常が崩壊し、不安に思う人も増えたことだと思う。そんなときは、ギャンブルにその身をやつし世界を憂うエリート会社員である筆者と、男性の陰部をもてあそんで金を稼いでいた妻の恋路をのぞき見して安心してほしい。人生、何とかなるものである。

 第10話 日本はジャマイカ

 さて、我が家で生活することになった妻である。我が物顔で部屋にたくさんの芳香剤を置き、1ルームの我が家はさながら怪しい中国人エステの受け付けのような香りを放っていた。泡洗体はなぜ、大半の店で「泡泡洗体」と二度繰り返すのだろう。中国共産党からの指示に違いない。

 なし崩し的に交際が始まった筆者と妻であるが、妻はそこからしばらくエロマッサージ屋で働き続けた。それは、妻が元々交際していた男が作った借金を返すためであった。妻が元々交際していた男は大麻を売りさばくことを生業にし、そのまま売掛金を持ってどこかに飛んだ。そして、どこかに飛んだ先で逮捕されて、なぜか妻は弁護士からその若い費用を請求されていた。妻はアホなので「関係ね―から!」といって都度弁護士からの電話をたたき切る。そのため、弁護士もトサカに来て、何度も妻に電話をかけてくる。そんなやりとりがかれこれ1か月以上続いているそうだった。

 妻の借金は100万円にも及んでいたが、この借金はその売掛金とイコールではない。売掛金はもはや請求されることはなかったものの、男がその辺の筋の悪い人たちから借りてきた100万円もの金を請求されていた。妻は、ハンドフィニッシュにおいて県内で右に出る人がいないほど熟練したエロマッサージ師になっていたので、「アイツ、ハンドフィニッシュで金稼いでるから、あいつからむしりとろう」という発想になったらしい。ここまで読んで相当に頭が痛くなった読者諸兄もいるだろうが、筆者はこれを間近に見聞きしているのだ。その衝撃たるや、読者諸兄の比にならない。ハッキリ言って、何を言っているのか全く分からなかったので、メモ書きにして整理したくらいである。その様相は園監督の映画の終盤くらいにしっちゃかめっちゃかになっていた。

 交際が始まろうとしていたときに、幸いにも妻の借金(仮)は最後の返済期限を迎えていた。そしてアンダーグラウンドの人間の情報網は結構スゴイ。妻がどうやらエリート会社員と交際が始まったという情報を聞きつけたらしく、妻の携帯には催促の電話などはかかってこなかった。最後の晩、「行ってくるね」と行った妻は近くのコンビニまで行った。筆者は車の中からその様子を見ていたが、あっさりと10万円の入った封筒をチンピラカップルに手渡すと車に戻ってきた。「終わった」。筆者は何も聞かずに車を走らせた。さながら、北野映画に出てくる若手俳優のような表情だったと思う。かっこよかったと思う。

 なにはともあれ、金銭面でエロマッサージ屋で働く必要がなくなったので、筆者と妻は話をした。

筆者「君はエリートの恋人となったのだ。そろそろ夜の世界で働くのは辞めた方がよいのではないか」
妻「何をすればいい?」
筆者「う~む」

 妻はキュートこの上ないが、いかんせん人当たりが悪かった。車で後ろから煽られようものなら急ブレーキを踏み込んで殴り込みに行っていたし、筆者と一緒に酒を飲んだ後に車で帰ろうとしたのでそれをいさめると「ヤりたい(性交したい)だけだろ」と怒鳴りちらしたりしていた。この時は短い手足をバタバタさせていたので、ポメラニアンが怒っているようで可愛かった。

 そこで、なんと妻は「インドに行ってヨガ講師になる」というトンデモ計画を思いついた。ヨガ講師とインド。大学生といい、ベンチャー企業の社長といい、アジアのちょっとした金持ちといい、世の中のアホはインドに集まる。ただ、インドの教育水準は非常に高いと聞く。ダイソンのようにインド人が世界からアホと金を吸い集めているのだ。

 筆者はその夢はどうしても応援できなかった。なぜなら、彼女がインドに行ってしまったら、筆者はハンドフィニッシュされないからだ。あと、インドに行ってヨガ講師になったところで、耳の穴が余計に増えて、口から火を噴かれ、手足が伸びてしまったら素直に愛する自信がなかったからだ。多少のことは我慢ができても、妻が超人になることは許せなかった。筆者はエドモンド本田に近い体型をしていたので、このリーチ差は非常に不利だったのは言うまでもない。

 とりあえず、筆者は「今の店をやめたら?」と言うと、妻は「りょ!」と言って、店長に電話をかけた。

 うん……。いや、もう無理なものは無理なんで。うん……。わかりました……。

 暫時、緊張が走った。そもそも、仕事って電話一本で辞められるものなのか。そんなに、「ついでにリポD買ってきて」みたいなノリでいけるのか。「やめられた?」筆者の質問に妻から予想のナナメ上の回答が返ってくる。

「ガンジャあげるから辞めないでって」

日本はいつからジャマイカになったのだろうか。

#日記 #エッセイ #ブログ #私の妻は元風俗嬢 #連載 #風俗 #野菜#手押し#831#420 #ジャマイカ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?