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「令和の日本型教育」始動。中教審答申を特別支援の視点から読む。

中教審答申発表。その骨子を探る。

2021年1月26日、中央教育審議会はこれからの時代にふさわしい小中学校や高校などの教育のあり方について答申した。

題して、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~すべての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」である。

概要と本文はこちら。

答申発表に際し、大手新聞メディアは「ICTの積極的活用」と「小学校高学年での教科担任制」に焦点をあてて、報道していた。

答申のキーワードは「個別最適な学び」、「協同的な学び」と、その実現へむけたICT教育の推進である。

今回の中教審の骨子について、毎日新聞は、次の5点に整理している。

① 一人1台を基本にパソコンなどの端末を使って学べる環境を整え、高校では従来の対面指導とオンライン授業を組み合わせた「ハイブリット化」を検討すること。

② 特別支援学校の環境改善。

③ 2022年をめどに小学校高学年で教科担任制を導入

④ 高校「普通科」再編。を教科横断型の学習を重視する学科や地域課題の解決に向けた学びに力を入れる学科などの新設を可能にする。

⑤ 通信制高校の教育の質を担保するための規制強化。

以上の5点が骨子となる。これを押さえておけば、中身に踏み込まなくとも教員採用試験の筆記試験などでは十分だと思う。

しかし、実際に教員として働いている身分としては、できるかぎり自分に引き付けた内容に焦点を当てて、今回の中教審答申を読み解いていきたい。

「令和の日本型教育の構築を目指して」特別支援ver.

それでは、今回の中教審答申を私自身の立場に引き付けて読み解くとしたら、どのような点が重要になるのだろうか。勉強、勉強。

現在、教科担として社会科を担当しながら、特別支援に在籍する二人の生徒の担任、そして特別支援教室の国語の授業を担当している。自分で書いていてあれだが、新米教師としてはかなりの仕事量なんじゃないかと思う。

今回の中教審答申には、小目次に「4.新時代の特別支援教育の在り方について」という項目がある。ざっと目を通したところ、特別支援学校に関する項目を除き、大きく次の3点が関係するだろうと思われる。

① 障害のある子どもの学びの場を整備させるために、校内・校外の関係諸機関との連携強化を一層充実させること。
② 障害のある子どもの学びを充実させるための学校・学級経営、授業づくりを進めていくこと
③ 特別支援教育を担う教師の専門性向上

以上3点が自分自身の状況に引き付けて考えた場合のカギとなる項目である。

本文を読めばわかるが、特別支援学校をのぞき、今回の中教審答申においては、何か新しいものが加えられたわけではなく、これまで推進してきた「特別支援教室構想」の具体化、発展にむけたより一層の頑張りが強調されているだけだ。

現場で働いている身からすれば、あれもやっている、これはやれているかな?というチェックリストにすぎないともいえるだろう。

例えば、

特別支援学級と通常の学級の学級担任間や教科担任等との連携による指導体制を整備し、各教科等の学習をさらに充実する必要がある。(中略)また教科学習についても、児童生徒の障害の程度等を踏まえ、共同で実施することが可能なものについては、年間指導計画等に位置付けて、年間を通じて計画的に実施することが必要である。その際、可能な限り、両学級の教育内容の関連の確保を図るとともに、通常の学級においては、ユニバーサルデザインや合理的配慮の提供を前提とする学級経営・授業づくりを引き続き進めていく必要がある。
(令和2年中教審答申: p.61)

本文にはさらっと書いてるけど、このことについて最低ライン以上のことをやれている学校はかなり少ないと思う。

100人が見て100人が納得できる支援体制を構築するのは正直言って至難の業だと言わざるを得ない。長年続けてきたベテラン教師や専門家からみれば、その生徒の教育的ニーズを満たしているとは思えず、もっとこうしたらいいのに、と言われるようなこともあるだろう。それほど、どうしたらいいか分からないこともあるし、学校のハード面の問題でどうしてもクリアできない課題もあると思う。

私も本文を読んで、あれ?あの時、こうすることもできたよな?あれやってみればよかったかもな。などと日々の授業を振り返っていた。

一方で、中教審答申には、近年の動向を踏まえた日本型教育の課題も指摘されている。次は特別支援教育を担う個人の視点ではなく、この国の特別支援教育が直面している課題を整理し、終わりとしたい。

令和の日本型特別支援教育が直面する課題について

今日の特別支援教育が直面する課題は、特別支援教育のあり方が変化するなかで、すべての教師に特別支援教育に関する専門性が求められているということ、である。

・インクルーシブ教育の普及により、特別支援学級に在籍せず、通級での指導を受ける生徒が増加している。
→これまで特別支援学級の生徒を指導する場面が少なかった先生も、様々な障害や特性を抱えた生徒を受け持つことになる。
障害や特性に関する知識を有しているだけではなく、個に応じたわかりやすい指導や指導方法を工夫する実践力を有する人材は依然として不足している。
ただでさえ、教員全体の人材確保が課題となっている中で、特別支援の専門的な経験を有する人材を確保することができるのか。

他にも様々な課題があると思うが、将来的に緊迫した課題となるのは、こうした教育を担う人材をいかに育成し、いかに確保していくのかということになるだろう。

加えて、令和の時代は働き方改革の時代でもある。教育の充実と働き方改革の推進をいかに両立していくのか、について今回の中教審から見えてくるのはICT偏重の姿勢じゃないだろうか。
この点は専門家によって指摘されている。

今次の中教審のキーワードである個別最適な学びを実現するためにはそれを考える時間の余裕を作り出さなければ不可能だ。

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