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世界初!土鍋目線で描いた恋愛小説明書『土鍋ちゃん〜目止めの季節①〜』

おい、そこのボケナス!僕が君の家にはじめて行った日のことを覚えてるかい。そう、あれは、1年前のことだったよね。

いつになく冬の訪れが早い年で、君は仕事帰りにふと立ち寄ったギャラリーで僕と出会ったんだ。

信楽から出てきたばかりの僕はやたら蓋を開け閉めされるのに辟易としていて、そんな僕を君は一目で気に入ってくれて出会ったばかりなのに家に連れて帰ってくれたんだ。

「偶然だね。前の彼も土鍋だったんだよ」と屈託なくいう君。

「会ったばかりなのにこんなことになっちゃっていいのかなぁ」

土でできていて基本的にドキドキしやすい僕の狼狽をよそに

「さ、ごはんにしよ」

そう言って君はいきなり僕の両耳をぐっとつかんで、キッチンのコンロの火にかけようとしたんだ。あの恐怖を僕はまだ覚えてるよ。

君はあの時、目止めをしないままずるずると付き合いはじめた元彼との間に起きた過ちを繰り返そうとしていたんだ。

今の君ならわかるよね。

僕たちの身体は一見滑らかに見えるけど、実は目に見えない無数の穴が空いていて、その穴をふさがずに使うと水が漏れたり、最悪、その穴から染み込んだ水分によって僕たちの身体を傷つけ、やがて!

それが君の元彼に起こったことだったんだ。

僕の命はもう文字通り風前の灯だった。でも、その時奇跡が起きたんだ。

「にゃぁー」

一匹の猫、お世辞にもかわいいとは言えない、僕の3倍くらいは体重がありそうなでっぷりとしたやつがのっそりと顔を出した。

「どうしたの?キャンディ」

「キャンディ?どう考えても饅頭だろ」

「悪かったな。拾われた時は可愛かったんじゃよ。」

「???」

突然のことに口もきけない、(いや、土鍋なのでもともとか)僕を無視してキャンディと呼ばれた猫が続ける。

「ふた鍋続けてパキッといくのを見るのはしのびないのでな。一度だけじゃぞ。」

そういって巨大な猫はこれまた巨大な舌を出して忌々しいピンク色をした肉球をぺろっとなめた。

その瞬間、急にすべてが暗闇に包まれて、僕は何も見えなくなり、何も聞こえなくなり、そして気を失った。

どれくらい経ったのだろう?目を覚ました時、僕はさっきまでいた彼女の部屋にいた。でも何かが違う。そう、僕は今まで僕だった信楽の窯で焼かれた土鍋を見下ろしていたんだ。

そして、土鍋が僕を見上げている。なんでわかるって、そりゃあわかるさ、だってさっきまで土鍋だったんだから。

「僕たち(私たち)入れ替わってる!」

未完

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