53番「メイド長のお気に入りの本」

 フェリシーの待合室の本棚にはフェリシーメイドも知らない秘密が隠されている。

栞「のよ。アカリちゃん」

アカリ「えと、なんて」

栞「なんかこのフェリシーには私たちにも知られていない秘密があるって話。七不思議のひとつにしない?」

 私は栞さんと待合室でお話をしていた。

アカリ「え、えーっと」

栞「もぉ。しょうがないんだから」

 私の口の鈍さに栞さんが小言をもらす。栞さんの唇がかわいい。

 栞さんはキョトンとする私をよそに本棚からなにかを探す。

栞「どこにあったかなー」

 栞さんが膝を曲げて、体育座りのような姿勢のまま本棚から本をさがす。後ろからだきついてみたい。そんな衝動にかられてしまう。

栞「あ、あった! コレコレ!」

 栞さんが本棚から取りだしてきたものはある一冊のマンガだった。

 すらりとした立ち姿で黒のスーツをまとった男前の女性とピンクのワンピースが可愛らしい女性が手を繋いでいるイラストが中央に描かれている。本のタイトルのフォントは金色があしらわれており、きらびやかさと華やかさを感じられる。

アカリ「栞さん、これは?」

栞「これはね。メイド長のお気に入りなのよ」

アカリ「???」

栞「メイド長の愛した人・・・」

アカリ「え、ほんとですか」

栞「・・・」

 ゴクリ。

栞「なんてね。冗談冗談♪」

アカリ「もぉ。ちょっとドキっとしちゃったじゃないですかーやだー」

栞「ごめんごめん。アカリちゃんお反応が楽しくってついね」

 なぜだろう。この本を見た時に親近感がわいた。

 私はメイド長となにか関係しているのかな。それとも・・・。

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