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2.10 fri

  半径5メートルのことしか語れないと仕事を始めてから嘆いていた。今じゃもっと狭く、本当に自分のことしか見えないかもしれない。かつてはもっと視野が広かったのにと言うとなんだか嫌味臭いが、漠然と「社会」に目が向いていたように思う。
  その視野の狭さは嘆くことではないのだ。自然で受け入れていいこと。磨けばいい。鏡を見ながら重箱の隅をつつくようなこと。醜く見えるが、ほじっていれば何か出てくる。恐れてはいけない。生きているから大丈夫。ほじれば垢は出て、色がつく。
  久しぶりにヘッドホンで音楽を聴いた。飲酒の力も手伝ってか踊ってしまった。卑屈にならずにほじろうと素直に思った。

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  やりたいとのたまっていたことでも、義務になると腰が重くなる。思い描く理想と自分のいる場所の違いに愕然としてしまう。から、悲しくならないためにしっかりやっていたいのだ。自分をほじることはおっくうになりがちだが、ほじった後に待っているものが確実にある。そこを見ていないと何にも向かえないよーと、自分に言い聞かせている。楽器触ろう。歌う嬉しさを私は一生忘れたくない。

かなしみはいつしかそこにいた人を羨む気持ち  お湯をかぶれば鳥になり  歌を歌だと気づかずあそぶ

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