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自作詩(こうだたけみ名義)

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こうだたけみ名義で書いている詩。たまに朗読
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#魚

魚とバナナとラクダの話

魚とバナナとラクダの話

魚のキーホルダぶら提げて、この通りを下ってくると、彼が追いついて耳の上にキスをくれる。黄緑色のリュックサックの下に手を突っ込んで、わたしの腰を抱えながら彼は歩くのが好きで、彼の彼女になるんなら、ハイヒールなど捨てっちまいなさい。

お豆腐みたいな携帯電話に頬ぺたをくっつけていると、横目で見たバナナの茶色い斑点がキリンに見えなくもない。

わたしはいつも首を傾げているので、この前独逸語の先生に首がお

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カラカラ、

カラカラ、

海底を歩くシーラカンスの群れが
一斉にでんぐり返しする
脊柱の中の体液が
きゅう
と静かに鳴る

剃り上げた襟足に風を当て
コーヒーをすする
飲み下した熱い液体に
爛れた胃が驚いて
きゅう
と静かに鳴る

ぶらぶらさせた白い足に
突っ掛かけたベージュのパンプス
ポトリと床に落ちた片方へ
爪先を差し込んだ瞬間
きゅう
と静かに鳴る

ハンドルを握る汗ばんだ手が
葉書を飲み込むポストの投函口が
一眼レ

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雨中遊泳

雨中遊泳

雨のなか傘を差す
魚みたいな子供たち
誰一人笑わないから
かえって可笑しい見開かれた目

視界に言葉が散乱する
散乱した言葉たちが産卵する
そこから魚たちが生まれてきては
身体をくねらせている

秋は梅雨時より雨が多いと知った
曇天を横切る快速電車の中で
今日も遅刻しそうになりながら
もっと大きな何かを諦め始めている

特異な季節であなたとわたし
ひとつの接点をふいにする
雨の日は遊泳禁止です

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