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バラ寿司と巻き寿司

 もう20年以上経つのに母の命日前後は当時の事を思い出しつらくなったり笑ったり。

 この時期は毎年何となく心落ち着かない日々を過ごす。抗わずそれでいいと思ってる。たくさん母のことを思い出して辛くなったり笑ったり。そして2月3日の節分には気持ちを切り替えるように心掛けている。

 母は酢めしが好きだったので家でよくバラ寿司を作った。レシピは家庭料理なのでいたってシンプル。

 高野豆腐や干し椎茸人参などを炊いたものを酢めしと混ぜ合わせ、薄焼きたまごとさやえんどうの千切りをのっけて身体に悪そうな色の真っ赤な紅生姜をちらして完成。豪華なものじゃない。

 だけど自分の誕生日はもちろん夫や子どもの誕生日や友だちの家でも持ち寄り食事会の時にも

 『お母さん、ばらずし作って』 

ってお願いする。母は面倒くさそうにしながらも

 『私が作った方が早いし美味しいもんね』

と自画自賛しながら作ってくれる。そして本当にファストフードのように早くて美味しいバラ寿司を作ってくれるのだ。今思えばなんと幸せな時間だっただろう。

 最近は全国的に広まった2月3日の恵方巻き。短時間で見事に何本も巻いて家族をせかす。

『今年はこっち向いて。はい、黙って食べなあかんよ』

 家族全員でその年の『恵方』を向いて巻き寿司をほうばる。喋っちゃいけない。奇妙だ。笑える。喋りそうになったら母が目で叱ってくる。

 今年も節分には巻き寿司を食べる予定だ。母に叱られないよう喋らずに黙々と食べる。そうすると儀式のように私の今年が始まるのだ。

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