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ことばはおそい

ことばって、ぜんぶ嘘なの だって、ことばはおそすぎるんだもん。 私の中で何かが がーーっ、とかしゅんっ、とかなった瞬間から、言葉になるのが遅すぎるっ!! おそいおそいおそい!!! こんなのぜんっぜんうそっ! 言葉になるころには、もう全然違うものになってるんだもん 例えば、お店で素敵なワンピースを見つけて「かわいいっ」って思うじゃない? あ、ってか説明のために「かわいいっ」て言葉を使っちゃったけど、もうその「かわいいっ」も全然アテにならないの。ワンピースを見て最初に生まれ

    • 砂と海

      いろんなことを忘れてきた 拾えなかった。 それなのに、いらないものをたくさん拾ってきた そう思っていた。 何が必要で何がいらないか、まっさらな僕にわかるわけがなかった だから両の手を自然に開いたままにしていると、指の隙間から勝手に落ちていった。 さらさらと隙間を降る砂は、風に運ばれて大きな川に流れていく 僕はその様子を無感情に眺める その川は上流から様々なものが流されており、ひどく汚れていた。 なんとなく川を眺めると、ぬいぐるみ、小瓶、洋服、写真、中には文字やなんかも流

      • ある日々

        今日も保身のために愛を求めて家を出るんだ 苦しいから自分を殺したいから 振り返ればバレンタインデーの空き箱とかいつかあの子が脱ぎ捨てた下着とかもう嫌いになったCDとかそういうのこびりついてて逆方向のベルトコンベアに乗っててそっちに俺を連れ去ろうとしてて それでもなんとかかんとか、家を出るんだ 外にはまあたくさんの光があってどれか一つくらいは本当に掴めるんじゃないかなとか少し思ったりして とりあえず、光の中に出てみる 光はまあ光だよ でもさ、光源がわかんなくて交錯しまくっててぼ

        • 演目 美しさについて

          老いた賢人は世界の全てを知っているという。 みな、彼の言葉を信じた。 賢人は巨大な真実の鏡を使って、美しさは全てまやかしであると語った。 みな絶望した。 鏡の中の我々は骨であり、樹木は根こそぎ朽ちていた。鏡の中でも当然時間が流れており、骨すら少しづつ端から塵になっていくのがわかった。 故郷の緑や市井の暮らしを描く画家は筆を置き、恋情を歌う詩人は口を噤んだ。 私の隣家の若い夫婦も愛し合うのをやめたらしい。 なにもかも嘘っぱちだったのだ。 そのうち全ての嘘が剥がれて、鏡の

        ことばはおそい

          文章を書き始める、所信表明としての

          こんばんわ。朝なんですけど。 つい数日前にnoteに初めて登録をして、文章を書き始めました。 元々何か絵でも漫画でも文章でも、自分の表現というものをしてみたいなと思っていました。 ただ始めるタイミングというのが私には難しく、また情けないことに自分の中から出たものをそのまま出して、自分の空虚さと向き合い、人の目に晒すことが怖かったわけです。そもそも、自分に自信がなかったのです。 生きていると色々な経験もしますし、他人の言葉や表現にもたくさん触れるようになります。不本意な時

          文章を書き始める、所信表明としての

          わたし

          分解と構築、緊張と弛緩、自壊と再生。 刹那ごと続けられる、ふざけた地獄。サーカス。 あなたは絡まったひもそのものなのよ、と誰がが言った。 止まることを知らない、壊れた永久機関。 ばらばらと関連性、因果性を持たないそれらを、真理の槍で貫いてほしい。 ひもを解いたら形がなくなってしまうそう。 わたし。 貫いた槍が女になる。女は消える。 そろそろ飯を食いに行かなくちゃ。

          もしも命が使えたら

          もしも命が使えたら、どんなにいいでしょう 例えば、今朝もあなたが口をつけたマグカップや、駅の電光掲示板なんかになりたいのです 多分、お気に入りのカバンとかではダメです 悪意が微塵も入る余地のない、風景になりたいのです もしも命が使えたら、どんなにいいでしょう 風景は優しいです それは、あなたが本当は優しいからです もしも命が使えたら、どんなにいいでしょう 私は風景になりたいです けれど、ちゃんと私として風景になるのです 悪意のない私として、風景になるのです

          もしも命が使えたら