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中学修学旅行の一番の思い出は「大浴場」だった話

学生時代に何かイベントがあるたびに作文を書かされた。これが僕は苦でね。

「社会科見学で学んだこと」
「楽しかった遠足」
「修学旅行の思い出」

真面目に何かを得るつもりで参加してないから、こういうのがそもそも書けない。そして書いた後にみんなの前で発表する。苦痛極まりないのだ。

ふざけた内容にしてゲラゲラ笑いながら自身の作文を読むアホもいたけど、そういう時は先生がしらけた顔で「真面目にしてください」と一蹴する。
だから誰にとっても耳に心地良い言葉を並べなければならなくて、旅行を通して学んだ学問的な内容を捻り出して書いていたように思う。

僕の中学時代の修学旅行は京都、奈良だった

班ごとに事前に計画し神社仏閣を見て回ったが、当時の僕には歴史物を見て感動する情緒がなかったので奈良の大仏以外はこれといったインパクトを感じず、ただただ「the古風な建物」を写真撮って廻った、という記憶しかない。

その時の感想文もおそらく無味乾燥なものだったと思う。
「法隆寺の五重塔は日本の建築のシンボルとして圧巻だった」とか。
「義満さんの金閣寺が威風堂々としてた」とか。
今なら絶対に書かねー、やらねーって思うことでも非合理の熱量をもって取り組めるのも学生のうちで良いところでもある。

はっきり言って学生時代の修学旅行で最高に楽しいのは宿である。ワイワイがやがや。なぜか分からないけどこの日の夜に意を決して告白する人がいたり、先生の目を盗んで女子の部屋にこっそり入ったり、見張り番が「先生きたー」って合図で寝たフリしたり。
宿での想い出が一番の楽しい記憶である。

大浴場での事件

定番だが入浴は時間割で、クラス単位で入浴する。僕のクラスの男子は15人。いつも馬鹿をし合う関係であっても中学生の頃なんて一番裸を見られたくないお年頃で、みんな下半身をタオルでしっかりとガードして入る。今なんて全然平気だけど、なんだろうね。この年代では何とも言えない変な緊張感があった。

入浴してしばらくして事件がおきた。
「あっー!!」
クラスで比較的おとなしい子の声が大浴場に響き渡る。
みんなが一斉に彼に注目して目を向けると、うなだれて
「やばい。コンタクト落とした。」

うそ〜ん。まじか。
想像してほしい。落としたのは最悪の環境である。浴場内湯けむりで充満しており、水もじゃんじゃん流れている。シャワーを使い続けると床に落ちたコンタクトが水に流されてしまうかもしれないので全員一旦ストップ。
初日から目が見えなくなると修学旅行楽しめないやろうと。普段はさほど仲良くしていない子ではあるが、修学旅行という雰囲気がそうさせるのだろう。みんなが彼を気にかけてコンタクトを探そうとなった。 

15人が彼の周りに密集して、みんな顔を床に近づけて四つん這い。体を丸めてお尻を突き出した状態で探すわけだ。
探す最中に顔を上げたら前で作業してる奴のお尻の穴から体の前に向かう角度で局部の色々が、えーってほどにもろ見えである。
みんなさっきまで必死にガードしてたのはなんやったん?って。人生41年間生きてきたが、後にも先にもあの角度から男のモノを見たことはない。 

次のクラスの時間になって先生が声をかけにきたが事情を説明して延長で探す15人。お尻丸出しで密集したダンゴムシみたいになって傍からみたら異様な光景である。 

結局、見つからなかったけど見つかったのだ。
彼の目にあったのだ。何かの拍子にズレて目の裏側?にいったようで、時間を延長して探している最中にバツが悪そうに「あ、目に残ってた……」って。

いやいや。
今では笑いのネタだが、さっきまで排水溝開けて手をお椀型にして「ちょっと水流してみ!」なんてみんな一致団結した探索活動やってたのに、「最悪やな、お前」みたいになっちゃって。一斉にしらけて各々がイソイソと身体を洗い出した。

ホテルの部屋のアダルトチャンネル事件

今の人に言ってもピンとこないかもしれないが僕が子供だった頃は、ホテルの部屋の備え付けテレビは、画面の横に自販機みたいにコインを入れるところがあって100円入れたら時間制でテレビを見ることができた。
それが時代と共に少しずつ変化していき、この中学の修学旅行の時は無料でテレビは見れるがアダルトを見るときだけはお金を入れなければならないシステムだった。

修学旅行の「しおり」には

「冷蔵庫を開けるな」
「テレビにお金を入れるな」
「小遣いは10000円以下」

と注意喚起があったが、絶対に守るはずがない3事項である。

この注意喚起は、初日の夜にいとも簡単に破られた。消灯するまでは別部屋の人が出入りするし、意識高い系男女の告白タイムだったり。
僕たち変態がアダルトビデオをこっそり見るには落ち着く環境ではない。
だからアダルト鑑賞会の開始は消灯後で、集合は「やめとけよ」という優等生がいない部屋で決行された。

「消灯時間だから電気消して寝ろよ!!」
先生の見回りが終わった後に、各部屋の変態どもが一つの部屋にソロリソロリと忍び足で集合していく。全員集まったところで部屋のカギを閉めて、よし!準備完了。
この時がワクワクの最高潮だ。

さぁ、テレビのボリュームを最小限にしてコインを投入。

ビデオが作動する。
軽快なポップな音楽と共に、、、
「え、、、っ!?」
なんとテレビに映り出されたのは「奈良と京都の歴史ガイド」だった。
おそらく学校から言われて、ホテル側がビデオを事前に入れ替えたのである。

いや、それはないわ。
だったらしおりに「お金入れるな」の注意喚起はいれるなよって。
ダチョウ倶楽部の「押すなよ、絶対に押すなよ」ではないが、こう言われるとアダルトチャンネルが見れると思うし、好奇心にかられるのが中学生である。

仕方がないから健全に「歴史ガイド」をみんなで鑑賞したが、おかげで翌日行く寺の歴史感がめちゃくちゃ心深くに染み渡った。

しかし、修学旅行ってなんで短期間なのに旅先で色んな事件があって楽しいのだろうね。
小学校の時だって別府温泉で誰かが間違って別の人のパンツ履いちゃって当人は「盗まれた」って大騒ぎ。
最終的に旅館でお通夜みたいな学級会になって、男子全員、先生と当人立会いの下、一人一人履いてるパンツを確認されたわけ。今なら絶対に問題になるけど時代的にはそれが許された。
当時の小学6年生なんてみんな白のブリーフなのに、自分のパンツか他人のものかなんて分かるわけがないはずである。
それなのに「いや、これはちょっと違うな」とか「自分のパンツと生地が近いな」とか。
犯人扱いされた奴なんて「俺のパンツやって!」って怒りだして、外野はそれ見てゲラゲラ笑って。ほんと楽しかった。

いずれにしても、修学旅行は宿での思い出が一番濃いのだ。

ほんで、これは…。

オンライン修学旅行では京都の善峯寺と中継を結び、同校の卒業生で帝産観光のバスガイドの磯島楓さんが敷地内を回って歴史や見どころを紹介した。ほかに録画した清水寺や天龍寺を紹介する動画も上映、生徒は旅のしおりを手に、画面越しに京都を楽しんだ。

旅の「しおり」に何が書かれてあるのだろう。
「23時消灯です」
「夕食後は異性の部屋に入ってはいけません」 
あるか?守らないで楽しい注意喚起は。

前も書いたが、自粛期間中で様々な制限を受入れている国民にとってかけがえのない楽しみとなる「イベント」については「この方法でやりましょう!」と明確に国、または地方自治体が発信してほしいものである。
イベントは人生の思い出として記憶に深く刻まれる。特に学校のイベントは人生で一度きりのものが多い。

修学旅行で心に刻まれる思い出は、友達と夜通し語らいすることや非日常の開放感の中で一緒に過ごす時間だろう。
同じ時に同じ学び舎で過ごした仲間と最後の絆を深める場である。 

生徒が体育館に並んだあの写真の顔。ここに楽しい思い出も仲間との絆も何も感じない。
宿での消灯後の最高の夜を奪ったのである。
意識高い系男女の告白タイムも奪ったのである。
僕なんかが考えることでもないが、日本の向かっている先は本当にこんなので良いのだろうか。

早坂美咲さん(3年)は「修学旅行の中止は残念だけれど、少しでも京都の雰囲気を味わえてよかった。京都に行きたい気持ちが一層強くなった」と話した。

うん、なんて優秀な回答なんだろうと思うけど、あー僕も「法隆寺の五重塔は日本の建築のシンボルとして圧巻だった」って作文に書いてたなぁ、なんて。

いやいやごめんなさい。僕と早坂さんを一緒にしたらだめですね。
だけど誤解を恐れずに言えば、大人になったら京都なんていくらでも行ける。いつでも行ける。でも3年間過ごした大勢の仲間との修学旅行には行けないのだ。
宿にだっていつでも泊まれる。高級宿にも泊まることができる。
でもあんなに楽しかった宿には二度と泊まれないのだ。
それがおじさんは悲しいのです。

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