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地域の学びを他の地域の学びにする -第15回だれ一人取り残さない防災研究会(ゲスト:株式会社御祓川 森山奈美さん)

みなさんこんにちは。チャレコミ防災チームの瀬沼です。

今回は、2023年9月19日に開催されただれ一人取り残さない防災研究会の様子をお伝えしたいと思います。
今回はゲストとして株式会社御祓川の森山奈美さんにもお越しいただき、2023年5月に発生した珠洲沖地震のその後の様子をお伺いしながら中間支援組織としての役割を改めて考える機会になりました。


地震をきっかけに地域の資源を耕し担い手を増やす

御祓川としての事業の大きな転換点となったのは2007年に発生した能登半島地震でした。この地震をきっかけに能登の商品を地域の外に売るための「能登スタイルストア」や、地域の課題解決の担い手を育てる「能登留学」事業をスタートしています。

また、ここ数年はコロナ禍を経て地域の経営者の方々が「(余力ではなく)自分たちの事業そのものを通してどのように地域に貢献するか?」に関心が高まっていることも感じ地域の金融機関と連携した「TANOMOSHI」という経営支援プログラムをスタートしている中で発生したのが今回の珠洲地震だったそうです。


発災から4か月後の現在地を知る

今回のゲストとしてお越しいただいた森山さんは、6月19日に開催した第12回の勉強会の際にもゲストとしてお越しいただきました。(その時の記事はこちら
その際は発災直後にどのような動きをしていたのか?を中心にお話しいただきましたが、今回は発災から4か月たち、直後の動きから具体的にどのような変化に繋がっているのかお話しいただきました。

ゲストプロフィール
株式会社御祓川 代表取締役 森山奈美さん

石川県七尾市生まれ。 横浜国立大学工学部建設学科建築学コース卒業後、計画情報研究所入社。 都市計画コンサルタントとして、地域振興計画、道路計画等を担当。 民間まちづくり会社・御祓川(みそぎがわ)の設立に携わり、1999年より同社チーフマネージャーを兼務。2007年19年より現職。2009年に、経済産業省「ソーシャルビジネス55選」に選出。近年は「能登留学」で地域の課題解決に挑戦する若者を能登に誘致している。
様々な主体が関わるまちづくりのつなぎ役として、能登の元気を発信し「小さな世界都市・七尾」の実現を目指して日々、挑戦中。

珠洲沖地震で取り組んだ支援

今回の珠洲沖地震で取り組んだ支援は直後から現地入りし、商工会議所や、もともとつながりのあった事業者さんにお話をお伺いした結果、「御祓川が得意とする産業支援の分野で、拾いきれないニーズを拾い、プロジェクト化を図る」ことに集中しました。

当日の投影資料から抜粋

(1)株式会社ノトハハソ(炭の製造・販売)の支援
➀被災状況 
 稼働中だった3基の窯がすべて破損し、炭の生産ができない状況となった。また、工場の裏が崖になっており、度重なる地震により地面が少し下がり、工場敷地内に地割れが数か所発生している。工場裏の崖の方に工場ごと地滑りする可能性がないか、年内を目途に経過観察が行われている。
➁支援内容と成果
 窯修繕のスケジュールの作成およびボランティアの募集、震災を踏まえた今後の経営計画の策定を支援。3基の窯のうち、2基の修繕が完了。残り1基の修繕スケジュール及びボランティア募集について継続して支援中。

(2)いかなてて(スパイスカレー&カフェ)
➀被災状況
 店舗の建物が破損。現在は修繕済みで店舗営業を再開している。しかし、震災後は例年に比べて観光客が減少して売上に影響が出ている。店主の糸矢氏は、珠洲市外での継続的なポップアップの開催による売上確保を希望。
➁支援内容と成果
 2023年7月12日に、七尾市内のまいもん処いしり亭にてポップアップを開催。用意した50食が開店1時間ほどで完売。今後の継続的なポップアップの開催に向けて前向きに話が進んでいる。

(3)櫻田酒造(日本酒の製造・販売)
➀被災状況
 珠洲市蛸島町にある会社建物が破損。会社建物内で保管していた日本酒の瓶が多数割れて被害が出た。現在は日本酒の製造・販売を再開している。
➁支援内容と成果
4名のスタッフ(代表森山・学生3名)で会社建物内の片付けを支援。その後、販売促進のため能登スタイルストアでの商品取り扱いを開始。2023年7月末時点で、8,395円の売上を達成。(酒蔵特集全体では91,806円)

平時のつながりのために事業を続ける

今回のお取り組みで印象的だったのは、「能登スタイルストア」があったからこそ迅速な支援を行うことができた。というエピソードでした。
御祓川の所在地である七尾市と珠洲市はあまり日常的に行き来する距離ではありません。しかし、能登スタイルストアを通して今回被害があった珠洲市の事業者の方々とのつながりがあったからこそ、すぐにヒアリングすることができたとおっしゃっていました。
そして、今回の出来事をきっかけに能登スタイルストアを今後も事業として継続していくことを取締役会でも話し合ったというエピソードが象徴するように、様々な形で日常のつながりをつくっておくことがいざというときの力になることを実感しました。

また、今回の珠洲地震を経て、地域の中により多くの新たな担い手を発掘することや、より広い範囲から支援を受け入れる体制をつくることの重要性を感じたということでした。
そうした繋がりも平時のつながりから生まれていくもの。今後も事業や平時のプロジェクトを通してそうした繋がりをつくっていくことが中間支援組織には求められているのだと強く感じる機会になりました。

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だれ一人取り残さない防災研究会では、災害が起こったときには日常からのつながりが重要になると考えています。
そのために、都市部の大企業や研究者の方々、地域のNPO、中間支援組織など立場の異なる方々が日常から学びあい、つながりをつくることで「もしも」の時にお互いのリソースを持ち寄れる関係性をつくること。
話を聞くだけでなく、参加するそれぞれの主体が自分たちの防災・災害支援に対しての取り組みを相談したり、仲間と組んで実際にやってみる機会にすることを目的に開催しています。

毎月第3月曜日に勉強会を開催していますので、ご関心のある方は以下のホームページをご覧いただき、研究会メンバーにお申し込みください。


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