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1200人と作り上げてきた100回の「一生に一度のひとさら」

2019年10月27日にオープンした食堂ごゆるり。先週2022年7月30日でついに100回目の「一生に一度のひとさら」を皆さんに提供することができた。

食堂ごゆるりの「一生に一度のひとさら」とは

食堂ごゆるりでは、来てくれるお客様全員に事前アンケートに回答してもらう。その中で、好きなもの・苦手なもの・食べたいもの・好きな色・最近の体調などいろいろなことを聞いていく。それから、集まったみんなの回答をノートに全部書き出して、共通する要素や取り入れたい一人ひとりの要素を選び、要素同士を掛け合わせてメニューを考えていく。当日は、みんな一人ひとりの要素が詰め込まれた(その一人ひとりがいないと実現し得ない)その日限りの「一生に一度のひとさら」ができあがる。

どうしてこんなことをしているかというと、みんなに「自分のことを想ってる人がいる(自分が大切にされている)」ということ、そしてその人がいたからこそこのひとさらができた、つまりその人が必要な存在であることを、感じてほしいから。

食堂を始めるまでのストーリー

私は元々、「食をとおして、みんなをハッピーにしたい!」という自分の人生のテーマをどうやって形にしようか、と考えながら、会社員として働いていた。

食堂を始める前から、月に2~3回友達や先輩を呼んでおうちごはん会をしていた。その日に来てくれる人たちの好きなものから、今日はどんなものがいいかな〜どんなごはんならみんな喜ぶかな〜とみんなの顔を思い浮かべながら考えてご飯を作るのが最高に楽しかった。みんなが喜んでくれるのが本当に嬉しくてにやけてしまうくらい幸せで、いつか、ひとりひとりを幸せにできるお店をやりたいなぁという思いが募っていった。

そんなとき、2019年2月の誕生日プレゼントに高校からの親友が「食堂かたつむり」という小説をプレゼントしてくれた。そこには、1日1組限定で、食堂を営むリンコがその日のお客様へ想いを込めてその日限りのフルコースを提供する、という物語が描かれていた。「これこそ、私が思い浮かべていたものだ」と、文字通り心が震える感覚を覚えた(そんな小説を私にプレゼントしてくれた親友には、本当に頭が上がらない。)

「こんな食堂をやりたいんだ!」という思いを、大学から一緒にいろんなことに挑戦してきた親友に話した。すると彼女が、一緒にやりたい!やろう!と言ってくれた。

早速、週末に日暮里の谷中銀座商店街でカフェを始めた会社の同期がいたので、お店を使わない時間を私たちに使わせてもらえないかと相談したところ快諾してもらえた。それから、お店の名前やどんな空間にしたいか考えたり、お皿を1枚1枚探しに行ったり、お世話になるお米農家やまざきさんの稲刈りのお手伝いに行ったり、一つ一つ丁寧に選び積み上げながら準備を進めていった。

2019年10月についにオープン!今振り返ると、最初は盛り付けもまだ慣れていなくて、写真を見返すと少し恥ずかしい気持ちになる。それでもオープンした日から、本当に美味しかった!ときてくれた人が言ってくれたのは、大きな力になった。

独立の決意、食堂の休業から再開に至るまで

半年後の2020年3月、COVID-19の流行が日本でも本格化して、緊急事態宣言。ごゆるりも休業する決断をした。同時に私はこの期間に「自分はどうやってこの人生を終えたいか?」と何度も考えた。最終的にGoogleドキュメントに自分の人生のマニフェストをまとめて大先輩に送りつけ、先輩から力強いエールをもらって、1年後には会社を辞めてごゆるりで挑戦しよう!ということを心に決めた。

2020年夏、部屋の更新のタイミングだったので、住んでいた学芸大学から、大学生の頃から大好きだった街、西荻窪に引っ越してきました。1年後に独立することは決意したものの、どうやって食堂を再開しようかと悩んでいたところ、引っ越してきた数週間後に、Twitterで西荻窪の「暮らしのいろいろ、ていねいに、」というシェアカフェ(複数のカフェが曜日時間帯ごとに交代で共有しているカフェ)が週末のカフェを新たに募集しているというのを発見した。

その「ていねいに、」という場所は、大学2年生の時に、前述の『食堂かたつむり』をくれた高校の親友が「まさきが好きそうなお店があるよ」といって連れてきてくれた場所で、それ以来Twitterをフォローしていたのだった。

私は運命的なものを感じて、すぐさま「ていねいに、」のオーナーに連絡を入れた。その後、面談を経て「ていねいに、」で食堂ごゆるりを半年ぶりに再開させてもらえることになった。

ようやく人に会えるようになってきたこの時期、大学同期で、食堂にも何度か来てくれていた二人が家に遊びにきてくれて、おうちごはん会をしていた。その時に、私がごゆるりを通して実現したいことを話したところ、二人が「何かできることがあったら言ってね!」と言ってくれた。最初に食堂を一緒に始めた相方は結婚して日本を離れることになっており一緒に続けるのが難しくなっていたので、この二人に、食堂を再開するにあたって、「ごゆるりファミリー」として食堂を手伝ってくれないか、という相談をしたところ、二人とも快諾してくれた。そのほかにも、手伝いたい!と言ってくれる仲間がいて、ファミリーたちが週替わりでお手伝いに来てくれることになった。2020年9月20日に、ついに食堂の再開。西荻に引っ越してきてからは、今までは友達か友達の友達のみが来てくれる状態だったのが、どんどん全くつながりがないお客様も増えていった。

1200人とつくってきた「一生に一度のひとさら」

感染症の流行の状況とともに苦しい時期もあった(今もある)が、それも乗り越えて、本当に嬉しい新しい出会いと再会がたくさんあって、ここまでやってくることができた。2019年10月の1回目の「一生に一度のひとさら」から7月30日に迎えた100回目までに、食堂に来てくれたのは約1200人。その一人でも欠けたら、そのひとさらは実現しなかった。これまでごゆるりにきてくれた全ての人に、改めて感謝の気持ちを伝えたい。そして、「こういうことがやりたいんだ」と思いを伝えた時に、力を貸してくれる人がいつも私の周りにはいた。彼らへの感謝は簡単に伝え切れないけれど、間違いなく、彼らは私にとって一生大切にしていきたい存在だ。

これからも、みんなの心もおなかもハッピーになる「一生に一度のひとさら」を、みんなと作っていきたいと思う。

いただいたサポートは今後のごゆるり活動に活用させていただきます。