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    気ままに素直に碧いままの、日記。

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    2022年春夏、カウチサーフィンを使い、ヨーロッパを1人旅したときのこと。

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【生活の哲学】 #2 耳が遠い人の音の世界

私の祖母は耳が遠い。それは数年前から顕著になり、今は大抵の言葉は一度では伝わらず、二度、口の動きがよく見えるように大きな声で簡潔に伝える必要がある。 周りの人は、大抵そうする必要があることを心得ているから、表情を見て声が届かなかったことに気がつくと、ゆっくり大きく、もう一度伝える。しかし、何度も「え?」と聞き返されることにピリリと苛立ち、投げやりに言うような場面もある。「ごめんね、聞こえなかったの」と小さく申し訳なさそうにする祖母を悲しく思いつつ、私もそんな風にチリチリと苛

    • 【暮らしを旅する日記】ドイツ編 ep. 3

      📍Hamburg (Germany) 13 Apr. 2022 あてもなく街をふらつく傍ら、日本の友人に電話を掛けてみた。こんなダラダラとした時間によく付き合ってくれるものだと感謝しつつ、この空間と、彼女の空間を、どうしたって共有しきれないことが少し寂しくもあった。 早くもデロデロと溶け出したピスタチオジェラートを片手に、港を目指しひたすらに歩く。照り付ける日差しは、もはや初夏のようですらあった。 港でSと待ち合わせ。無造作に並ぶコンテナをオフィスに、仕事をしているの

      • 【生活の哲学】 #1 ほんとうに 「血」が繋がってる?

        先日、親戚みんなで夜ご飯を食べた。そのメンバーが一同に会するのは初めてのことだった。そしてそれは、おばあちゃんが長いこと望んでいたことでもあった。 初めてだから、居心地の悪いこともあるだろう。気まずさもあるだろう。だけどこの時間があることを私は嬉しく思った。 先日高校に入学し、もう勉強に追われて大学受験がチラついている高校生の従姉妹。それでも今を感じてほしい、それくらい今のあなたは眩しいのだ。なんて言うと、「あんたいくつよ」と笑われる。でも、真剣にそう思うよ。 数日経っ

        • 【生活の哲学】 #0 碧いままで

          気楽に、気負わずに、日記を書いてみようと思う。私は完璧主義かつ中途半端なところがあって(今のところは自分をそう見ている)、そのせいで何かを形にするのにはいつも気後れする。 でもとにかく書いてみよう。だって毎日こんなにも鮮やかで、美しい。そしてそんなことを簡単に忘れてしまう。 以前は5年日記を2年目くらいまでつけていたのだけど、電車の網棚にリュックごと忘れた時から、ショックでなんだか書く気力がなくなってしまった。 なにか思うことがあると携帯に日付と一緒にメモを残すのだけど

        【生活の哲学】 #2 耳が遠い人の音の世界

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          【暮らしを旅する日記】 ドイツ編 ep. 2

          📍Hamburg (Germany) 13 Apr. 2022 もぞもぞと起き上がる。ソファベッドの固いところと柔らかいところの間で眠ったせいか、体がところどころカチカチする。 すでにSと彼女の恋人は仕事へ出ていた。しんとしたリビングをペタペタと歩き、おもむろに冷蔵庫を開けてみる。二日目のカレー、フルーツ、ヨーグルト。それらの横を通り過ぎ、上の段の隅っこに入った缶に手を伸ばす。昨晩、なんでも食べていいからね、と端から端まで説明してくれた中で、その缶に興味惹かれたのであっ

          【暮らしを旅する日記】 ドイツ編 ep. 2

          【暮らしを旅する日記】 ドイツ編 ep. 1

          昨年の春と夏、Couch Surfing というサービスを利用して、様々な人々の生活を覗きながら旅をしました。その日記を少しずつ、残そうかなと思います。 📍Hamburg (Germany) 12 Apr. 2022 ハンブルク駅から普通列車とバスを乗り継ぎ東へ30分、夜7時前、ようやくSの家に辿り着く。(バスや電車で1度もチケットを確認されずびっくり)。 川辺に建つ小さな小屋のようなお家。まるで秘密基地みたいにひっそりとしたその建物の前で、Sは彼女の友人と共に私を迎

          【暮らしを旅する日記】 ドイツ編 ep. 1

          【暮らしを旅する日記】 デンマーク編 ep. 5

          昨年の春と夏、Couch Surfing というサービスを利用して、様々な人々の生活を覗きながら旅をしました。その日記を少しずつ、残そうかなと思います。 12 Apr. 2022 📍Esbjerg (Denmark) - Kolding - Hamburg (Germany) Fanø島を後にした私は、ドイツのハンブルクを目指し、経由地点のKolding駅へ。乗り換えの仕方が分からずにいると、乗る予定の列車が出てしまった。どうやら駅のコンビニ(セブンイレブン!)で購入す

          【暮らしを旅する日記】 デンマーク編 ep. 5

          【暮らしを旅する日記】 デンマーク編 ep. 4

          昨年の春と夏、Couch Surfing というサービスを利用して、様々な人々の生活を覗きながら旅をしました。その日記を少しずつ、残そうかなと思います。 📍Esbjerg, Denmark 12 Apr. 2022 その夜から、ひどく体調を崩してしまい、5日ほど寝込んだ。彼女が家を空けるため次の日には出発する予定だったが、「良くなるまで好きなだけ寝てていいよ。モルモットたちのお世話をお願い。」と、留守の間も私を寝かせてくれた。寝ても覚めても気分が悪く、カーテンの奥に明る

          【暮らしを旅する日記】 デンマーク編 ep. 4

          言葉の限界を知りながら、それでも言葉にする。そこからコトバを受け取る人がいると信じて。

          言葉の限界を知りながら、それでも言葉にする。そこからコトバを受け取る人がいると信じて。

          【暮らしを旅する日記】 デンマーク編 ep. 3

          昨年の春と夏、Couch Surfing というサービスを利用して、様々な人々の生活を覗きながら旅をしました。その日記を少しずつ、残そうかなと思います。 8 Apr. 2022 📍Esbjerg, Denmark 夜ごはん、このレシピ本から選んで〜。と、パラパラめくって、アプリコットと豆腐のカレーに決めた。 スーパーマーケットまで、ローラーシューズで茜色の街を泳ぐ彼女。この景色のこと、忘れないんだろうなと思った。遠のく背中を自転車で必死に追いかける。 「デンマークの

          【暮らしを旅する日記】 デンマーク編 ep. 3

          【暮らしを旅する日記】 デンマーク編 ep.2

          昨年の春と夏、Couch Surfing というサービスを利用して、様々な人々の生活を覗きながら旅をしました。その日記を少しずつ、残そうかなと思います。 8 Apr. 2022 📍Esbjerg, Denmark 早朝、まだぼんやりする頭で彼女の支度する音を聞いていた。再び目が覚めると、時計はお昼前を指している。ソファに沈んだ体を起こし、改めて部屋を見渡してみる。日の差し込んだ部屋は昨晩とまた少し違って見えた。あちらこちらで植物が葉を伸ばし、窓辺には小さな苗たちが並んで

          【暮らしを旅する日記】 デンマーク編 ep.2

          にわか雨。濡れたアスファルトから湿った匂いが立ち昇る。埃っぽくてほのかに甘い。春だった。

          にわか雨。濡れたアスファルトから湿った匂いが立ち昇る。埃っぽくてほのかに甘い。春だった。

          「つながりが大事」なんて知った顔で言うのは、私がずっとさみしいからなのかもしれない。 さみしい。素直になりたい。と、ずっと叫んでいる。でも分からないのだ。人と繋がる感覚も、その方法も。それがたまらなく悲しくて、いやになる。 なんて悲しいことなのだろう。ひとりよがりなのだろうか。

          「つながりが大事」なんて知った顔で言うのは、私がずっとさみしいからなのかもしれない。 さみしい。素直になりたい。と、ずっと叫んでいる。でも分からないのだ。人と繋がる感覚も、その方法も。それがたまらなく悲しくて、いやになる。 なんて悲しいことなのだろう。ひとりよがりなのだろうか。

          憎しみの行き場と「怒る」という現象について

          ちくっと刺さる言葉には、憎しみがこもっている。刺した相手にはそれが伝わる。それって必要なことなのかな。 怒るって何か。ルールに則っていないから、その責任を持つ人が怒る。でもそのルールってそもそもなに?ってはなしはしない。 怒られて、泣き出したり、言い返したりするときって2つあると思う。ひとつは、その説教が的を得ていて、恥ずかしい時。もうひとつは、その説教に理不尽な点があって納得がいかない時。後者の可能性があることを常に想像して、相手の心を見て、耳をすませることのできる人で

          憎しみの行き場と「怒る」という現象について

          【暮らしを旅する日記】 デンマーク編 ep. 1

          昨年の春と夏、Couch Surfing というサービスを利用して、様々な人々の生活を覗きながら旅をしました。その日記を少しずつ、残そうかなと思います。 📍Esbjerg, Denmark 7 Apr. 2022 緊張する私に、隣に座る男性が話しかけた。デンマークから友人たちとスコットランドへ旅行に訪れていたという。話し込んでいると、ほどなくして1時間遅れで飛行機は着陸した。 彼らと別れ、泊めてもらうEsbjergという町へ向かうためバスに乗り込む。知らない言葉、

          【暮らしを旅する日記】 デンマーク編 ep. 1