ポテトチップスから始まるcriticalthinking
持続可能な開発目標や環境保全といったキーワードが叫ばれて久しいが、これらの問題は非常に複雑であり、簡単に解決するものではない。
高校生という発達段階においては、安易に解決法を考えさせ自己満足に浸るよりも、見る角度によって答えが変わるような複雑な問題と向き合い、モヤモヤしながらも考えることを止めない態度を育成することこそが重要であると考える。
概要
主に森林破壊について取り扱い自分事化を目指す。
最終的にモヤモヤと苦悩する姿を目指す。
最終成果物として小論文を課す。
実践内容
1時間目 質問づくりおよび論文の最低限構造の学習
主張アマゾン大火災「地球の肺」の危機を救え
を質問の焦点とする質問づくり活動を実施する。
質問の焦点は時流に乗り、随時変更する。
作成した質問については回収しておく。
質問づくりについては以下の書籍に詳しい。
https://g.co/kgs/6wAc8b
小論文の最も単純な構成について恋愛相談を題材にして学ぶ。
【why-because】の構造を頭に入れる。生徒の発達段階によってはより深い論文に関わる指導を行う。
2時間目 買い出しおよび導入
1人100円程度を目安にお菓子を買いに行く。難しい場合はコチラで用意する。お菓子は無くても良いが、最終的な学習効果に違いが現れると考えられる。
なお、予め【植物油脂】を成分に含まないお菓子をこちらで準備しておく。
次に、授業者が集まったお菓子を【植物油脂】の有無で2つの山に分け、以下の問いを投げかける。
生徒達は自由にお菓子を手に取って調べる。その内、答えに気付くものが現れる。この時は「何にでも油が使われているね!カロリーに気を付けないといけないね。」程度の解答をし、本質に触れない。
(なお、既にこの先が予想できている生徒がいたとしても問題ない構成になっている)
残り時間で以下の問いについて考える。
考えたことを共有して終了。
3時間目前半 GoogleEarthによる調査
以下の問いを提示する。
ある程度時間を取り、発見したら根拠をもって説明するように促す。こちらの想定した答えでなくても否定はしない。ファシリテートに努める。
ボルネオ島は一見すると緑に覆われており、森林破壊が進んでいるようには見えない。しかし、緑の所をよくみると長方形に区画されており、森林ではないことがわかる。
気が付く生徒がいてもいなくてもある程度時間を取った後、「こんなのみつけた子がいるんだけど~」「ちょっと僕が気になったんだけど~」といった感じで
「この長方形一杯あるのよね?何やと思う?」
と問いかける。
資料と課題を配布し、
「ここからは小論文を書くための材料を集めます。ある程度問いを用意していますが、気になったことは逸脱して調べていって構いません。」
「自由にチームを組んで対話しながらして下さい。」
「あと先に買ったお菓子を食べながらします!」
「ワークシートは何枚かあるので、文章になっていなくても構いません。とにかく考えて記録してください。考えたら僕と対話して説明してください。次のワークシートと追加のお菓子をあげます!」
という風に提案する。提案内容は生徒の集団を見ながら変更する。
3時間目後半~5時間目 生徒活動
資料とネットや既習事項などから考えていく。
質問事項はあくまで一例である。先の質問づくりで作成したものを交えておくため随時変わる。
ワークシート1
ワークシート2
ここまでくると6の質問の真実に気づく生徒が出てくる。なお、実際には動物園では無く保護施設である。模範的な解答は以下の通りである。
ワークシート3
この辺りから問題の多面性に触れていく。
ワークシート2まででは短絡的に「パームヤシ以外を使えばよい。」という答えに辿り着く生徒が少なくない。しかし、パーム油の生産効率は非常に高いことを知ると他の答えを探す必要がでてくる。
また、パームヤシ以外の要因でも森林破壊はされており、簡単な問題ではないことを肌で感じていく。
ワークシート4
最後に批判的態度を身に付ける。
最初に質問づくりに用いた主張は生物学的根拠に基づいていない可能性が示唆されてくる(それでも熱帯多雨林が比較的多くの酸素を放出しているのも事実ではある。)
また、この情報化社会において安易に情報発信する危険性についても触れている。
6時間目 小論文作成
切り口の違うテーマで難易度を変えていくつか準備する。
今回は以下の3つを準備した。
「主張アマゾン大火災「地球の肺」の危機を救え」について小論文を書きなさい
学ぶとは教科書を覚えることですか?教師の役割は教科書の内容をわかりやすく伝えることですか?学ぶということについて小論文を書きなさい
今後ポテトチップスをみてどう感じますか?自由に書きなさい。
結果と考察
少なからずの生徒がアマゾンは地球の肺ではなくそこまで多くの酸素を供給していないだろうという予想を立てていた。しかし、だからといって熱帯多雨林を破壊して良い理由ではないことにも触れ、環境問題の奥深さや難しさを感じたようだ。
学ぶということについては大分部の生徒が教科書を覚えることではなく、教師の役割も知識伝達をすることではないと答えていた。しかし、実際自分たちだけで学習を進めることができる生徒は少ないため、これからの教師は生徒の非認知能力やコンピテンシーといった部分を育成できる授業をデザインすることが最も重要な事項であるように思う。
ポテトチップスについては、ほとんどの生徒が食べるのをやめないし、やめるのも違うと思うと答えた。ただ、食べるときには思い出すだろうし、知らないより知ってよかったという意見も多く、当初想定したモヤモヤ感を残すことができなのではないかと思う。
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