![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/148268827/rectangle_large_type_2_3789ffcefef901c60a3503c28578cc42.png?width=1200)
Photo by
hanausagi33
丘の向こうの診療所
生きているのは自分のためだよ
最初はそうやって産まれてきたのさ
そのうち大切なもので溢れていくから
誰かのために生きたくなるの
遠くにみえる白い花
丘の向こうの診療所
生きていることを投げ出すくらい
疲れきったあとに見る
この丘から見る海は
おそろしく綺麗で
今まで募らせていた暗いものも
すべて美しい絵画に
されてしまう
ねえわたしは自分のために生きているよ
傷つけられた日も
優しくされた日も
手をつながれた日も
淡い色のストールを
そっと草むらに返すように
この丘へ来て
そして海をながめるの
わたしはわたしが好きだから
海とおなじ
うまれたときから
この青しか知らないように
わたしの大切なものはここにしかないから
遠くにみえる白い花
丘の向こうの診療所
つめたい爽やかな風が
わたしのそばで笑ってる
「それでいいんだ」
そう言って高い雲のところへ
消えてった
茶埜子尋子
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?