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丘の向こうの診療所



生きているのは自分のためだよ


最初はそうやって産まれてきたのさ

そのうち大切なもので溢れていくから

誰かのために生きたくなるの


遠くにみえる白い花

丘の向こうの診療所


生きていることを投げ出すくらい

疲れきったあとに見る

この丘から見る海は

おそろしく綺麗で

今まで募らせていた暗いものも

すべて美しい絵画に

されてしまう


ねえわたしは自分のために生きているよ


傷つけられた日も

優しくされた日も

手をつながれた日も

淡い色のストールを

そっと草むらに返すように

この丘へ来て

そして海をながめるの


わたしはわたしが好きだから

海とおなじ

うまれたときから

この青しか知らないように

わたしの大切なものはここにしかないから


遠くにみえる白い花

丘の向こうの診療所


つめたい爽やかな風が

わたしのそばで笑ってる


「それでいいんだ」


そう言って高い雲のところへ

消えてった



茶埜子尋子

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