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11.外見の美しさと心の美しさ、どっちが重要?

西田さんのドタバタお騒がせ劇場に付き合った日のお昼。

午前中の仕事は、随分押したので、
いつもより遅いランチになり
真ん中のカフェスペースで恵子さんと一緒になった。

恵子さんは、髪型も服装もいつも上品でキマっていて、
雑誌のV E R Yから飛び出してきたような、お洒落な先輩ママだ。
見かけに反して、私の毒舌(もはや悪口)を面白がってくれ、
恵子さんも、中々の毒舌。
時に、ついていけない妄想と下ネタでいつも笑わせてくれる。
笑いのツボが非常に合うのだ。

たわいもないお喋りをしながら、
いつもの冷凍食品を優雅に食べていると、
智子さんもランチタイムに入ったようで私たちの隣にテーブルに座った。

恵子さんと智子さんは同い年で仲がいい。
早速、智子さんが、午前中の惨事について話し始めた。

ちょっと、聞いてくださいよー。
午前中、西田さん、ほんと酷かったんですよー。
2人で振り回されて!
ねっ!!

何があったの?
と恵子さん。

二転どころか、三転したんですよ!!

智子さんはドタバタの一部始終を恵子さんに説明した。

あー、抱かれたい人N O1ね。
と、とんでもない角度から恵子さんは、私に振ってきた。

いや、だから、最近カッコイイことに気づいたってだけで、
抱かれたくないし、N O1でもないです。

私は笑いながら答えた。
下ネタは恵子さんの得意分野だ。
その話になると、基本暴走気味だが、
見た目に反して、そんなところも面白い。


智子さんは、私たちのお決まりの
どうでも良いやりとりを見事にスルーして、

でねっ、
それでねっ、

と話を続けている。

そうなのよー。
ひどいでしょ?

それに引き換え、松下さんは、ほんとに細かくて、内容も事細かに把握しているし、
自分でもすぐ確認してくれるし、
本当、見習って欲しいですよー。

プリプリしながら智子さんが言った。
子育て中とは思えないくらい、智子さんからは生活感を感じたことが無い。
おまけに美人で、これまた素敵な先輩ママだ。
怒っていても、なんか可愛い。


話題の松下さん。
常備食である、どん兵衛にお湯を入れて
ちょうど戻ってきたとこらしく、
オフィスの入り口真前のデスクに座って、麺をすすり始めたところだった。

見た目は、平成狸合戦ぽんぽこの実写版俳優といったところだろうか。
素人だけど、ぜひ主役でお勧めしたいくらい、ぽんぽこと世界観が一致している。
体型はおじさん特有の瓢箪のようなでっぷり型で、
お腹に合わせて買っているズボンがずり落ちるので、
最近はサスペンダーを使い始めたらしい。
体重は推定90キロ。
もしかしたら、大台に乗っているかもしれない。
見た目は40から50代の絵に描いたような、中年男性だ。

最近は、痛風と糖尿が悩みのタネらしく、
大きな声で話しているのを耳にする。

そんな風貌だけど、机の上は整理整頓され、
カップ麺のストックや熊の手など、謎な物も多々あるが
生活感はあるものの、清潔感は失われておらず、とても好感が持てる人物だった。

おまけに、学年に1人はいる、
何を喋っても笑いになる、ムードメーカーなので、
酒好きも相まって、
コロナが流行る前は、飲み会に引っ張りだこな人気者だった。
どうしてこの人は芸人を目指さなかったんだろうと残念になるくらい、
何を喋っても、
生きてるだけで面白い人だった。

そんな人気者の松下さんだけど、
面白いとモテるはイコールでは無いらしい。

生涯独身だけど、浮いた話は聞いたことが無い。
本人は結婚願望があるらしいが、
社内で『あの子いいな』と松下さんが見つけて来るのは
決まって、
若くて可愛い、アイドルのような女の子ばかりなのだ。

松下さん、現実を見ようよ。

そんな事、私の口からは決して言えないけど、
希望を持つと言うことは、人生においては素晴らしいことである。
と言うことにしておこう。


きっと、松下さん、苦労したのよ。
だからあんなに細かく気配りが出来るんだわ。

西田さんは何で、あの歳まで、あのままでいられるんだろう。
見た目で苦労しないから、だからあのままなんだわ。

話し続けていた、
美人の智子さんが、自分はさておき、まとめに入った。



やっぱり、人って見た目なんですかねぇ。。。

イケメンって、得ですね。


人は見た目が100%
そんなドラマがあったが、やはりそうなのだろうか。

確かに、
結婚して尚且つ、女性に人気な見た目の西田さん。
中身は激モテなのに、一向に浮いた話が聞こえない中身の松下さん。

結婚が幸せの全てとは全く思わないが、
めちゃくちゃ結婚したいのに、選択肢が無いと言うのは可哀想だ。

だったら、
H S P気質の美人・イケメンは、一番良いのかな。

生きづらいと思って生きてきたけど、
繊細さと外見の美しさを併せ持てば、松下アーンド西田ではないか。

そんなことを思って、女3人で散々松下さんの話をした後、
ふと、窓ガラスに写った爆笑している自分の顔を見て、
思わず
ヒィッ!と声が出そうになった。




そうだ、私、スッピンだった!!!!



かなり重症花粉症な私は、毎年2月に入った途端に、
お天気レーダーをも凌ぐ正確さでいち早く花粉をキャッチし、
瞬く間にスギ花粉の餌食となる。

目は痒くて取って洗いたいし、
喉や耳の奥は痒いし、咳も出て
朝は目やにで目が開かなくなることもある。

そうなると、掻きすぎて鼻の周りは皮が剥け、目の下はシワシワになり、
顔は赤く腫れ上がる。
カッサカサのひどい状態になるので、なるべくその状況を遅らせるために
お化粧は控えているのだった。

普段はマスクをしているから、あまりわからないが、
今はランチタイム。

ひっどい顔の自分のことはすっかり忘れて、
人の容姿をあーでもない、こーでもないと偉そうに批評していたのだ。
そう言えば、この二人、どんな心境で私の話聞いてたんだろ。



私、この顔で、松下さんの事、言えないですよね。


爆笑する恵子さんの横で、
フォローする智子さん。

大丈夫!言うのはタダだから。


そ、そ、そうよね。
美人からの一言はなかなか喰らう。

私は早々にマスクを装着し、
心の中で、松下さんに『ごめん』と、
手を合わせた。

どうやら私はチーム松下らしい。
でもいいのだ、そうとわかったら内面を磨きまくればいいのだから。


そう自分に言い聞かせて、私は自分の席に戻って行った。


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