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婚約指輪ならぬ"婚約楽譜"を納品したお話

この記事は2019年アカペラアドベントカレンダー9日目の記事です。

昨日の記事は2号さんが執筆した「遠隔地でのグループ活動におけるリモート練習法の一形式」。グループ運営の実践的なノウハウが書いてあるので、こちらも要チェックですね♪

ということで記事本編を開始します!

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こんにちは。あいらと申します。↑の写真の中で一番左にいる、映画だったら1番最初にサメに食べられる顔をしてるが私です。

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2011年に大学のアカペラサークル (アカペラシンガーズK.O.E.) に入ったことをきっかけにアカペラを本格的にはじめました。

アカペラとは、声だけで音楽を演奏するやつです。要はハモネプです。

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アカペラにハマったのをきっかけに、アカペラ用の楽譜も作るようになりました。

さっき数えてみたら採譜・編曲合わせて101曲作ったみたいです。作り途中・未完成の譜面も含めたらもっとあります。

前置きはこれくらいにして、今回は、そんなアカペラの活動がきっかけで素敵なプロジェクトに携われた話をします。


「婚約楽譜、作りたいんだよね」

話は昨年の4月に遡ります。大学時代に一緒にアカペラをしていた仲間と晩飯を食うことになりました。

彼の名はとみー。大学在学中に突然鹿児島県の屋久島よりさらに南にある口永良部島というところに1年間住んじゃうような、自分のやりたいと思った事を即実行するアツい男です。

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お好み焼きを突っつきながら彼は言いました。

とみー「ゆりちゃんとそろそろ婚約しようと思う」

僕「クッソめでたいやんおめでとう」

彼女(今は奥さん)とも大学時代によくアカペラを歌っていた友人だったので、素直に祝福をしました。

とみー「結婚式で、どうしてもゆりちゃんに歌ってほしい曲があるんだよね」

僕「(アツいな)」

とみー「PRIDEって曲なんだけど、あいらにアカペラ編曲をぜひお願いしたい」

※今井美樹さんが歌っている、素敵な曲です
https://www.youtube.com/watch?v=-DxkhMaDMPw

僕「ええで(アツいな)」

とみー「で、その楽譜を婚約の証として、プロポーズの時に渡したい」

僕「アツいな!!!!!!」

一生に一度の想い出となるプロポーズ。その2人を繋ぐ証に僕の楽譜を使ってくれるというのです。まさに婚約楽譜です。

突然の責任の重さに震えながら、持てる力の全てを出して楽譜製作に取り掛かることになりました。


どんな編曲にすればいいんだ...

しかし、私は大いに悩むことになります。

\どうしよう/

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それは、「僕はどんな想いを持って楽譜を作ればいいのだろう...」ということ。

普段楽譜を作る時であれば、自分が作りたいように気の赴くままに楽譜を書き散らかすことができます。

しかし、今回は違います。

あくまでも新郎から新婦に向けた愛情の証であるべきで、私一人のエゴだけで楽譜を作ることはできません。

かといって、僕の意志を介在させずにただ単に原曲をなぞるだけの魂なき編曲もしたくありません。それだったらアカペラで歌う必要もないですし、そもそも"私が"作る必要もありませんから。

自分ではない誰かのために楽譜を作る事はこんなにも難しいのか...と実感すると同時に、なかなか編曲をはじめられませんでした。


僕から見た2人の"絵"

そんなある日、私は思いました。

「結婚式のウェルカムボードのように、自分から見た2人の情景を楽譜内に埋め込めばいいんじゃないか?」

そこで、私は「僕から見た2人」を描くことにしました。

結婚式当日、2人はどんな様子なのか。

そして、この曲を歌うときにはどんな気持ちになっているのか。

その上で、一緒に歌っている我々は、どんな気持ちで2人を祝福したいのか。

自分なりの"ストーリー"をこの曲の中に埋め込もうと考えました。


曲の構成に込めたストーリー: "結婚式当日の2人"

今回の楽譜は

イントロ→1番→2番→ブリッジ→ラスサビ→アウトロ

という構成をとっていますが、実は裏でこんなストーリーを作っていました。2人の結婚式はどんな風になるのかな、ということを妄想しました。

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イントロ:
結婚式当日。控え室で一人で待っている花嫁。慣れない白いドレスに身を包んでちょっと緊張。この日を迎えるまでにいろんな事があったなあ、と過去の思い出に想いを馳せる。

1番:
今まで歩んできた人生でいろんな人との巡り会いがあった。いろんな事があったなあ。そんな事を考えているとチャペルの鐘がかすかに聞こえてくる。もうすぐ、本番だ。

2番:
係の人に呼ばれて席を立つ。だんだんと高まる胸の鼓動。間も無く会える”あの人”に胸を高まらせながら席を立つ。移動をする最中も、ついつい自分の人生を振り返ってしまう。そんな事をしていると、あっという間にチャペルのドアの前に着いてしまった。

ブリッジ: 
少し暗くなる照明。すでに新郎は入場しているのだろう。自分が緊張しているのか、嬉しいのかわからない。でも言葉に出来ない高揚感を感じていることは確かだ。

ラスサビ:
開かれるチャペルへのドア。急に差し込む眩しい光。そこには列席者の笑顔。これだけの人と繋がりを持っていたんだ。祝福をされながら、ゆっくりと新郎の元へ向かっていく。

アウトロ:
2人だけの時間。拍手すらも聞こえなくなる、静寂。そんな2人を周囲の人がいつまでも祝福している。

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なので、最初は一人で歩いている新婦が

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最後には人生の伴侶と歩き、

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その様子をみんなで祝福する。そんな構成になっています。

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また、歌うメンバー一人ひとりとハモるパートを作りました。

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彼らは周りの人から「一人称が "I" じゃなくて "We" だね」と言われるくらい、人との縁、繋がりをとても大事にします。そして、一つひとつの繋がりがとても深い。

アカペラでよく用いられる"字ハモ"は、歌い手同士がシンクロする、想いを共有する場だと思っています。そして、シンクロするためにはお互いを深く知らなくてはなりません。

それくらいの絆を持てた喜び、そしてそのご縁がいつまでも続くことを願ってこんなことをしてみました(そしてここが過去を振り返るパートでありますね)。


言い方や和音で世界観を創る

あとは、上記の世界観を表現するために、趣向を凝らしていきます。

いくつか紹介すると、チャペルの鐘が鳴るシーンでは

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「ふぉんーふぉんー」という音で作ってみたりしています。

また、2番頭のちょっとドキッとするシーンでは

FM7, Cadd9 の和音の詰みをわざと間隔が近いところで音を鳴らすことで不安定感を表現。

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いくつか不安定な和音を繰り返していますが、最終的には3和音の綺麗なFに解決することで、決意を示しています。

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この時、42小節目、つまり音が不安定に鳴る前の和音は C7△9 ですが、決意後の52小節目は C7 になっており、ここでも安心感の差分を感じますね。

他にもこんな仕掛けを随所に散りばめてあります。少しでも曲の情景が伝わると良いなあ、と思っています。


要するに、サイコーでした

もっともらしいことを色々と書いてきましたが、「このPRIDEという曲を新郎新婦の2人が歌ったらどんな曲になるんだろう?」ということ、そして「2人に対して編曲者として、友人としてどのような事が言えるのだろう?」ということを突き詰めた結果、こんな風になりました。

実は、上に書いたような楽譜に込めた想いの話は、本人達にもはっきりとは伝えていません。

私なりのメッセージはすでに楽譜にありますし、この楽譜はもう2人のもの。

なので、あとは2人が創りたい世界観に身を委ねたいと思ったからです。

しかし、彼らの結婚式(結婚祭)が終わったこと、そしてアカペラアドベントカレンダーの機会をいただいたため、折角だから楽譜に込めた想いを書いてみようと筆を取った次第です。

ちなみに、とみー(新郎)に婚約楽譜のことを記事にして良いか聞いてみたところ、

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即快諾でした。やっぱアツいぜ。

PRIDEという素敵な原曲を基に、友人のために楽譜を贈る。

そんな経験ができたことに心からの感謝と、心からの祝福をこの場を借りて述べさせてください。

とみー、ゆりすけ、改めて結婚おめでとう。

そして、これからもよろしく。

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明日は、みちろーさんが「社会人アカペラサークルの代表を3年やってみて思うこと」というテーマで記事を執筆してくださいます!乞うご期待!

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