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おもてなすぞ、人類〜TAMAコミ&文フリ37レポ〜

イベントの興奮冷めやらぬ中この記事を書いております。先週末は文学フリマ東京37にデザインフェスタvol.58とカルチャーイベントが盛りだくさんでしたが、ご参加された方はいかがでしたでしょうか。
私は前回の反省を生かして万全の体制でイベントに挑んだおかげか、今回はブースから売り子を追い出すこともなく無事にイベントを完遂することができました。イベント的には大成功ですがおもしろレポ的にはいまいちとれ高に欠ける内容となったため、今回は思い切って対面イベントの個人的意義についてという切り口から、第7回TAMAコミと文学フリマ東京37、それぞれのイベントレポを書いていこうと思います。
実用性とおもしろみはないです。


わざわざ前置きをするまでもなく、2019年末からのコロナ禍で各種イベントの形は大きく変わった。
数々の対面イベントが中止に追い込まれた一方でオンライン開催の即売会やVR形式のイベントは徐々に勢力を伸ばし、withコロナ、アフターコロナと呼ばれる昨今ではオンラインイベントは対面イベントと同じくらい重要な立ち位置を獲得している。
「コロナ禍でもイベントを楽しみたい」という切迫したニーズは、今や「コストをあまり掛けずにイベントに参加したい」というより開かれたニーズに代わっており、私の周囲でも様々なオンラインイベントが開催されているのだが、しかし私はそのどれにもほとんど参加したことがない。
ネット環境は充分に整っている。またオンラインイベントは対面イベントと違って、一般的にはコアタイム(オンラインが必須または推奨される時間帯)をきちんと守ればよいので、日がな一日ブースに張り付いていなければならない対面イベントよりも身体的にははるかに楽である。自宅でお茶でも飲みながらゆっくりイベントに参加できる上に、搬送のための梱包も会場への搬入も必要ない。地方に住んでいる方との交流のチャンスでもあるし、人混みが苦手で体力がない私にとっては申し分ない環境だ。
しかしなんというか、どうにも食指が動かないのだ。申し分ないはずなのに。

なぜか。実際に対面イベントに参加しながら考えてみた。

2023/10/1(日)開催の第7回TAMAコミ。八王子のたま未来メッセにて。内装が蔵っぽくてよい。
マンガあり、文芸作品あり、刺繍アートや紙もので出店されている方もいらしてわりとノンジャンルな印象。そして相変わらずごちゃごちゃな泥眼書房ブース。

まずは2023/10/1(日)開催の第7回TAMAコミ。
それまではデザインフェスタや文学フリマといった比較的大規模イベントへの出店経験しかなかったのだが、こちらのイベントをMastodonで繋がりのあるフォロワーさんからご紹介いただき、なにかのご縁ということで出店してみることにした(ソロ出店)。
第7回TAMAコミの出店ブース数は216ブース(上限300ブース)とのことで、規模は文学フリマ東京と比べると10分の1ほど。分不相応にも錚々たるクソデカ会場ばかりを見てきた身からすると、ワンフロアで完結する即売イベントというのは非常にゆとりあるものであると感じる(うち半スペースではアナログゲームの体験・展示販売会「ボドゲガレージ」が同時開催でした)。
「そうさく系総合イベント」というキャッチコピーの通り、漫画や書籍以外にも様々なジャンルの創作をする方が出店されているので、決め打ちで会場を巡るよりは気ままにブースを散策するのがおすすめである(それだけのゆとりも充分にある)。私も出店者でありながら数々のブースを巡ってお話を伺うことができたので、会場内での偶然の出会いを求める方にとってはTAMAコミはかなり実りの多いイベントであると感じた。
なおTAMAコミではソロ出店の方を優先して運営スタッフがサポートに入ってくださるので、ソロ出店でも安心。ライブコマース風に各ブースを案内するアピールタイムもありました。

常日頃よりお世話になっているクロタネソウ。さんの「アザミの森」シリーズ。
TAMAコミを教えてくださった方のお一人です。ありがとうございます。

はっきり言って対面イベントは身体的には辛い。早朝から十数キロの荷物を詰めたキャリーバッグを引きずり、混雑する電車を乗り継いで会場へ向かう。イベント後は爆速で荷解きを終え、SNSでちらちらエゴサしながら一日掛けてじっくり寝ることで疲れを癒す。恐らくイベントに参加される方の大半が同じような、あるいはそれ以上の状況であろうと思う。お疲れ様です。
だからこそオンラインイベントも併用すべきだと思っているのだが、恐らく私がイベントに求めるものは単なる利便性や気軽な交流とはもっと別のところにあるのだ。イベントの熱気を肌で感じる、それ以上のものが。

TAMAコミからほぼ一ヶ月後の11月11日、満を持して文学フリマ東京37へ出店した。
最大規模の文学系即売イベントであり、そして今回が最後の入場無料開催である(次回からは東京開催のみ入場料制となるとのこと)。

文学フリマ東京37。ポスターデザインが素敵。
今回は書籍のみの頒布。背面に仕切りを儲けることでぐっと見やすくなった気がします。見切れていますが右端にはポスタースタンドを兼ねたスチールラックを配置。べんり!

来場者数を更新し続けている文学フリマ東京だが、今回の出店ブース数は2086ブース、累計来場者数は12,890人 (出店者: 3,062人・一般来場者: 9,828人)と今回も史上最多参加人数となったとのこと。
東京流通センターでの文学フリマ東京は会場が第一展示場と第二展示場に分かれる。今回は比較的小さな第二展示場(一階)での出店となったのだが、それでも行き来する人が絶えないほどの相当な混み具合であった。二階は評論やエッセイジャンルの出店が多いようだったが、そちらの方は通路に人がぎっしり溜まり通り抜けできないほど。第二展示場でもこの人の入り具合なら、より大規模な第一展示場の混み具合は一体どれほどだったのだろう。
泥眼書房のブースはどうだったのかという話については、もう、すげえ混んだとお伝えしておきます。正直後半は頭がぼんやりしてあまり覚えていない。

いくつかのアンソロジーに参加させていただきました。こちらは造鳩會(鳥の神話・藤井佯)さん主催の「鳩のおとむらい 鳩ほがらかアンソロジー」

私が対面イベントで重視しているもの。それは「もてなし」である。
もちろん『イベントの場において出店者と一般参加者は対等である』という意見には賛成であるし、他の出店者や参加者にこうあってほしいと願うことも、これが正しいのだと主張する意図もない。あくまで、私がしたいからしている、といういわば「理念」のようなものである。

アマチュアとはいえ作家活動をしていて常日頃から思うのは「なんの下地もない個人の一次創作物が人の目に留まるということのありがたさ」である。
ありがたい。文字通り有り難いことであるのだ(ともすれば忘れがちになるので特に意識するようにしている)。小説という、内容の吟味にある程度の時間が必要な分野において、私の書いたものに価値を感じてくださった方が作品を持ち帰るというのはある種のちいさな奇跡のようなものだ。大げさかもしれないが、私はそう感じている。
書いたものに対価を支払ってくださる方、それが面白かったからと2冊目をお買い求めくださる方、また興味を持って名刺やフリーペーパーを持ち帰ってくださる方がいることに対して、私はできる限り、私なりの手段でお返しをしたいと思っている。そのお返しのひとつが「ブース来訪者と直接お話し、感謝を伝える」ことなのだ。そしてそれは、テキストやチャットのやり取りでなしに、できる限り私の口や態度で直接伝えたいものである。
このブースに足を留めてくださった全ての方へ敬意を表したい。「ありがとうございます、この後もイベントを楽しんでください」と伝えたい。その思いを込めて、私は「ブース来訪者をもてなすために自分を対面イベントの場へよこしている」のかもしれない。
私が対面イベントにこだわる理由は、恐らくきっとここにあるのだ。「泥眼書房に興味を持ってくれたあなたを、ささやかながらもてなしたい」という理由が。

文学フリマ東京37での購入品、アンソロジー参加誌、いただいた差し入れの数々。

ただしこのご時世において、あまり対面イベントにこだわりすぎるのもナンセンスだと感じているところもある。
最初に述べたように、同人界隈、文芸界隈におけるオンラインイベントの幅は非常に広がっているのだから、それらを全て無視して対面に執着し続けるのは果たしてどうなのだろう。「もてなし」にこだわるあまり自らの活動域が狭まるのはネックであるし、そもそも対面イベントに行けない方、参加しづらい方もおられるのだ。己の体調など今後のことも考えて、もっと活動の幅を広げるべきだろう。
正直、デジタル周りのトラブル(接続不良など)に巻き込まれやすいため、余計にオンラインイベントが億劫に感じているのかもしれないが、対面イベントにこだわる理由が明確に見えた以上、そろそろこだわりの落とし所を探るのもよいかもしれない。

答えはじっくり探していきたい。来年は「ラントバルト奇譚」完結に向けてイベント出店は控えめにするつもりだが、もしかするとオンラインイベントでひっそりと泥眼書房を見かける時があるかもしれない。
もしその時はどうぞよろしくお願いいいたします。

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