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オタクが幸せであるために必要なもの(映画『あの頃。』感想)

おはプレイド・ライゼスト✋ちゃんじろです!

※トップ画像は公式サイトよりお借りしております。

<この記事の趣旨>
・映画『あの頃。』を見てきたので、その作品紹介と感想を書きます。(極力ネタバレなし)
・そしてこの映画を見たことと、僕の人生体験を合わせて「オタクと仲間」について考えた内容を書きます。
・オタクには「同じ熱量で語れる仲間」が必要。人生が1000倍楽しくなります!

映画『あの頃。』とは

まずは映画の紹介から行きます。

この映画は、監督:今泉力哉さん、主演:松坂桃李さんで2021年2月19日に公開されました。劔樹人(つるぎみきと)さん原作によるエッセイをもとにした映画です。

一言で言うと、「ハロプロ」にすべてを捧げた男たちの、くだらなくも愛おしい日々を描いた青春エンターテイメント作品

時は2004年。大学院受験に失敗し、うだつの上がらない日々をおくっていた主人公ツルギ。友人が「これ見て元気出せ」と渡してくれた「あやや(=松浦亜弥)」のDVDを何の気なしに観たところ、その輝きに涙を流して感動してしまう。

そこから「あやや」にどハマりし、ハロプロオタクの仲間たちと出会い、「恋愛研究会」というハロプロオタク団体を作って活動していく。

そんな、オタク活動の中で仲間たちとバカやったり、時には力を合わせたり、別れがあったり...というような大人の青春の日々を描いた作品です。

僕は、2020年のコロナ禍におけるステイホーム期間で、急激にハロプロにハマったこともあり、非常にこの映画に興味があったため、公開から数日後に映画館で見てきました!

※ハロプロとは、正式名称「ハロー!プロジェクト」と言う、モーニング娘。から始まったアイドルグループたちの総称です。現在では、アイドルという概念顔負けのハイレベルなパフォーマンスが特徴のスキル集団になっています。アイドルに憧れられるアイドル、という感じでしょうか。

映画の率直な感想をいくつか書いていきます。

『あの頃。』感想① 笑うことのパワー

この映画は自伝的エッセイをもとにしているため、オタク活動だったり当時の仲間をかなりリアルに描いています。登場人物たちも普通の人間。聖人ではないし、嫌なことも言ったりします。

作品の中でも、仲間の一人が暴走して倫理的によくないことしたり、仲間を傷つけるようなことをやってしまうこともあります。

そんな行き過ぎた行動をしてしまった仲間に対し、彼ら「恋愛研究会」はどうしたか。

すべてを「笑い」に変えていました。良くない行動をした仲間を、人前でえげつないほどに痛めつけつつも、笑い者にして楽しんでいました。

僕はそこに、仲間としての懐の深さというか、救いを感じました。

その、すべてを笑いに変えるということが、「彼らが仲間であり続けるための秘訣」と自然となっていることに、彼らなりの絆を感じました。
 
「一緒に笑える」ってことは、仲間である要件としてすごく重要だな、と改めて思いました。

『あの頃。』感想② 余白の多さ

演出的な話では、とにかくワンカットの中での余白が多い映画だなという印象が強いです。

例えば、登場人物がセリフを言う前後に、無言の時間がすごく多くて長い。その無言の時間で何かが起こっているかというと全然そんなことなくて、特に物語的には展開していない時間となっています。冗長と言えばその通りかもしれません。

ただ、その余白がたっぷりあることによって、よりキャラクターが見えるようになっていたなとも思います。

無言の時間は、確かに情報量が少ないのですが、それによってこちらが研ぎ澄まされていく感覚になっていきました。情報が入ってくるペースがゆっくりなことで、より画面をじっくり観察するようになりました。

そうすると、登場人物の微妙な表情の変化や、言いよどんだ言葉に気づいていく。その真意や内なる気持ちを想像していくようになっていきました。

その想像をめぐらせた時間が、僕と映画の登場人物との距離感を近づけてくれるものになっていたように感じました。例えば、友達とだらだらファミレスでだべってるようなような心地よさ。そんなものを、映画を見ながらふんわりと感じ、包まれていきました。

これは個人的には映画を観ている中でははじめての感覚でした。「あ~いまこの時間、めっちゃ幸せだな~」という心地いい気持ちに、自然となりました。

『あの頃。』感想③ 俳優の再現力

「恋愛研究会」のメンバーを演じていた各俳優の皆さんの演技が、とにかく良かったです。

主人公ツルギ役の松坂桃李さんは、あんなにイケメンなのにオタク特有の空気感を上手く再現していて、とても自然に存在していました。握手会のチケット当選~実際に行く、という流れの部分は、完璧なアイドルオタクの再現と言ってよいのではないかと思います。

さらに、、、特別に語りたい方が3人います!

1人目は、コズミン役の仲野太賀さん。

うるさいし我が強いしイヤなヤツ。でも、なんだか憎めないところもある。そんなキャラであり、かつストーリー上の運命性もとても強い人物で、本当に難しい役どころでしたが、見事に演じ切っていました。この映画を上質なエンターテインメントとして成立させている大きな要素に、振れ幅大きい仲野さんの演技が絶対にあると思います。正直言って僕はかなりファンになりました。「仲野さんが出てる」という理由で、観る映画を選んでもいいと思えるような素晴らしいものでした。

2人目は、イトウ役のコカドケンタロウさん。

みんなからいじられ、そのリアクションで笑いが生まれる立ち振る舞い。簡単なようで本当に難しいことだと思います。映画の中では、登場人物がじゃれあってるシーンがたくさん出てきますが、そこをちゃんと笑えるシーンにできているという部分で、コカドさんの功績はとても大きいと思いました。映画出演は初挑戦だったとのことですが、さすがはトップレベルのコント芸人さん。素晴らしかったと思います。

3人目は、松浦亜弥役の山﨑夢羽さん。

山崎さんは、ハロプロの「BEYOOOOONDS」というグループに所属する現役のアイドルです。映画には松浦亜弥役として出演しており、本当にわずかなシーンしか出てきませんが、その存在感と再現度は圧倒的でした。「完全に実写だこれ」って感じ。僕は夢羽さんがアイドルとして歌って踊る姿も知っていますが、そちらもめちゃくちゃハイクオリティで素晴らしい。特に歌がマジで上手い。いろんな人に知ってもらいたいです。

『あの頃。』感想④ 好きなものを好きと

主人公たちは紛れもなくハロプロのオタクで、その熱量は、毎月ハロプロについて語るトークライブを主催しちゃうくらい大きなものでした。

仲間とオタク活動して過ごす時間が楽しそうで、「とてもいいな~幸せそうだな~」と、映画を見ながら素直に思ったのですが、じゃあ果たしてその時代に彼らの隣に自分がいたら、果たして同じようにそう思えただろうか?ということも同時に考えました。

映画の舞台は2004年~2006年頃。当時の「オタク」に対する印象や扱いは、今と違ってよくないものでした。アイドルオタクとかアニメオタクに対して、「人種が違う」というように軽蔑したり、見下す感覚があったように思います。

ネット文化の普及やSNSの発達などもありつつ、今日に至るまで時間をかけて好みが細分化されていき、それぞれの好きが世の中に見えるようになっていったことで、各個人が情熱を向ける「好きの対象」をバカにするような風潮もなくなっていき、その「好き」を素直に言えるようになってきたのだと思います。

アイドルが好きな人、アニメが好きな人、ゲームが好きな人、映画が好きな人、2.5次元が好きな人、BLが好きな人とか。こういうのをそんなに後ろめたくない気持ちで「好き」と言えるのは、とても幸せなことだと思います。

だからこそ、あの時代にハロプロにハマっていた主人公たちの熱を、映画を通していま見れることは貴重だし、「お前ら最高だぞ!」って言ってあげたくなるような、こみ上げるものがありました。

「好きなものを語れない」という人生体験

映画の中の彼らを通して得たこれらの感想を持ちつつ、僕の人生も振り返ってみると、「猛烈に好きなものを他人とシェアできない時間」は少なからずあったように思います。

例えば2014年頃からeスポーツ(というかLeague of Legends)にドハマりした僕ですが、当時働いていた会社ではゲームが好きな人が周りにほとんどいなく、全く話が通じなかったことを覚えています。別に悪い事ではないけど、やっぱり悲しいものです。

その後僕はベンチャー系のゲーム会社に転職するのですが、それでも部署にいる30人くらいの中で、絶対に圧倒的に僕が一番ゲームに詳しくゲーム好きだったので、拍子抜けしたことも覚えています。(部門がバックオフィスだったことも大きい。プロダクト側だったら恐らくそんなことはなかった)

この間は、一緒にLoLをやっていた仲間と過ごす時間が、唯一の心のよりどころになっていました。(今回の記事の趣旨と全然違いますが、いろんなコミュニティに所属することは精神衛生上とても重要です)

そして今働いているウェルプレイド・ライゼストに入ったことで解消されました。みんな、僕と同じかそれ以上にゲームオタクなので、日々ゲームの話を当たり前のようにしまくっていて、とても心地よいです。

ゲームに関する新しいニュースなどを知ったら、「この情報を会社のみんなにシェアしたいな」という気持ちが自然と生まれてきます。

僕の『あの頃。』はまさに今だった

そして2020年。

コロナ禍ですっかり立派なハロプロオタクとなった僕に待っていたのは、以前と同じような孤独感

日常的にハロプロを語れるオタク仲間が周りにはいなかったのです。

オタクの熱はそれをシェアできる仲間がいないと、行き場を失い消滅してしまう。こんなに素晴らしいものがあるのに、誰も理解してくれない...そんな悶々とした気持ちで日々を過ごしていました。

そしてつい先日、とあるLINEグループへの招待が届きました。

その名も、「ハロプロ部」

バンドをやっていた大学時代の友人との4人グループです。偶然にも、彼らは彼らそれぞれで、僕と同じようにハロプロのオタクになっていて、かつその熱を共有できる相手がいなかったようで...

グループができてからというもの、メンバーのオタク熱は爆発中。「この動画のココがすごい」だの「このメンバーのココがヤバい」だの、日々前のめりに情報交換をしています。

ハロプロに対して全肯定の幸せな世界!

iOS の画像

※これはBEYOOOOONDSの配信ライブを見てた時のスクショ。
このように、大変盛り上がっております。
もちろんグループ全員の許可を取って公開しております。

僕の大学時代というと、もう15年前とかです。そのころの仲間と、こんなに毎日連絡を取って盛り上がれるのは本当に幸せ。

ハロプロのおかげで、仲間のおかげで、とても楽しい日々を過ごしている実感があります。

映画で見たあの青春の日々『あの頃。』を、遅咲きながら僕はまさに今過ごしているのだなと、そう実感しています。

おわりに(オタクが幸せであるために必要なもの)

映画の感想から飛躍して、自分の人生と最近のオタクっぷりを語る記事になってしまいました。

でも、本当に僕はいまが一番楽しい。

オタクが幸せであるために必要なもの。それは、「同じ熱量で語れる仲間」だなと思っています。

何かを好きになることはとても尊く素晴らしい

そしてそれを共有した時に、大きな幸せを実感します。

だから、好きなものを好きと素直に言える社会であることは嬉しく、もっとそうあって欲しいと、強く願います。

そんな社会を作る一端を、何かしらで担っていくことができれば、僕はきっとより幸せを実感していくのかなと思います。

そんなことまで考えることになった映画『あの頃。』

とてもいい作品ですので、皆さんぜひ見てみてください。

そしてハロプロオタクになってしまったら、ぜひ僕と語り合いましょう。

それではこの辺で。おつプレイド・ライゼスト!




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