見出し画像

ぎょうざ消費量の新しい「ものさし」

焼き餃子協会の小野寺です。宇都宮と浜松だけがぎょうざ日本一と言われる時代に、終止符を打ちたいと思います。ぎょうざの消費量をはかる新しい「ものさし」を提示し、日本国内に新たなぎょうざ戦国時代を招くことがこの記事の目的です。

宇都宮と浜松がぎょうざ日本一のまちであるということは、総務省統計局の家計調査の中で県庁所在地や政令指定都市ごとに「1世帯当たり1か月間の支出金額,購入数量及び平均価格>都市階級・地方・都道府県庁所在市別」として公表されている統計情報を元とされていることは、多くの方がご存知のことと思います。

なお、家計調査では以下の条件が揃ったものが「ぎょうざ」の調査対象となっています。
・2名以上の世帯が購入しているもの(一人世帯は対象ではない)
・スーパーなどで購入されているもの(ぎょうざ専門店や中華料理屋での購入は含まない)
・ぎょうざが惣菜として購入されている(冷凍食品は含まない、外食は含まない)

外食や通販などは含まないので「ぎょうざ消費量」の総量ではありませんが、その土地に住む人がどれだけ「ぎょうざを家で食べるために買っているか」を計る指標として、客観的な指標の一つとなっています。

今回お伝えしたいのは、もはや宇都宮や浜松だけが「ぎょうざ消費量の日本一」とは言えないということです。

ぎょうざ の「購入頻度」日本一は

宇都宮や浜松が日本一だと言われているのが家計調査のデータにある「支出金額」についてです。一方で、同じく家計調査には「購入数量(購入頻度)」という項目もあるのはご存知でしょうか?

画像1

しかし、購入頻度のランキングをこれまで見たことがなかったので、集計してみました。結果の年度別トップ5が以下の表となります。

画像4

浜松と宇都宮が日本一を争っていたところに、2017年に宮崎市、2018年には前橋市が「購入頻度」の日本一となっているところに注目です。しかも、2017年に至っては宇都宮も浜松もトップ5に入らないという事態になっていました。

トップを争う宇都宮・浜松・宮崎・前橋の4市の購入頻度をグラフにすると、かなり僅差で争っている状態であることがお分かり頂けるでしょう。

画像5

ぎょうざにいくらお金を使ったか?という点では宇都宮市と浜松市が圧倒的強者でしたが、ぎょうざを何回買ったのか?という点では、前橋市と宮崎市が宇都宮市や浜松市にも拮抗している状態です。もはや、ぎょうざ戦国時代と言ってもいいでしょう。

ぎょうざ消費をはかる、新しい「ものさし」

皆さんの印象として、「支出金額が多い」のと「購入頻度が多い」のでは、どちらが「ぎょうざの消費量が多い」印象でしょうか?おそらく、多くの人は購入頻度が多い=消費量が多いと認識するのではないでしょうか。

宇都宮と浜松が圧倒的日本一と言われてきたように、ぎょうざの消費量を考えるときのものさしは、これまで「支出金額」で計られてきました。しかし、今後は「購入頻度」で計るべきではないでしょうか。

面白いことに、支出金額と購入頻度は比例しません。群馬県前橋市の場合、2018年の購入頻度は日本一(100世帯あたり834回)でしたが、「支出金額」では15位(2,205円)です。

参考までに、2018年の支出金額日本一の浜松市については、購入頻度は16位(100世帯あたり721回)、支出金額は日本一(3,501円)でした。

つまり、前橋市はぎょうざの単価が安いから支出金額で日本一にはならない。逆に浜松市はぎょうざ単価が高いから支出金額で日本一になる、ということが言えそうです。

なぜ、購入頻度の日本一になれたのか

家計調査は県庁所在地・政令指定都市を対象としているので前橋市という名前が上がるのですが、群馬県には前橋市だけでなく高崎市という大きい街もありますので、「群馬県」という範囲で「ぎょうざ王国」の背景を調べてみたいと思います。

まず、群馬県はぎょうざの材料であるキャベツの生産量が全国トップクラスであること。

また群馬県は豚肉の出荷量も全国トップクラスで、特にブランド豚が多く養育されています。

そして、群馬県は利根川水系の上流域であり、良質な水が豊富であるということ。それと関越道や東北道が通っており、首都圏への出荷がしやすい場所であること。

これらの環境を背景に、群馬県内には味の素冷凍食品大阪王将(イートアンド )の関東工場が建てられて、特に最近では大阪王将(イートアンド )の関東工場は新工場が最近建て増しされたほどです。

この他にも、群馬県内には以下のようなぎょうざ製造者があります。

みまつ食品(群馬県前橋市)

金星食品(群馬県太田市)

フクヤ料食(群馬県高崎市)

群馬県は安価で良質な原材料が手に入る環境を背景に、日本トップクラスのぎょうざの生産拠点である。ゆえに、群馬県内のスーパーで安くて良いぎょうざを購入でき、群馬県前橋市は「ぎょうざの購入頻度」日本一となったのだろうと考えられます。

ぎょうざ日本一のライバルはどこか

宇都宮市に浜松市というライバルが現れたことで、お互いにぎょうざのまちとして盛り上がった歴史がありました。ぜひ群馬県に対抗するライバルが現れてほしいと思っています。

そのライバル候補筆頭として宮崎県を推したいと思います。

宮崎県の県庁所在地である宮崎市は、ぎょうざ支出金額で3位の常連でありますが、購入頻度では2017年に日本一となっています。つまり、宮崎市は購入頻度日本一のポジションを前橋市に奪われたということです。ぜひ取り返して頂きたい。

そして、宮崎市だけでなく宮崎県という範囲で見たほうが「ぎょうざ王国」のポテンシャルをみることができます。

宮崎市から車で1時間ほどにある高鍋町では、最近「餃子のまち高鍋推進協議会」が立ち上がりました。会長となったのは宮崎を代表するぎょうざの一つである餃子の馬渡さん。

また、お持ち帰り・お取り寄せぎょうざで大変人気のある「ぎょうざのまるおか」は宮崎県都城市にあります。冷蔵生ぎょうざということで、家計調査で宮崎市が購入頻度日本一になった原動力になっている可能性もあります。

2018年の家計調査では購入頻度も支出金額も日本3位だった宮崎市。安いから買われているという訳ではなく、宮崎には本当にぎょうざを好きな人が多いと言えそうです。

全国的には知られていないけれども、前述の餃子の馬渡やぎょうざのまるおかをはじめ、美味しいぎょうざが作られています。私もぎょうざを食べるために何度も宮崎に通うほど、宮崎には美味しいぎょうざ屋さんが多いのです。その背景には、宮崎県は全国2位の豚肉生産量であることもあると思います。

そして、昨年からは宮崎餃子祭りや餃子フェスin高鍋が開催されており、宮崎県内のぎょうざ熱が高まり始めています。

ぎょうざの新時代に向けた提言

家計調査はその地域に住む人の一部をサンプリングした統計結果にすぎず、一喜一憂するものではないのですが、宇都宮市や浜松市が家計調査をうまく使ってぎょうざを観光資源にしたように、「購入頻度」の統計データを、地域を盛り上げる材料にしてほしいと考えています。

群馬県で言えば、ぎょうざ購入頻度は日本一ということは言った方が良いし、おそらくぎょうざ生産量は日本トップクラスであるでしょう。まずは日本一のぎょうざ生産拠点としての強みをどこに活かすのかという戦略が必要であると思います。また首都圏の消費者に対しては、手頃な価格で美味しいぎょうざを多く提供できるメリットを感じさせる戦略も考えられるかと思います。まずは、「群馬県が日本一」であるということを発信することが重要で、発信力の強い政治家として有名な山本一太県知事のリーダーシップに期待したいところです。

宮崎県は良質なぎょうざの素材が生産され、熟練した老舗ぎょうざ店もあるという背景から、ぎょうざの聖地的な戦略がとれると思います。宮崎は神話のふるさとと言われる土地ですし。一生に一度は、宮崎でぎょうざを食べてみたいと思わせるような。ぎょうざとビールの聖地でもいいですよね。霧島ビールとか、ひでじビールとか、酒がなんだか神々しくもあります。

京都もぎょうざ戦国時代のキープレイヤーだと思いますが、文章も長くなってきたので割愛。京都のぎょうざ屋さんは、引き続き王道を歩まれたら良いと思います。

宇都宮市と浜松市は圧倒的王者であり、全国の挑戦を受ける立場ですので、日本のぎょうざ文化を育てる第一人者として、群馬県や宮崎県を見守っていただけたらと思います。

また、消費者の皆様には、「ご当地ぎょうざ」は一括りにできないほど多様なぎょうざ屋さんが戦い続けることによって生まれるものであり、どの地域のファンということではなく、どの店のファンであると言ってくださるよう、焼き餃子協会としてもぎょうざの製造者と消費者をつなぐために、より一層全国を飛び回って行きたいと思います。

Webエンジニアリングと餃子についてはお任せください。