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ブラぐらい好きなもの選ぼう

私事ですが、あらゆるものをひっくり返して着ています。
下着、肌着はもちろんのこと靴下も。外から見えるもの以外は全て裏表にして着ていて、理由は簡単、縫い目が皮膚にあたると痒くなるからです。

何でもひっくり返して着てしまえば肌辺りは優しく、それで何も問題ありませんが、ブラに関してはちょっと注意が必要です。
そもそも裏表逆にして着用できるブラはホック無しのかぶりタイプに限られますし、ひっくりかえしたブラにパットを装着する時は凸側を間違えないようにしなくてはいけません。ちょっとややこしい。

でも、一度夏の暑い日に普通のブラを普通につけて外出したところ、こすれた部分が汗で炎症をおこし赤い蛇に巻きつかれた怨霊のようになってしまってからというもの、「皮膚に当たるのもは絶対裏表」を厳守しています。

そんな皮膚弱な私ですが、あるものに出会って意外な扉が意外な方向に開いたことをここに少し書いておこうと思います。

ご想像通り、出会ったものは皮膚に優しいブラです。直接肌に当たるところは全て綿製で、レースなどの飾りも皮膚にあたらないように十分注意して付けられていて…
とこう書くと、いかにも自然派ナチュラル指向といったものを想像されると思いますが、衝撃的だったのは、その色と柄のバリエーションの豊富さでした。
赤、紫、黒、緑、ブルーと色ごとに並べられた様子はまるでキャンディーショップの店先のような華やかさで、素材もレース、サテン、リボン、ラインストーンととりどりです。

でも、飾りは全て綿製のベースに肌に触れないように取り付けられているのでそこは安心。ごく普通のベージュのものもありましたが、視線は自然とカラフルな方に引き寄せられてしまいます。
これらの華やかなブラは、女性の肌だけでなく下着の選びの選択肢も解放するというコンセプトでした。

その日私は、真紅と言っていいほど真っ赤なレースがふんだんに施されたブラを選びました。少し疲れていたこともあり、元気が出る色を身に付けたかったのです。
めちゃくちゃ派手ではありますが、どうせ見えないのですから何色のどんな柄を選ぼうとこちらの勝手です。とくにかく自分が好きなもの、自分の心が浮き立つものを選べばいい。こんなにも自由に下着を選んだことは今までになく、本当に楽しい経験でした。

その日から私は、外からは見えないアイテムに元気や勇気を直接もらうという感覚を楽しむようになりました。見えないだけに限りなく自由、見えないからこそ誰の評価も気にしないし誰にもおもねらない。自分の肌のすぐ側に、楽に息ができる世界が広がっていました。

そう言えば確か、アラブの女性たちは外出する時には黒いヒジャブをかぶっているけれど、下には煌びやかな衣装を身にまとっていると聞いたことがあります。
真っ黒の下に隠された華やかな色彩が密かにパワーを与えてくれる。お陰でどんな時も背筋をシャンと伸ばしていられる。そんな感覚が彼女たちの自信を支えているんだろうなと想像がつきます。

例えばの話、職場で理不尽な目に遭っても(そうは言っても、私今日はヒョウ柄のブラ付けてるし)と思えば、折れかけた心も早めに立て直せそうな気がしますし、外出先で心無い言葉を浴びても(私は金色のブラの女ですよ、ハートはガッチリ守ってます)と思えば、悔しさも多少は緩和されるような気がします。

さらに、実際にそんなものがあるかどうかはさておいて、自分の好きなキャラや推しがドーンとデザインされたブラを身に付けて一日を過ごすのはかなり楽しんじゃないかと思うのですが、どうでしょう?

自分が学生だった頃は、服装はもちろんのこと、毎日身に付ける下着にまであれこれと細かく注文を付けられ、まるで取り調べのように逐一チェックされるのが当たり前の時代でした。
今も下着売り場を見渡せば、先生に注意されなさそうなアイテムがずらっと並んでいるので、そこらへんの学校事情はあまり変わっていないように思います。

でも、肌に一番近いからこそ、自分にとって一番心地良いものを選びたい。その日その日で一番力をくれそうなものを選びたい。それは時にお守りに近い感覚で切実です。

自分に一番近い領域で思いっきり楽しめば、想像以上に解放されるのだから、下着はもっと自由であっていい。ありがちな精神論なんかに結びつけられなくていい。

日本の社会では結構難しい堂々とした女性でいたいという願望は、こんなところから叶えられるのかもと思ったりしています。





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