見出し画像

被災した時に大切なこと3つ 〜阪神淡路大震災を経験して〜

今回の能登・北陸上越地方の震災に遭われた方々、また地震で大きな不安を感じたり、不自由な暮らしを強いられている方々に、一日も早く安心して暮らせる日常が戻りますことを、心中より祈念いたします。

もうじき阪神淡路大震災から30年が経とうとしています。震災に遭ったのは、結婚を機に神戸に移住してまだ一カ月のことでした。土地勘のない場所で巨大地震に遭った時の恐怖は今でも自分の中で生々しく脈打っていますし、非常時において人間はどうなり、生き残るために何が大切なのかを私の脳に刻み込みました。
そんな私の個人的経験が、誰かのお役に立てば本望と今回の記事を投稿します。

✴︎ ✴︎ ✴︎

緊急事態において大切なこと、それは「身体と脳を守れ」に尽きる。
最初の激震を怪我をせずに生き残れたら、本来なら生存率はほぼ100パーセントに戻るはずである。この100パーセントをとにかく減らさないようにすることが何よりも重要なのである。そのために大切と思うことを3つ挙げてみた。

①キーワードは「暖」と「温」

冬の災害の場合、電気やガスが使えなくなると、たちまち寒さが襲ってくる。緊張で寒さを感じにくくなっているかもしれなが、冷えが加わると身体の緊張がますます強くなって、脳にさらなるエマージェンシー・コールが発令されてしまう。その結果、不安の無限ループが始まる。もちろん体温維持にも多くのエネルギーが使われ、大切な脳へのエネルギー配分が減ってしまう。カイロを体中に貼る必要はないけれど、足先が温かいだけでも随分気持ちが楽になる。(あぁ、あったかい)と思えたら、ひとまずOK。

もし電気ポットや電子レンジなどが使えるようなら、お気に入りの温かい飲み物をまずは一杯淹れてみよう。いつもの動作をするだけでも、少し気持ちが落ち着く。無事口に運べたら自分を褒めてあげよう。

②誰かとコミュニケーションがとれる状態を確保しよう

災害は、一人の人間が対処できるキャパを遥かに超えている。だからこそ災害なのだ。命の危機にさらされると、人間は生存に全エネルギーを集中させる。なので自分の住所や電話番号が分からなくなったり、簡単な計算ができなくなってしまうこともある。つまり極端な情報の取捨選択が行われるのだ。そうすると、普段は自動的にできている車の運転等も、判断ミスが多くなる。せっかく初期の激震を生き残った命が、通常ならあり得ない判断ミスのために失われた話を多く聞いた。災害の負荷は一人では抱えきれない。だから、誰かとやり取りをしながら一つ一つ対処していくことが非常に重要になってくるし、誰かと話して声を出すだけでも身体が緩む。
阪神淡路大震災の時は、直接会える人とのやり取りに限られていたけれど、今はインターネットやSNSがある。発信すればじきに誰かから返信がある。つながっていると思えることは、何よりの力になる。

大きな災害に頻繁に見舞われる日本では、どこかの地域が傷つくと、全国津々浦々から援助や救援がやってくる。それはまるで、怪我をした部位を治そうと白血球が集まってくるのにも似ていて、緊急事態においては、日本の国そのものが一つの身体のように振る舞う。そうしてその傷が早く治癒に至るよう様々なものを集中させる。情報もその一つだ。

被災地のリアルな声が役に立つ場合もあるし、現場だからこそ返って手に入りにくい情報もある。まずは目の前の誰かと声をかけあって励ましあい、同時に外部からの情報の提供も得る。そういった遠近双方のコミュニケーションが、今の自分の状況を客観的かつ立体的に教えてくれる。
容量オーバーして自分がフリーズしてしまう前に、出来るだけ多くのデバイス(人間)で情報処理を分担し、一人々々の負荷を減らそう。そうして一人でも多くの人がエネルギーを保持しつつ生き残れるようにしよう。

③被災地ではない場所で休もう

もし可能なら一時的に被災地を離れ、ライフラインが整い余震もない安全な所で身体を休めよう。でも、自分だけそんないい思いをするなんて…と躊躇する気持ちもよく分かるし、被災地と普通の日常がある場所とのギャップが返って苦しいという気持ちも十分理解できる。自分も一時的に神戸から広島に避難した時、一番苦しかったのはこれだった。
けれど、あなたの大切な場所のためにも、とにかく休んでほしいし、思う存分熟睡してほしい。災害は一瞬であっても、そこからの道のりは長い。危機的な状況を乗り越え疲弊している脳と身体を一度リセットしてからでも、あなたは十分地域のために役立てる。

まとまった睡眠がとれない日が続くと脳が疲弊し、鬱症状への距離が近くなってしまう。冷静な判断をするためにも脳を休ませなくてはならないし、ゆっくりと安心して眠らなくてはならない。誰もあなたの鬱状態を望んでなどいない、安心して休んでほしい。

被災地のことを思うと眠れない、という人も多いだろう。けれど前述したように、緊急時、日本は一つの肉体となる。傷ついた場所に向かってすぐさま救助が発動され、あなたはじきにあらゆる地域のナンバープレートの救援車両を見ることになるだろう。あなたという一つの細胞が休んでいる間も、治癒は着々と起こっているのだ。そしてあなたが元気な細胞として復活したら、地域に戻り治癒の一助となればいい。

また、自分の街はボロボロなのに、ここはこんなにも平穏無事で…。そんなギャップが辛くなったら、思い出してほしい。日本の中に災害と無縁な場所などほとんどないということを。今は平穏無事でも、かつて大きなダメージを受け、そこから時間をかけて地道に立ち上がってきた地域ばかりなのだ。自分が被災地とのギャップに苦しんだ広島も、原爆の荒野から立ち上がってきた街だ。その意味で、みんな仲間なのだ。

生き残れば、必ず道が見えてくる。道が見えてくれば、日々を生きる意味が見えてくる。
その日のためにも、あなたの肉体と脳を大切に扱ってほしい。生きながらえてほしい。

✴︎ ✴︎ ✴︎

ここに書いたのはあくまで私個人の意見ではあることは言うまでもありませんが、今不安の中にある方々の一助となればとキーボードを叩いています。
僅かでも有益と思っていただけることがあれば、望外の幸せです。
重ねて、被災地の迅速な復興と、人々の安寧が一日も早く戻ることを心より願ってやみません。

この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?