第2回:大阪・関西万博で遺すレガシーとは 〜コモングラウンド・リビングラボで進むチャレンジ〜
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第2回:大阪・関西万博で遺すレガシーとは 〜コモングラウンド・リビングラボで進むチャレンジ〜

COMMON GROUND LIVING LAB


コモングラウンド・リビングラボ(以下、CGLL)のパートナーの活動や取り組みを紹介するインタビュー。第2回目は、CGLLの成果を披露する最初の舞台である2025年開催の「大阪・関西万博」に向けて、現在進行中の各プロジェクトの内容や目標についてメンバーのみなさんに話をお聞きしました。

画像:ディスカッションの様子

# 万博を活動のマイルストーンとし、いかにレガシーを遺すか

1970年に大阪で開催された日本万国博覧会こと大阪万博は、世界各国の文化を紹介する国際パビリオンもさることながら、未来を予感させるテクノロジーの数々が大きな注目を集めました。会場内を走り回る電気自動車や人と交流するロボット、どこでも通話できるワイヤレステレホンなど、披露されたアイデアの多くから新たなビジネスやサービスが生み出されました。

それから約半世紀後に開催される大阪・関西万博では、”いのち輝く未来社会のデザイン”をテーマに、未来につながる技術や社会システムの実証実験の場とすることが計画されています。大阪・関西万博を活動のマイルストーンとするCGLLでも、次世代の都市空間情報プラットフォームであるコモングラウンドを社会実装すべく、さまざまなプロジェクトが動きはじめています。

CGLLの運営委員である三菱総合研究所の高橋朋幸氏は「大阪・関西万博でCGLLの活動をどれだけレガシーにできるかが重要になる」と言います。

「万博ではデジタルツインやメタバースといった要素で未来が示されるでしょうが、現実空間のパビリオンがあるということを意識する必要があります。人と機械、バーチャルとリアルなど、いろいろなものが融合し、イノベーションを生み出すプラットフォームとして、コモングラウンドがそのキーワードになるのが理想です。CGLLの活動は未来社会の実験場を体現するプロセスだと言えます。ハードとソフトが一体になったサービスやビジネスを想定しながら将来の汎用仕様についての議論を広げたり、五感を意識したメディアアートやエンターテインメント要素も取り入れたり、いろいろなアイデアを試せる場になっています。自由にアイデアを発想することは大切で、例えば当社では、未来を考えるヒントとしてSF思考を推奨しており、小説などに描かれているユニークな世界を参考にしようとしています。技術者や専門家だけでなく幅広い人たちが参加しながら、現時点では実現性が無くても、夢があって楽しいと思わせるユースケースを将来に向けて発信していくことが大事だと考えています。」

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画像:CGLL 活動のマイルストーン

# CGLLで進行中の複数のプロジェクト

CGLLでは大阪・関西万博、そしてその先の都市実装に向けて、すでに複数のプロジェクトが動きはじめています。その一つが、大日本印刷(DNP)が開発する「DXマーカ®」を使ってロボットを制御する実証実験です。「DXマーカ®」は厚さ0.7mm、外形が10mm、20mm、40mmと80mmの正方形で4種類の大きさ(サイズが小さいものは近距離用、大きいものは遠距離用)があり、画像処理ソフトとカメラを活用してDNPが保有する高精度な技術でガラス基板上に印刷されたマークを読み取り、搬送用ロボットなどの動きや位置を高精度で制御することができます。プロジェクトではこの技術をコモングラウンドの考え方に取り入れ、日立製作所と共に自律型モビリティなどをより正確に動かす研究に取り組んでいます。DNPの田口景織子氏によるとプロジェクトはこの10月からスタートし、CGLLの実験場を使った検証も行われています。

「万博会場という多くの人が集まるオープンな場で正確にロボットを動かすことを想定し、この技術で何を見せられるのかといったアイデアも含め、いろいろな課題を提示していただきながら研究開発を進めています。屋内では上手く運用できていますが、屋外やフィールドの条件によって使用するカメラの台数やセンシングの方法も変わりますし、ロボットの制御に関しては専門的なアドバイスも欲しいので、CGLLに参加する人たちの横のつながりに期待しています。」

画像:DXマーカ

同じくプロジェクトを推進する日立製作所の坂東淳子氏はCGLLで実験を行うメリットとして、作る楽しさや面白さがメンバーで共有されやすい点を挙げています。

「例えばDXマーカは実際に使ってもらうとパッとわかるのですが、位置精度がカチっと出る気持ちよさがあります。そうした手ざわりや感覚は実際に触れる機会がないとなかなか実感を持てないのですが、CGLLは複数の企業が共同で使えるラボがあり、共有する機会もある。多くの方に触れてもらう、直接反応を得る頻度が確実に上がるので、使いたいと思えるものにしていく環境があるといえるのではないでしょうか。」

日立製作所はもう一つ、建設業で使うBIM(Building Information Modeling)をゲームエンジンにつなげて簡単に使いやすくするプロジェクトを竹中工務店と進めています。担当者の一人である竹中工務店の粕谷貴司氏は、

「人とロボットが共通認識を持つコモングラウンドを実現するには、リアルとバーチャルの間でただフォーマット変換するだけでなく、サイバーフィジカルシステムとして運用しなければ上手くいかないでしょう。具体的には、デジタルレイヤーで処理したものをベースにしたノン・ヒューマンエージェントをバーチャル空間に作り込み、実空間とインタラクションする世界にすることが重要だと考えていて、どう記述すれば合理性を持たせられるかを研究しています。また、プラットフォームを提供していくのとあわせてロボット開発も行っているので、みなさんと一緒に進めていければと思っています」と話しています。

# 実証実験フィールドの拡張で実装を加速させる

TOAと大広とシリコンスタジオの3社によるプロジェクトでは、”音”に着目し、TOAが持つ空間音響の技術及び知見を活用したノン・ヒューマンエージェントと人とのコミュニケーションの研究が進められています。

「いろいろなコミュニケーションの取り方がある中で、人が持つ五感を大事なポイントとして研究を進めています。情報や体験を一方的に提示するのではなく、人からの能動的なインタラクションを引き出すようなコミュニケーションを考えています」とTOAの宮田哲氏は説明します。

「例えばロボットの機能として、”音”として声だけでなく非言語情報も活用し、さらに映像、光、ジェスチャーなどいろんなものを組み合わせてインタラクションできる仕組みを作ろうとしています」

このように、万博に向けて本格的に進みはじめたプロジェクトを支援すべく、CGLLも進化を続けています。CGLLの実証実験フィールドを提供する中西金属工業では、屋内で実証実験が行えるフィールドを屋外に拡張する準備を進めています。

「私たちはCGLLの活動に全面的に協力するため、より多くの実験ができる場所にしていくことでコモングラウンドの実装に貢献したいと考えています」と中西金属工業の林雅之氏は言います。

実証実験フィールドに関しては、コクヨが今年、東京・品川のオフィスに「働く・暮らす」の実験場として開設したTHE CAMPUSと、CGLLを連携することもアイデアの一つとして出ています。コクヨの嶋倉幸平氏によると、THE CAMPUS内にあるオープンラボには5G回線を利用した実験環境があり、複数台のアバターロボットを動かすことができます。

「2021年11月にはTHE CAMPUSの公開イベントを行い、オープンラボでは最大14台の自律移動可能なアバターロボットを走らせたところ、参加者の方からは未来が垣間見える内容だったとの評価を得ることができました。その一方、複数のアバターロボットが、検知できないモニターの角やテーブルの天板にぶつかってしまうなど、オフィス空間でロボットを動かす課題にも直面しました。CGLLの会議で豊田さんが、ロボットが認識できるオフィス家具の必要性について話をされていたのですが、その重要性をあらためて理解しました。THE CAMPUSは全面的に開放していますので、CGLLと一緒に様々な課題の解決に向けてアイデアを考えたり、連携をさせていただきたいと考えています。」

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画像:THE CAMPUS オープンラボ

CGLLではここで紹介した以外にも、複数の実証実験やメンバー企業の連携が進んでいます。

CGLLエヴァンジェリストの豊田啓介氏は「ここまで業態や専門性が異なる企業がフラットに集まる場はとても貴重だ」とコメントしました。

「CGLLでは万博という明確な目標のおかげで、奇跡のような異業種連携プロジェクトが複数並走しています。世界をマーケットにしたビジネスで生き残るには、既存の枠を越えたつながりが不可欠ですが、それを肌感覚で理解できる場にいることは目に見えない大きな価値をもたらしていると言えます。万博の開催まで3年を切り、いよいよ実装に向けてシフトチェンジしなければならない重要なターニングポイントを迎えようとしています。今からでもまだ間に合います。またとないこの機会に、もっと多くの人たちに、CGLLに参加してもらいたいと考えています。」

CGLLの活動については今後もSNSなどを通じて発信していきます。参加方法やプロジェクトに関心がある方は、ぜひご連絡ください。

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画像:オンラインでのディスカッションへ参加の様子

参加者(順不同)
・株式会社三菱総合研究所 参与 営業本部長 高橋 朋幸 氏
・株式会社三菱総合研究所 万博推進室 主任研究員 水嶋 高正 氏
・大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 関西CXセンター EXPO2025プロジェクト 事業共創課 田口 景織子 氏
・中西金属工業株式会社 関連事業室 林 雅之 氏
・株式会社竹中工務店 夢洲開発本部 部長 先端技術(情報プラットフォーム・XaaS)担当 政井 竜太 氏、
・株式会社竹中工務店 夢洲開発本部 課長 先端技術(情報プラットフォーム・XaaS)担当 粕谷 貴司 氏
・株式会社日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ 価値創出プロジェクト 主任デザイナー 坂東 淳子 氏 
・コクヨ株式会社 経営企画本部 イノベーションセンター 嶋倉 幸平 氏
・TOA株式会社 開発室 宮田 哲 氏
・CGLLエヴァンジェリスト、建築家、東京大学生産技術研究所 特任教授 豊田 啓介 氏

関連リンク:#01|動き出したコモングラウンド・リビングラボ

COMMON GROUND LIVING LAB
【異業種が集まり、コモングラウンドを試して作れる世界初の実験場】 データ/実験結果を互いに提供し、実証を進め、技術・運営ノウハウを集積。複数の企業や団体がフラットに議論、実験し、次世代都市の空間情報プラットフォーム実装を探ります。 https://www.cgll.osaka