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第1回:動き出したコモングラウンド・リビングラボ (CGLLエヴァンジェリスト 豊田啓介氏)

コモングラウンド ・リビングラボ (以下、CGLL)のパートナーの活動や取り組みを紹介するインタビュー。第1回目はコモングラウンドの提唱者であり、CGLLのエヴァンジェリストを担当する豊田啓介氏に、いよいよ本格的に始まるこれからの活動に向けた思いや期待についてお聞きしました。

# コモングラウンド・リビングラボ に期待すること

ーー ご自身が提唱される「コモングラウンド」の世界初となる実験場がオープンしましたがその印象は?

豊田:コモングラウンドの”実験場”を作るにあたり最初からイメージしていたのは、様々なモノづくりができる倉庫や工場の一角みたいな雰囲気がありながら、アクセスも良くてカジュアルに使える場所でした。CGLLがあるNKCさんの本社は、JR天満駅から徒歩圏内で梅田にも近いのに都心の喧騒を感じさせない立地にあり、建物も含めて本当にイメージどおりで、ラッキーすぎて場所が決まった時も半信半疑だったほどです。

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画像:CGLL 実験場

ーー バーチャルでモノづくりができるようになりつつあるのに、現実にモノづくりをする場所は必要なのでしょうか?

豊田:むしろ、バーチャルなメタバースを作るのが特別ではなくなるこれからこそが、CGLLのような場所が求められると考えています。バーチャル上ではオンライン会議やVRシステムなどがいろいろ開発されていますが、次にそこからビジネスを生み出すために、現実の物理世界に接続しようとするニーズが確実に出てきます。当然ながらリアルにつながるためのシステムやハードを用意する必要がありますが、それぞれで仕様が異なるので準備するのは大変です。そうした動きに先んじて、物理側から接続できる場所を用意しておくので、それにあわせた仕様を開発すればエッジ上でつながる環境ができますよ、ということをCGLLで今やろうとしています。

また、そう遠くない未来に次世代型スマートシティが産業になると、企業や団体が単独でそれらに関わるビジネスの絵を書くことはできません。では複数の企業が集まって何かやろうとしても、お互いにどういう方向にフォーカスを当てて向かおうとしているのか見えないままでは、お互いに牽制しあったり、遠慮して動けなくなってしまいます。CGLLでは少なくともみんなが動いている状態が真横で見えますし、何を作ろうとしているのかもわかるようになります。いろんな企業や個人がフラットに集まり、自由な組み合わせでコモングラウンドの実験ができる場所を作ることは、みんながつながる一手先のプラットフォームや仕様を作るためにとても重要なのです。いろいろな人が集まって何か作り出そうという雰囲気が感じられるのも大事で、そういう意味では理想的な立地にCGLLを作ることができたと感じています。

# いまCGLLで何ができ、何が起きているのか?

ーー CGLLに参加すると何ができるのでしょうか?

豊田:プラットフォームの構築に参加することでコモングラウンドに接続するコンテンツとはどういうもので、何が必要とされ、どう開発すればいいかといったことが見えてくるはずです。CGLLではまず最初にプラットフォームの構築を目指していますが、参加企業や集まった数社がチームを組んでコンテンツ開発を進めるといったことができますし、コモングラウンドを理解するメンバーが集まれるので、そこはメリットになるでしょう。

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画像:天井の360°カメラから見たコモングラウンド ハンズオンの様子

ーー CGLLに具体的なゴールや計画はありますか?

豊田:CGLLが前提とする目標は投資や事業化を前提とした社会実装や技術開発であり、新しいビジネス開発のプラットフォームを構築することです。その目的に対してこういう動きをすると明確にゴールを描いて進む考え方もありますが、ここでやろうとしているのは、未来に向けて何かわからないものを動きながら探っていくことであり、むしろそれが何かわからないから一緒にいるのだと言えます。説明が難しいのですが、自分が動くことで全体の動きを決めていくような、昭和の企業成長とは異なる開発や投資の形をみんなで探る場だと言えるかもしれません。 

とはいえ、最初から抽象的な話だけでは動けませんので、立ち上げの時に決めたのが、2025年の大阪・関西万博をフィールドに検証、あるいは実装できる何かを作ることを目標の一つにすることでした。CGLLのように異業種や多企業が集まって何かを作り出すために動く時は、決定主体がいないことがダウンサイド(リスク)になります。そこで万博をわかりやすい中期的目標にすることで、計画やスケジュールが進められるようにしています。ですがそれは、最初の動きにくい時期にギアアップさせるきっかけであり、万博に向けた取り組みを通過点として、より大きな事業化に向けた次のステップに進めるようになればいいと思っています。

ーー すでに動きは始まっていますか?

豊田:現在はコアメンバーとなる企業が6社が主な運営を担当しつつ…、ゴールド、シルバーといった異なるステータスでも複数参加していただいています。いずれも、コモングラウンドを実験するプラットフォーム、基盤を作ることに関わりたいという共通の思いを持つ方たちばかりで、今後の活動に向けてもメンバー間での目的感がしっかり共有され、お互いに意見を出し合える雰囲気ができています。具体的なプロジェクトもいくつか始まっており、それらについては近いうちに紹介できる機会があると思います。

今までにない新しい価値を見出すことに対し、投資をしたり稟議を通すのはなかなか難しいことですが、少なくとも場所があって、参加企業も動き始めています。これからはさらに事業化に向けた意思決定や判断を行うのに対し、スピード感と責任をしっかり持てる体制づくりをやっていかなくてはならないと考えています。

#これからCGLLに参加する仲間達へ

ーー どのような人たちにCGLLに参加してほしいですか?

豊田:プラットフォームの構築に向けた動きは進んでいますので、次の段階としてはできればCGLLで構築したプラットフォームを直接的に使っていろんなサービス実装する企業、または開発する人たちに参加してもらいたいですね。特に自律走行技術の開発や、ARやVRなどのメタバースを実空間で実装することを目指しているベンチャーなど、自社で開発したいものがあるけれどリソース不足や実験環境パートナーが見つからず悩んでいるという人たちに集まってもらい、どんどんCGLLを使ってもらうことでプラットフォームの開発がより進むと考えています。

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画像:シェアオフィスに集まるメンバー

ーー これからCGLLに参加したいという方たちに向けたメッセージはありますか?

豊田:最初からメンバー企業に話しているのは、囲い込み型ビジネスを目指そうとした途端にCGLLは終わるということです。これまでの日本型開発にできなかった方法や規模で新しいビジネスを開発するには、プレイヤーを増やしてサイズを大きくする必要があります。プラットフォームを大きくするにはより多くの人に使ってもらうこと、つまり同業他社を排除せずにオープンにすることが大前提となります。もちろん現実にはコンフリクトすることもありますが、できれば同じ業態から複数の企業に参加していただきたい。社会課題の解決につながるような大きな話にコミットし、新たなビジョンを作ることに興味があり、何かしらの形で貢献したいと考える企業やプレイヤーに参加してもらいたいですし、技術やアイデアを持つ個人が参加できるようにもしていきたいですね。

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インタビューは東京にいる豊田氏がCGLLのアバターロボット”Temi”に繋いで行われた。
プロフィール:建築家、東京大学生産技術研究所特任教授。2025年日本国際博覧会協会People’s Living Lab促進会議メンバー