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誰かを撫でていたらこちらが心地よくなってきた話

久々にナルおばぁちゃん(80歳代後半)のところに訪問した。

ナルおばぁちゃんは、お子様はいるのだけど一人暮らし。
神経難病の為、歩行に支障がありながらもゆっくり伝い歩きをしながら生活している。時々転んで擦りむいているけどお子さんに怒られるから内緒にしとおいてと内緒でカットバンを貼る。

前回訪問したのは数ヶ月前。その際には田舎の妹さんにお菓子を送ってあげるんだと言い畳の上の段ボールの中にたくさんのお菓子を詰めていた心優しいナルおばぁちゃん。ご自分の生活もままならない中で妹さんにお菓子を送ってあげたいという気持ちがすごいなぁと思う。

その日は、ある介護者に言われたことについて話された。
普通に考えればナルおばぁちゃんに心ないことを言ってしまった介護者がいたようだけど、ナルおばぁちゃんの捉え方は違っていた。そんなふうに思わせてしまったのは自分が悪いのではないか?田舎のお母さんから人を傷つけてはいけない、かける言葉は十分に気をつけるようにとずっと言われていたのに自分の配慮が足りずにそんなふうに思わせてしまったのではないかと涙を流された。どれだけ心が透き通っているんだろう・・・。こっちが泣けてきた。

先日、久しぶりに行った時に「さっきね、ヘルパーさんがきてくれて最近来てくれたばかりの人なのに掃除機の先の細いやつを使って隅々まで綺麗にしてくれて、本当によく動く人だったのよ。本当に嬉しい。綺麗になってよかった」と感謝されていた。ナルおばぁちゃんのところには大勢の看護師やヘルパーさんが出入りしているので名前なんて覚えきれないと思うのだけど、そのヘルパーさんの事はまだ数回なのにちゃんと名前を覚えていらっしゃった。

私も嬉しくなりヘルパーさんのノートに「○○さんが隅々までとっても丁寧にお掃除をしてくれたことを喜ばれて感謝されていました。ありがとうございました」と付箋をつけた。

私たちはヘルパーさんと同じ時間に訪問に入る事はほとんどないけれどそれぞれのヘルパーさんたちがどんなふうに仕事されているのかは大体わかる。部屋の環境が整っているとか、体の寝具・服の状態、口腔内、顔や手の状態など目の前の方が生活しやすいように整えて仕事を終えていることなどは容易にわかる。それと同じようにケアを受ける側はもっと感じていらっしゃることと思う。だから丁寧にケアをしてくださっているとこちらまで嬉しくなる。

同じ時間を与えられてその時間をどうサービスを提供するかはその人の力量と愛!

*    ✳︎

ナルおばぁちゃんは、病気のために動作がスローリーだ。そのスローリーな時間も頭に入れながらケアを考える。その曜日のナルおばぁちゃんのケアは、体調管理と足浴というミッションだった。

ナルおばぁちゃんが着込んでいる衣服の下からどこかにぶつけたり転んでないかとどれどれと体を拝見する。長袖の下からちょっとぶつかったのよという傷跡発見。「内緒・内緒」という。高齢者の皮膚特有のスキンテアという皮膚の状態で脆弱な皮膚がすぐにぺろっと剥けてしまう。

足浴の際には隠し持ってきた私の最近のおすすめの「塩化マグネシウム」を入れた足浴を楽しんでもらった。ナルおばぁちゃんの足は冷感があり浮腫が強く硬化していた。塩化マグネシウムは、入浴剤として使っているけど結構ポカポカして発汗作用がある。いいデトックスになってくれている。そして皮膚がすべすべになる。
両親に1年くらい前に送ったらかなり好評で今も入浴剤に使っているようだ。そもそもは親が足がよく攣っていたのでマグネシウムを経皮吸収するといいと言われている為、送ったのが始まりだった。マグネシウム不足の人はピリピリする感覚があるようだ。アトピーにも効果があると言われているが、母は猫さんに引っ掻かれた傷がめちゃ速くよくなるというデータを持っていた(笑)。

話が逸れたが、というわけでナルおばぁちゃんも入れてもいいよと言ってくれたので入れてみた。要は、ニガリなのでそれほど支障はないと思う。入れた途端に「うわっ!あったかい」と言われたので「いやいや、そんな即効性はないから気ぃ使わなくても…」とお伝えしたら「本当だってばー」とナルおばぁちゃん笑う。こんな感じで時々足浴の時に他でも使わせてもらっている。

足浴後はとてもポカポカして気持ちがいいと喜んで頂いた。

*    *

次は、ベッドにゴロンと寝てもらいマッサージをすることにした。

とにかく浮腫でパンパンが当たり前になっている足が気になった。
最近まですっかり忘れていたのだけど・・・

リンパドレナージュの資格をとってたんだったということを。
もう15年くらい前だたったかもしれない。

久々にそのDVDが出てきて1回も観ずに忘れ去られていたけど(笑)観てみたら意外にも手技をざっくり覚えていた。ついでに当時、新しい職場に移ったばかりでお金がすっからかんだった私にとっては高い受講料と時間を費やしたのも思い出した。

リンパドレナージュはアロママッサージとかとは違って皮膚の表面をどちらかといえば撫でるようなマッサージなので、痛てててて・・・みたいなことはない。本当にさすっているだけに近い感覚。むしろその方がリンパを流すには必要。

以前、病院で働いていた時にがん末期のまだ若いお母さんが足が浮腫でパンパンになった。その当時よくアロママッサージをしていたのでそれはそれでたくさんの方に喜んで頂いていた。この方にも「にゃむさんのアロママッサージはずっといろんな人に教えてあげてほしい」と言って亡くなられたことがあった。その時にインプットされてアロママッサージの方がいいと思っていたけど。ケースバイケースなのかもしれない。

また話が逸れたのでナルおばぁちゃんの話に戻る。

1時間近くかけてゆっくりリンパドレナージュを行った。途中、ズボンの上からよりもやはり皮膚に直接の方が効果があるので、ちょっとズボンも下ろしてもいいですか?とお尋ねすると「女同士だからいいわよ、恥ずかしいけど」と言っていただいた。急に女同士♪という同盟のようなものを感じながら続きを行なった。顔のシミの話なんかもしながら女子力の高いトークを二人でしていた。「そうよ私、結構おしゃれさんだったのよ」と話しているときのナルおばぁちゃんは少女だった。こんな話をしながらゆっくりゆっくり皮膚を撫でる。


なんだろう・・・

だれかの皮膚を撫でている時にこちらまで癒されてくる感覚。ゆっくりゆっくり撫でる。こっちがめちゃめちゃ気持ちいいや〜ん・・・。なんだかナルおばぁちゃんの優しさが跳ね返ってくる感じがした。心地よい。

そして、ナルおばぁちゃんがこれまで頑張ってきた歴史も見えてきたような気がした。こんな足になるまでこれが痛いとも感じないくらい頑張って一人で暮らしてきたナルおばぁちゃん。誰のことも決して悪く言わず心優しいナルおばぁちゃん。

この瞬間こそがありがたいなぁと思えた。

リンパを流し終わると体液が移動するので施術後はトイレに行きたくなるのだけど、ナルおばぁちゃんもトイレに行った。

「もうねぇ、便座から立つのがすっとたてるし、足が軽いのよ!!足が細くなったわよ、絶対に。ぽかぽかあったかいし。嬉しいわ・・・あんなにたっぷり時間をかけてくれてありがとう」と興奮気味にトイレから帰って何度も言われた。褒め上手なナルおばぁちゃんだった。

結果も大事だけどナルおばぁちゃんに喜んでもらえたことが一番嬉しい。

また、会いに来させてねぇ〜。






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