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「天国のマメさんへ/お伝えしたいことがあります」

小さなベラさんと小さなマメさん

「おーい!マメ、何やってんだよ!早くしろ」
「俺が決めたんだからそれをすりゃいいんだよ」

「はいはい、そんなに怒鳴らなくてもわかりましたよ」

狭い1ルームのアパートのベラさんと妻のマメさんのいつもの光景。70歳代の小さなお2人が暮らす中、毎週、お2人のお顔と体調を見に伺っていた。


ベラさんは、トイレには行ける日も時々あるけどほぼ寝たきり。
いつも小さな体から天井に向かって大きな声を出してめっちゃエバってた!
べらんめえだからベラさんと命名。
命名のセンスを問われる瞬間(笑)

マメさんは、曲がった腰をトントンしながらシルバーカーを押して、買い物にも行かれた。
怒鳴りちらすベラさんに文句を返しながらも細かな要求にも応えていた。

老老介護を見かねたケアマネージャーさんは、ベラさんが超ご機嫌になる施設を探してくれた。
ベラさんは、まんまとご機嫌になり、時々、ショートステイを利用し、マメさんの体を休めてもらった。
たまにアルコールが飲めたり、カラオケがあるのでベラさんは、嫌がらずにホイホイとお泊りに行った。

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息子さん一家もいたけど殆ど会いに来られることはなかった。
「あんなにお金を出してやったのにね〜。お父さんと嫁さんが合わないんだよ」と寂しそうにマメさんが言う。
それでもご夫婦二人でなんとか暮らしていた。

そんな日常が一変した

それは、ベラさんが、ショートステイに入っている時に起こった。

心臓病を患っていたマメさんは、ベラさんを置いて本当にあっけなく天国に旅立ってしまった。

トイレに漸く行けるベラさんは、一人での生活は難しく施設入所も決まっていた。
ところが、ベラさんは自宅で生活したい!と強く望まれた。

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マメさんが逝ってしまい、ご自宅に帰ってからのベラさんを訪問した。
2ヶ月ぶりくらいの対面だった。
え?仏様?と思うほどのお顔でベッドに座って出迎えてくれた。
何を言っても始終、仏の顔。


なんとかご自分で生活しようとかなり頑張られたのだろう、トイレにも行けるようになり、簡単な食事も自分で準備できた。
本当は、できる人だったのに全てマメさんがしてくれていたのでお任せしていたのかもしれない。

「家に帰りたくて帰ってきたんだけどね、マメが居ないこの部屋にいると寂しくて寂しくてたまらない、早く施設に帰りたくなっちゃったよ」
「今になって思うんです。あれもこれもマメが気を遣ってやってくれていたんだなぁと。何かをするたびにこれもマメがしてくれていたんだなと感謝しているんです、いつも怒鳴ってばかりだったから。体を傷めつけていたんだろうな。今更気が付いても遅いですよね」と寂しく笑う。
語尾まで丁寧になってしまったベラさんだった。

「マメさんは生前、ベラさんがショートステイで楽しんでいることを知って、とても喜ばれていたんですよー」とお伝えした。
「そうですか、マメはそんなことを喜んでくれていたんですね」と柔らかな眼で微笑まれた。

ベラさんは、言葉をつづけた。
こんなに流暢にお話しできる方だったのかと驚いた。マメさんに命令口調で言うベラさんしか知らなかった。

「皆さんにも本当にお世話になって看護師の〇〇さん、ヘルパーの〇〇さん、ケアマネの〇〇さん、施設の〇〇さん、地域の〇〇さん、沢山の人がお世話をしてくれた。本当にありがたいですね。」

マメさんの生前とは全く違う人間のようになってしまった穏やかすぎるベラさん。

「ベラさん、毎晩、眠れていますか?まだまだ涙が沢山でちゃうでしょう」と声を掛けた。


「泣いていません、大丈夫。ただマメに申し訳ないのと感謝と寂しいだけです。マメもこの年になるまでよく私のそばに居てくれたなーと思います。」と静かに優しく微笑まれた。

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天国のマメさんへ

マメさん、そちらにベラさんの精一杯の感謝の言葉届いていますか?

ベラさんは、切ないほど頑張っていらっしゃいます。どうか天国から見守ってあげてくださいね。
毎日、何かをする瞬間、マメさんのことを思い出して感謝されています。




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