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にゃむ❤️の『看護まがじ〜ん』

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30年以上、自分のスタイルでやりたい看護を自由にのびのびとさせて頂いています。緩和ケアや認知症に関する記事が主になるかなぁと思います。
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2019年3月の記事一覧

前世での誓い 〜ある難病の子のお話〜

今回は、ある親子のお話をご紹介しようと思う。 出逢ったころじゅんくんは、13歳だった。 難病で寝たきりのじゅんくん。 鼻からは、栄養の管が入っている。 カールの利いた睫毛の下からまっすぐで澄んだ瞳が見える。 言葉は喋れないけどお母さんが、時々、じゅんくんの思いを代弁してくれていた。 排泄のお世話も全てお母さん担当。 お母さんの名前は、明るい子と書いて明子さん。 名前の通り、とにかく明るくていつもにこにこしているお母さん。 ケラケラと笑うお母さんを見るとこちらまでつられて笑

認知症の「忘れてしまう記憶」と「忘れない記憶」

10秒後に忘れてしまうマダムK ~忘れてしまう記憶~ ある年のお正月の話。 認知症のマダムKのところに伺った。 年賀状が10枚くらい届いており、マダムKが年賀状を見ていた。 「あら、これは誰からかしら?あ、みっちゃんからだわ」と言って裏返しにして本文を読む。 申年だったので「まぁ、かわいらしいオサルさんがついてる!」と言って、年賀状をまたクルっと裏返しにした。 「あら、これは誰からかしら?あ、みっちゃんからだわ。へー、懐かしい!」と言って裏返しにする。 「まぁ、かわいらし

片付けられない人たち〜片付けられないシンドローム〜

あなたは、片付けが好き?苦手? 私は、多分、片付けはそんなに嫌いじゃないほう。 散らかっていることも多いけど、片付けることを楽しめるタイプ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 仕事柄、お家の中にお邪魔する機会が多い。 毎日のように誰かのお家に上がり込ませて頂いている。 片付けることを楽しむタイプの私なので、よそ様の部屋の環境についてアレコレと分析してしまうのかもしれない。 あんなお宅もこんなお宅もあった当然ながらお家の中は、全部違う。面白いくらいに違う。 玄関に

認知症のハナさんの家が大好きな理由

蝉が子孫を残す使命のもと大合唱していた夏の日。 地中の熱地獄にやられたミミズが、アスファルトの上で沢山干からびていた。 その日は、ハナさんの訪問の日だった。 ハナさんは、認知症だった。 毎週、伺っていたけど、私の名前は、知らない。 火曜日に訪問があるということは、大体覚えていてくれた。 品よく長めのスカートを着こなし、「いらっしゃい」と笑顔で迎え入れてくれた。 この笑顔だけでいつも充分だと思った。 ハナさんのお庭は、私のお気に入り。 毎週、このお庭を見るのが楽しみでもあっ

サチおばぁちゃんの優しさ

91歳の小っちゃなサチさんは、固定電話の子機のことを「電話ちゃん」と呼んでいた。 1日の殆どをベッドの上で過ごしているサチさん。 そのベッドの横には、サチさんが座って手を伸ばせばすぐに届く出窓があった。 その出窓の手前には、カーテンがしてあった。 その出窓に「電話ちゃん」が鎮座していた。 サチさんは、ご家族への内線電話として電話ちゃんを使っている。 ある時、カーテンの奥からチラッと見えた電話ちゃんは、囲いの中に入っていた。 その囲いについてサチさんは、説明してくれた。

おばぁちゃんたちの自虐ワード

寝たきりのトキさん。 「若い時は、昼まで寝ていた~い!って叫んでいたのに今となれば寝たくもないのに寝ていなきゃいけない。なんてこった」 と目を白目にしながらおどけて話した。 心臓を患っている高齢のよしこさん。 「もう死なせてほしいっていつも言ってるのに、昨日、肺炎ワクチンしちゃった私。まだ、長生きする気なのよ。生きることに執着している証拠だわ、恥ずかしい」 乾いた口もとでワシャワシャと笑った後、上の入れ歯がちょっと落ちた。 そして、慣れた手つきでふにゅっと何事もなかったよう