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セテラ作品の思い出⑤ 劇場ブッキングについて

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🇫🇷『あの頃エッフェル塔の下で』🇫🇷/
🇩🇪🇦🇹『マーラー 君に捧げるアダージョ』🇦🇹🇩🇪/
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我々独立系配給会社は映画の権利購入後、どこの劇場にこの映画をかけてもらうか・・・と言うのがまず最初に考えることになります。

アルノー・デプレシャンの『そして僕は恋をする』を買い付けした時の話を既に書きましたが、はじめての字幕付きのお披露目試写を行った時に嬉しいことに3つの劇場から、上映したいと興味を持ってもらえました。3館で同時上映するのは当時はこの映画としては考えられませんでしたので、一番この映画を上映したいという熱意の強かったシネ・ヴィヴァン六本木にて、お世話になることにしました。当時エリック・ロメール、エリック・ロシャン、ジャック・リヴェットなどの作家性の強い映画をかけていたシネ・ヴィヴァンは、シネフィルたちの熱い支持を持つ映画館として映画業界における一つのブランドとなっていたので、デプレシャンをブランドにしてデプレシャン映画祭を開催したいと考えていた我々にとっては理想的なパートナーだと思ったのです。実際、当時のシネ・ヴィヴァンの支配人のIさんからスタッフの皆さんまで全員とても熱心なシネフィルで、『そして僕は恋をする』と『デプレシャン映画祭』を全力で取り組んでくださいました。『そして僕は恋をする』でマチュー・アマルリックが来日した時も、デプレシャンの来日時もシネ・ヴィヴァンを訪問しましたが、とても熱い歓迎を受けて二人ともシネ・ヴィヴァンが映画好きのための特別な空間だとすぐにわかったようで、なんて素敵な映画館だ・・・と感激していたのをよく覚えています。その後1999年に映画ファンに惜しまれながら閉館しましたが、今回この原稿を書いていて改めて、あの頃映画館で働いていたシネフィルのスタッフの方たちは今、どうしているだろう・・・デプレシャンが20年後に撮った『あの頃エッフェル塔の下で』を見てくれたかなぁ・・・と思い、この文章も読んでくれたら嬉しいと思いました。

『あの頃エッフェル塔の下で』を買い付けした時に、Bunkamura ル・シネマさんが上映をすぐに決めてくださり、本当に嬉しかったです。劇場の若いスタッフの方たちが、20年前のデプレシャンの映画を知っていて熱心に推して下さったのも感慨深いものがありました。

デプレシャン

(画像:シネ・ヴィヴァン六本木にて、アルノー・デプレシャン)

『マーラー 君に捧げるアダージョ』の場合は、買い付けすることを音楽ジャーナリストの友人Mさんに相談した時に、大いに興味を持ってくれて、正式に買い付けしたとスタッフたちに話したときには、もうすでに東京と名古屋の上映館が決まっていて驚きました・・・。クラシック音楽愛好家の東京のユーロスペース名古屋シネマテークの両H支配人の間で、上映時期まで相談されていました! こちらのマーラーの映画は東日本大震災の1カ月後の公開にもかかわらず大健闘してスマッシュヒットとなり、監督夫妻から“目標の動員を達成したね、と喜んでもらえました。しかも、この映画のマーラーの音楽を録音したエサ=ペッカ・サロネン指揮、スウェーデン放送響の録音風景をアドロン監督がきちんと撮影した約40分のメイキング映像『サロネン・コンダクツ・マーラー』も、音楽ファンにはとても魅力的だから、と東京と名古屋の両劇場では本編の映画上映の後にモーニングショーやレイトショーなどで上映して下さいました。本当に熱い方がたに支えられた“マーラー君”でした。

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(画像:渋谷ユーロスペースにて、パーシー・アドロン)


山中陽子

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