見出し画像

セテラ作品の思い出①『あの頃エッフェル塔の下で』(その1)

2015年のカンヌ映画祭で配給を決めたあの頃エッフェル塔の下でについて書くのには、当時20年前にセテラで初めてアルノー・デプレシャンの映画を買い付けした1996年のそして僕は恋をするとの出会いからお話ししたいです。当時のカンヌ映画祭のコンペティション部門出品の3時間のこの映画を試写で見た時の新鮮な感動は今でも鮮明に覚えているからです。どんな作品でも買い付けた映画は、最初の出会いを鮮明に覚えているものです。映画の配給を決めるのは大抵第一印象で、直感だからです。

デプレシャンのこの映画を試写しようと思ったのは映画祭のプログラムの映画の場面写真からでした。マチュー・アマルリックとティボー・ド・モンタランベールという当時まったく無名だった二人の可愛らしい男の子の生き生きとした写真1枚で、これは面白そうだと思って、試写会場に行ったのですが満席!もしかして注目作だったの?と思いながら通路に座って3時間画面に見入りました。セリフの洪水でしたが、大好きだったトリュフォーの再来とも言える映画の流れるような空気感と、セリフ、カメラ、編集のうまさ、フランスのエスプリとインテリジェンスを感じるこの映画が、これは何かが新しい!と思って即配給を決めたのです。買い付けしてから知ったのですが、実はデプレシャン監督は前2作品ですでに映画業界からは新しい才能として注目されていて、フランスの映画やカルチャー雑誌の表紙をこの映画は飾りまくっていたのです。それらをすべて買って意気揚々と帰国すると、既に映画業界の熱心なフランス映画に詳しい人たちには、“デプレシャンの最新作を買ったらしい””とうとう日本で公開される“と噂されていて、実は鳴り物入りの監督だったということを改めて知ったというわけです。前2作品はぴあフィルムフェスティバルで上映されていてデプレシャンの応援団も既に存在して最初からこの映画は映画業界内では待ち望まれていたのです。この素敵な新しい才能を上手に観客に伝えなくては!と言う強い使命感を感じたので、デプレシャンをブランドにしよう!と邦題からポスターデザイン、宣伝まで日夜没頭して取り組んで、全身全霊でデプレシャンに捧げたのでした。すぐに翌年デプレシャンの前作2作品も合わせて3作品でデプレシャン映画祭を開催して、次の初の英語作品エスター・カーンまで続けて配給しました。

そして僕は恋をする フライヤー表

(画像:『そして僕は恋をする』日本公開時のパンフレットデザイン)
(リンク:映画祭『デプレシャンに恋をする』時の劇場予告編)

2015年に再び『そして僕は恋をする』の前ストーリーという『あの頃エッフェル塔の下で』を見た時には、『そして僕は恋をする』を初めて見た時の感動が甦ってきて、これはうちが配給しなくては!と、久々にデプレシャン映画と向き合ったのでした。この宣伝のために来日したデプレシャンが本作を再びセテラが配給したことをとても喜んでくれたのを知って、とても嬉しかったです。今回も独立系配給会社を支援する動画を頼んだら、真っ先に返事が来てとても素敵なメッセージを送ってきてくれました。2019年のカンヌ映画祭に出品された最新作ルーベ、嘆きの光(WOWOWジャパンプレミア先行放映、DVD8/5発売タイトル『ダブル・サスペクツ』)は、デプレシャンの故郷が舞台の力作なので、これもセテラで扱えて良かったです。デプレシャンのファンのみならず映画ファンは注目のサスペンスの傑作です。

山中陽子

***
🇫🇷『あの頃エッフェル塔の下で』はじめセテラ15作品がアップリンククラウドのセテラ見放題パックからご覧いただけます👀デプレシャン、ワイズマン、ルネ・クレール監督作品他、ヨーロッパ・アート作品を中心とする選りすぐりのランナップをご堪能ください📽

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?