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『組織が変わる』ために「組織を変えようとしない」(1/2)

「新規事業に、事業部が手を貸してくれない。。」
「テレワークで、チームの雰囲気が悪くなってきた。。」
「上司が何も決めてくれない。。」

『他者と働く』の著者である宇田川さんが、「理屈はわかったけど、実際会社でどうしたらいいのか分からない」という読者の声に応えた一冊。

組織が抱える『慢性疾患』に、どう立ち向かうかを示してくれます。

だいじなのは『セルフケア』

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だれしも職場に不満や不安の1つや2つあるかと思います。そうした問題は、売上や利益に必ずしも直結するものではない小さな問題かもしれませんが、繰り返し起こると組織に閉塞感をもたらし、気がつくと色んな悪影響を及ぼすようになるかもしれません。

そんな組織を理想的な組織にしていくための取り組みが『対話』です。
「ただでさえ忙しいのに、これ以上会議を増やさないでくれよ」という声が浮かぶかもしれませんが、いつもの会議で問題解決できていない、打開策が見出しにくい問題こそ、対話のお題になります

具体的手立てを講じる『セルフケア』と書いていますが、「自分が問題を見つけたのなら、自分で解決策まで提案してくれ」という当事者任せの考え方ではなく、「自分には出来ないから、誰かにやってほしい」という他人任せの考え方でもありません。

問題を抱える当事者が、周囲の力を借りながら、小さいながらも確かな一歩を踏み出すための『自分たち』によるケアの取り組みが対話です。


組織の慢性疾患(≒仕事習慣病)に向き合うには

そもそも『慢性疾患』とはどのような問題なのでしょうか?

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慢性疾患は、ゆっくりと、しかし確実に進行します。原因が複雑で不明瞭なため、切実な問題は表面的な問題の背後に潜み、打開策も見えにくいため後回しにされがち。関係者も多く、だれと何をすればいいのか分からないため、協力を募ることすらままなりません。。しかし組織内で繰り返し目にすることがあり、根治することがないため、一生付き合わないといけません

生活習慣病の仕事版、『仕事習慣病』とも言えそうです(が、症状なり問題が個人だけでなく、他の人達にも伝染する点は異なりますね。)

慢性疾患に向き合うには『危機感は生まれにくいと自覚』し、『問題発生のメカニズム』を理解するための対話を実施する。その際『問題を単純化しない』よう注意し、『問題が出てきたら面白がる』くらい、問題を歓迎する。

「あなたの部署は、問題がありますか?」と聞かれると「はい。やまほど!」と多くの社員が答えるでしょうが、その部署の管理職は「いえ。大きな問題はありません」というはずです。

『問題の存在を認める=低い評価をされる』という考え方がある組織だと、表立って組織の問題を認めるわけにはいかず、「Aさんが悪い」という個人の問題にしてしまいがち。。加えて「組織を変えたい」という言葉も、「今の組織を認めない」という存在否定にも捉えられ、メンバーから反感を買うかもしれません。。

では、どのように問題提起するといいのでしょうか?

自分も問題の一部だと、気づき、認める

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まずは対話を始めるにあたって、具体的な問題が生じた際の『エピソード』を語ります。要点をまとめたり、問題と原因を整理するのでなく、参加者が頭の中にシーンと登場人物の関わり方をイメージしやすくすることで、「それって、こういうことなのでは?」という新たな視点や解釈が入り込むための想像力が湧いてきます。(『眺める』くらいの、遠い距離感と広い視野も大事ですね)

そうすると問題提起した当事者自身も、参加者も「もしかして、自分も問題を起こしている1人なのかも」ということに気がつく。問題の一部だと気づくことで「自分にもできることがある」と気づくことが出来ます

それは薄々感じていたことかもしれませんし、心のどこかで見て見ぬふりをしたかったことかもしれません。しかし、当事者や対話に参加する他の人が「私にも問題がありました」と認める姿をみることで「自分にも問題がある」と認められる、弱さを見せられる場が生まれるのだと想像します。

誰かから評価されたり、責任を追求されるのではないからこそ『問題があることを受け入れる』という最初の一歩を、ともに踏み出せるのでしょう。

当事者性をバトンパスする『2on2』

さいごに具体的な対話の方法として『2on2』のご提案。

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問題を抱える当事者Aさんが、参加者を集め口火を切ります。問題に近い順当事者のBさんとAさんが対話をする間、同じ准当事者のCさんと、別組織から参加するDさんは、マイクミュートで画面もオフで2人の対話を聞きます。(オンラインのほうが、対面より気を使わず話せるので2on2向き)

AさんBさんの対話に10分程で区切りをつけ、次はCさんとDさんの番。問題に近いCさんがAさんの代わりになって話をし、Dさんは素朴な率直な問いかけをして、新たな視点から問題を眺めていきます。

Aさんは当事者として問題提起をしますが、「自分には解決できない(あるいは解決するのは他の人)」という感覚かもしれません。BさんやCさんは「Aさんの問題であって、自分の問題ではない」という気持ちで参加しており、Dさんに至っては「Aさんたちの部署の話」と他人事なはず。

そんな状態から対話をしていると、Aさんに代わって話をするCさんは問題の当事者の代役になり、聞き手であるBさんやDさんも問いかけを通して、問題を解きほぐす担い手となるところから、全員が当事者と同じエピソードの中に身をおいて、自分なりの見方で問題を見始めます。それは『当事者性のバトンパス』のようなもの。

これを2ターンずつ実施していきます。質問の例は以下です。

1ターン目
・何に困っているか
・どのような場面でその困りごとが起きるか
・それが起きるとどんな気持ちになるか
・それについて、Aさん自身はどんな気持ちになるか
・周りの人たちはどんなふうに思っていると思うか(p.155)
2ターン目
・その問題はいつから、どんなきっかけで生じるようになったか
・どんなときによく発生するか
・もう一度同じ問題を起こすにはどうしたらいいか。もっと悪くするにはどうすればいいか(反転)
・問題について語らてこなかったのはどうしてか
・問題に名前をつけるなら、どんなネーミングが考えつくか(p.156)


2on2での対話の大事なポイントは『反転質問』と『ネーミング』あたりにありそうです。後編に続きます。(後編には、noteで使ったパワポを掲載してますので、よかったらご活用下さい!)