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教育探究科学群の原点

ASPIREというプロジェクト

2011年から、ASPIRE(あすぱいあー)というプロジェクトに関わり続けています。ASPIREは、Action by Students to Promote Innovation and Reform through Educationの頭文字をとったもので、同時に通常の英単語の意味は「熱望する、目指す、志向する」みたいな和訳が当てられています。ASPIREの目的としては、学生主体の教育を通じた改革みたいな感じです。元々、国連アカデミックインパクト(United Nations Academic Impact: UNAI)という国際的な大学間連携の促進と、国連と高等教育機関の協働を推進する枠組みの中で、ASPIREは国際的な学生連携を促す役割を期待されていました。
桜美林大学は積極的にこの活動に関わっていて、ASPIRE Japanを主導して様々な国際的な学生間連携活動をしていました。自分はそのコーディネーターを務め続けて今に至っています。新型コロナウィルス感染症の影響によって、国際的な活動は随分と制限をされてしまったため、プロジェクトの性質は変わりつつありますが、過去の活動は一応ここにまとめてあります(最近放置気味ですが…)。
2011年あたりの国連周りの状況は、韓国のパン・ギムンさんが国連事務総長をしていたこともあり、韓国は国連関連の活動がとてもアクティブでした。ASPIRE Koreaと呼ばれる団体があり、はじめは日本は桜美林大学の数人で始めていたため、10倍以上の人数がいて随分とお金のかけ方が違ったことをよく覚えています。ASPIRE Koreaとの繋がりは、それ以降ずっと続いており、コロナ前までは夏にASPIRE Japanが韓国に、冬にAPSIRE Koreaが日本にくるというのが定番になっていました。この間、日韓の教科書とか歴史問題とか、お互いが抱える若者の自殺率の高さとか、中々重いテーマを扱ってきましたが、双方のメディアで言われているような空気感はなく、大変良いディスカッションと相互理解がなされていたと思います。もちろん、はじめの日韓の歴史問題のセッションでは、お互いの学生がとても緊張をしていて、双方の代表同士で随分と事前の調整もしていました。ほかにも、世界学長会議(IAUP)で学生セッションの企画をしたり、メキシコや台湾の大学生と交流事業を作ったり、色々な経験を重ねながら以下を基本的な価値観をするに至りました。

C+3C: Curiosity + Collaboration, Creativity, Continuity (好奇心+協働、創造、継続)
2R: Respect and Responsibility (敬意と責任)

この価値観は、現在のASPIREでも同様ですし、教育探究科学群もそのまま受け継いでいます。なお、ASPIRE JapanとASPIREの使い分けについて、ASPIRE Japanは他の日本の大学の学生さんと、国際的な学生連携活動を協働で行う時もあったため用い、桜美林大学の中で活動をするときはASPIREとしています。

とりあえずやってみよう精神

ASPIREは、国連のプロジェクトであるとともに、桜美林大学の重要プロジェクトとしても始まり、様々な大学や学生の国際連携活動をしてきました。しかし、その内容はほとんど既定されておらず、基本的に大枠だけ与えられて後は任せたというスタイルでした。当時の理事長や副学長の先生方は、とりあえずやってみなさいという精神が強く、ASPIREの中で随分と自由にやらせてもらったと思います。また、ASPIREに関わる学生さんにも同じようにとりあえずやってみよう精神で自由に色々なことをやってもらうようにしていました。
世の中の人達が桜美林大学をどう理解されているかは分かりませんが、自分としてはとても自由で器の大きい大学であると思っています。ASPIREもそうですし、教育探究科学群の設置構想についても、大変大きな自由と責任を与えられ、大半の部分を自分と10歳近く離れた若手の方と2人でやってきています。学生数10,000人規模の大学で、こういった形で大学の学部レベルの教育組織が作られたことはすごく珍しいというか、もしかしたらそもそもないかもしれない気もします。
ちなみに、桜美林大学の創設者の清水安三先生も中々豪快な方というか、当時では随分と革新的なことをされていた方で、自分としてはこういった自由な気風があった印象を持っています。実際、「人はみんな同じではなく、それぞれ自由に自分を伸ばしなさい」といった発言もなされていたようです。本人に合ったものを自由に伸ばすというのは、ASPIREの中でも知らず知らず一貫してやっていたことで、教育探究科学群でも同じようにやっていきたいと考えています。

教育探究科学群とASPIRE

教育活動の中で自由を重視することが本当にできるのか?ということは、割と色々なところで言われてきました。今の学生さんは管理しないとできないみたいなこともよく聞きます。確かに、ASPIREはせいぜい数10人規模の取り組みでしたが、その中でさえもうまく適応できなかったり、力を発揮できなかったりして、結果的に学生さんを傷つけたであろうこともあったし、自分自身も間違った判断をしたのかなと悩んだことも多々あります。
ただ、その一方で、ASPIREに参加して人生が変わったという学生さんもいて、ご家族の方々が全く予想していなかった成長の機会を作ることもできています。そして、そういった経験をした人たちの一部は今大学院生になって、教育探究科学群の設置構想を一緒に支えてくれています。自分自身もASPIREの活動から、想像もしていなかったことはよく起きることを学び、そして成績が悪く劣っていると思われている学生さんでも、たった一つの機会でいくらでも変わることを見てきました。これは自分自身も当てはまると思います。なので、教育探究科学群では、はじめから自由な環境では出来ないと決めつけるのではなく、まずは肯定して自由に色々やってみて考えられる場所にしたいと考えています。

ASPIREは10年以上関わっているもので、中々一度にすべてを語るのは難しいですが、またそのうちこの場で書けたらと思います。教育探究科学群は、様々な新しい取り組みをしており、自分の説明不足や説明下手もありまだまだその価値を伝えきれていません。ただ、ASPIREの学生さんは、長い付き合いの人ではすでに6年間一緒にいて、その間様々な活動を通じて共通理解を深めており、教育探究科学群の設置構想でも構想に至るまでの議論から関わってもらっています。ASPIREの大学生や大学院生は、自身の好奇心に基づき、教育的な活動やプロジェクトの企画立案、管理運営、そして実践を続けています。その成果の一部は桜美林大学の実施する「ディスカバ!」やオープンキャンパス、高校訪問などの機会で見ることが可能になっています。ASPIREの皆さんと接すると、きっと教育探究科学群の雰囲気や価値観が垣間見えると思っています。

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