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新しい教育学をつくる

教育探究科学群は「教育を通じて社会を良くするためにはどうしたらよいか」という問いへの一つの答えです。これは現在の大学改革の潮流であるデータサイエンスやAIをはじめとした、国際競争力を高め、稼げる分野を求める社会的ニーズとは異なっています。

しかし、今の日本は少子高齢化と出生率の低下、労働生産人口の減少、低い幸福度、若年層の高い自殺率という問題を抱えています。日本社会は衰退をしており、これまでとは異なる新しい価値観を持つ必要があります。

かつて、BBC(1990)の番組の中で”The Learning Machine(学習する機械)”と題し、戦後の日本文化を扱ったドキュメンタリーがありました。画一的な学校教育や過度な受験競争について触れつつ、当時著しく発展をしていた日本経済の成長の秘密を考える観点から作られていたと記憶しています。この国の教育の在り方は、この時代の価値観から根本的には変わっておらず、日本社会は過去の成功体験を引きずっています。

大学はこれまでの「人材」育成から、教育研究活動を通じた「人」を育てるという方向へとシフトし、新たな価値観を提示することができます。教育探究科学群は、どのように「人」の成長に焦点を当てるべきか考えた時に、好奇心を持って学ぶことを最も大事な価値観であるとしました。その教育は、画一的な内容を機械的に習得するのではなく、人を対象とした探究であり、どのようにして自他ともに成長し、人々がより良く生きていけるようになるかを考えていく営みです。不確実で先の読めない未来において、最も大事な要素は自分の意志で考えて学ぶ力です。その原動力は好奇心であり、そのための方法論は教育学の学びから獲得できると考えました。

日本における教育学の現在地は、教育学=教員養成課程であり、実際教員養成課程を主軸としない教育学部はほとんどありません。教育探究科学群の考える教育が社会に受け入れられるまでは、まだ多くの年月を要します。その間、学内外の様々なところから批判を受け、こんなことをやっても仕方がないとか、これは教育ではないとか言われることもたくさんあると思います。

未来のために必要なことだからこそ、今すぐに多くの人々に理解をされない。そう思って我慢して続けていくことが、社会を変えることに繋がると思い、教育探究科学群を作ってきました。

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