もう現金は使わなくなってきています
掲題を見て、いきなりどうした?と思われる方も多いと思いますが、
日本以外ではほぼこれが常識になってきています。
現金を使わない時代が来ますよ、ではなく、もうそうなってきています、
というお話です。
◆世界的にキャッシュレス化が進む
2021年以降、日本でも本格的にキャッシュレス化が進んでいるようにも見えますが、海外諸国と比較すると、日本のキャッシュレス決済比率は約30%にとどまっているのに対して、主要各国では40〜60%台にまで上昇しています。
ちなみに各国のキャッシュレス決済比率については、
韓国(94.7%)、中国(77.3%)、カナダ(62%)、オーストラリア(59%)、シンガポール(57.6%)、イギリス(50%)、スウェーデン(48.9%)、アメリカ(47%)、フランス(44.8%)、ドイツ(17.9%)と、ドイツ以外のほとんどの先進国で、日本よりもキャッシュレス化が進んできている事がわかります。
※経済産業省資料
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_payment/pdf/2021_001_04_00.pdf
◆スウェーデンのケース
例えば、普及率48.9%のスウェーデンですら、首都ストックホルム周辺ではもはや現金の使える場所がないという状態です。
元々スウェーデンは人口密度が低いことに加え、冬が長く降雪量も多いため、気候条件に伴う現金運搬・運用といったコストが膨れ上がる為、キャッシュレスを導入するメリットが非常に大きかったという事情もありました。
さらにスウェーデンの脱現金化に、一層の拍車をかけたのが、「Swish(スウィッシュ)」の登場です。
スウェーデンには、国民IDと銀行口座を紐付けた「Bank ID」という決済認証システムがあり、このシステムを基盤にして、2012年にスウェーデン国立銀行と大手銀行6行が共同でスマホアプリ・Swishを開発しました。
若者を中心に利用者が急増しており、スウェーデン中央銀行の調査によると2018年時点で10人中7人が利用するほど浸透しています。
Swishは、専用アプリにID番号を登録後、買物をするときなどにお店の電話番号と金額を入力するだけで、銀行口座から即時払いをすることができます。
その為、若い世代の中には現金をほとんど使ったことがない、という人も増えてきているようです。
公共機関のほとんどの券売機では現金を使用できず、市民はSuicaのような交通系ICカードを使用しています。
また、小規模店舗などでも、現金を使用できるところは少なくなってきています。
スウェーデンでは、さらなるキャッシュレス化の実験的な取り組みも進んでいて、手の皮膚にICチップを埋め込み、お店の端末に手をかざすだけで支払いが終わるといった、カードレスによる決済方法も可能になってきています。
◆なぜキャッシュレス決済を普及させる必要があるのか?
キャッシュレス化のメリットのひとつに、現金強奪などの犯罪対策が挙げられます。例えば先ほど紹介したスウェーデンのお隣、キャッシュレス先進国であるデンマークでは、キャッシュレス化を推進した結果、強盗件数が格段に減少したというデータもあるほどです。
現金を扱わないことで防犯効果が高まることを市民も理解しているため、積極的に導入する店舗も多いというわけです。
閉店後の集計の際、現金を数えたり、銀行に入金したりといった現金管理業務も効率化されます。
また、キャッシュレス決済では使ったお金の流れがすべて記録されていますので、お金の流れがすべてわかるということは、犯罪に関わる不正行為の防止につながります。
さらに、インバウンド消費の向上にも期待ができます。
例えば日本に来る観光客にとって、滞在期間中、日本円に両替した現金通貨だけで過ごさないといけない場合、買い物や食事にもセーブがかかってしまうものです。
しかし、キャッシュレスが普及すれば安心して消費できるため、インバウンド消費が高まることが予想されます。
◆デメリットはないのか?
ただ、新たなサービスが生まれれば、それを利用した新たな犯罪も生まれます。
決済アプリが便利である一方で、それらを使って簡単に送金できることを悪用した詐欺が増える懸念もあるのです。
実際、不正に入手したSNSアカウントを使った「なりすまし」詐欺や、病気と偽って治療費を集める募金詐欺、本来のQRコードの上に偽のQRコードを貼付けて支払金をだまし取る詐欺、などが海外で発生しています。
日本でも同様の詐欺が起こらないとも限りません。
◆モバイル決済における個人情報提供問題の問題
キャッシュレス社会では個人の消費行動が詳細に把握されます。
だれが、どこで、なにを、いくらで、どれだけ買ったかという情報が自動的に名寄せされ、我々の消費行動はほぼガラス張りになります。
企業側からすれば、消費に関するビッグデータに、AIを駆使してGPSによる位置情報や気象情報なども加えて解析すれば、一人一人の消費パターンの予測もできますし、緻密なパーソナル・マーケティングやターゲット・マーケティングが有効に行われ、商品やサービスの売上げ向上につながるでしょう。
ただ、逆に消費者側からすれば、キャッシュレス化が進むと、利便性の向上と引き換えに個人のプライバシーが脅かされかねないという事でもあります。
ビッグデータを活用したAIは、さまざまな相関関係を発見する事ができ、例えば、消費者の購入品目のビッグデータから、女性客の妊娠予測まで可能とだとも言われています。
◆キャッシュレス化によって得られるビッグデータの悪用
個人情報が企業や国家に利用され、世論を操作されたり、選挙結果に影響を与えたりする可能性が高まり、国家が市民の日常生活を管理する監視社会に陥る恐れもあります。
キャッシュレス化によって得られるビッグデータは、多くの企業に利用され新たなビジネスチャンスになりますが、人民統治の手段にもなるリスクがあるのです。
消費者を丸裸にするキャッシュレス社会には、プライバシーや個人情報の侵害という「影」があることを忘れてはならないのです。
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