日本人のサッカーに対する誤解
先週金曜日、Jリーグが開幕しました。
昨年に30周年を迎えたJリーグは、次の30年をどのように迎えるのか、
非常に楽しみなところです。
しかしながら、野球と比べ、日本ではまだまだサッカーの人気は弱いと言わざるを得ません。
また、一部でサッカーに対する誤ったイメージ、誤解があるように思います。
今回はそういった例をいくつか挙げていきましょう。
◆サッカーは若者、不良のスポーツ、は誤解
いまだにこんなこと言っている人いますよね。
一部のサッカーファンにだけ配慮するわけにはいかないって言って、とある県でサッカー専用スタジアム建設を妨害し続けた某政治家もいましたっけ。
(一方で地元のプロ野球チームは優遇してますが)
無事完成し、今年のJリーグ開幕戦に間に合ったので安心しました。
また、僕も某有名サッカーチームのサポーターというだけで、人格否定されたことも少なくありません笑。
つまりサッカーファンというのはあまりいいイメージがあるようには思えないのです。
ところが、サッカーファンの年齢層については、一昨年の調査結果において、日本でサッカーファンが最も多いのは70代と判明しました。
もちろんほかの年代と僅差ではありますが、これまでのイメージとは異なります。
また、2015年のJリーグ観戦者の平均年齢は 41.1歳でした。
ちなみに世界をみると、サッカー観戦を好む傾向に男女差には大きな隔たりがあるものの、年齢層でみると、50歳以下ではそこまで大きな違いはなかったそうです。
恐らく、日本では全体としてまだまだ野球ファンが多数派を占め、さらに言えば日本の権力者に野球好きが多い事で、声が多く大きい方の意見が通りやすく、そういうイメージが誇張されたというだけの事でしょう。
ただ、日本では「にわか」サッカーファンが多く、加えて、ごくわずかではあるものの大きな大会があったときだけ渋谷などで騒いで暴れる、ファンを装っているケース(メディアが煽るので、あれがサッカーファンと誤解されがちです)や、ただ憂さ晴らしで暴れるためだけにスタジアム観戦しているような輩(我が愛する某チームに多い…)も散見されるので、もちろんこれは歴史の浅さも背景にあるでしょうが、日本サッカー界の力不足と言わざるを得ないでしょう。
そういったイメージの悪さを改善していくためには、ファンを含むサッカーにかかわる人々全体の、今後の地道な努力が不可欠です。
◆サッカーのルールは分かりにくい?
サッカーはよくルールなどがわかりにくいと言われます。
確かに、オフサイドルールなど一目では何が問題なのか判断が難しいものや、年々微妙に解釈が変わっているルールも一部あるので、それを理解するのが難しい事は否定できないでしょう。
ですが、そういった事は他のスポーツでも頻繁に起きる事ですし、何より、サッカーは「相手より得点を多く決めた方が勝つ」というルールだけ押さえていればよく、細かいディテールの部分は見ている間に自然と理解できるようになります。
また、サッカーはパスを回しているだけでつまらない、というのはたまたまのその試合の質が悪かったり、そのチームや国毎のプレースタイルの問題だったりもするので、激しい体のぶつかり合いや、強烈なシュートが多く見られるプレミアリーグなどを見ると、イメージが変わるかもしれません。
それと、サッカーを好きになるには、スタジアムで観戦するのが一番の近道です。
多くのサッカーファンが魅了されてきた、生の試合の雰囲気を直に体感できるだけでなく、テレビ中継では映っていない部分が見られるので、「ああ、そういう事なのか」という発見も多いはずです。
◆サッカーはパスを多く回している方が勝つ、は誤解
意外と勘違いしている方が多いですが、相手チームよりパスを多く回したり、ボール支配率を高くすることは、勝敗とは直接関係ありません。
そもそも他のスポーツと同様に、サッカーとは「相手より得点を多く決める」、ゴールを決めて勝つ競技であるはずです。
ボールを支配している方が相手にゴールを奪われにくくなる(相手のチャンスが減る)という事は言えるかもしれませんが、総合的に技術に劣るチームが少ないチャンスをものにし、スター選手を擁する強豪チームに勝ってしまうこともある、そこがサッカーの魅力の1つでもあります。
誤ったイメージが広まっている背景には日本の有識者だったり、サッカー関係者の中に、いわゆるポゼッション至上主義者が多いという事が挙げられます。
つまり単なる好みです。
その彼らの多くも、自分たちの言うポゼッションを論理的には説明できず、ボールを保持する⇨試合をコントロールできている⇨つまり有利だ、という認識しかありません。
その認識もかなり間違っていますが。
(正確にはポジショナルプレーであり、ポゼッションとイコールではありません)
◆サッカーは華麗にボールを操るものが優秀、は誤解
日本で人気のサッカー選手の多くが、いわゆる個人技と呼ばれるものに長けている選手が多いです。
特に、まるでサーカスのように華麗にボールを操る選手は最も人気が高く、優秀と評価されやすいです。
ところがここにも誤解があります。
先ほどのパスの件もそうですが、ボールの扱いの上手さが必ずしもゴールに結びつくわけではなく、手段にこだわって本質を見失うのは良くありません。
ですが、技術などを突き詰める事を美徳とする日本では、そこにこだわりすぎる事を懸念する人は少ないです。
(イラストの世界でもそうですねえ。。。)
職人肌という言葉に代表されるように、日本人にはディテールにこだわる特性があります。
それ自体は決して悪い事とは言えませんが、実際ある海外リーグでは、ドリブルという手段やその美しさにこだわるあまり、レギュラーから外された日本人選手がいました。
海外から来た指導者たちからは、「日本の選手はプレーに対するこだわりが足りない」とよく言われます。
つまり本来サッカーにおいては、その先の結果につながるようなプレーへのこだわりが求められ、それ以外はこだわりとみなされないのです。
もっと言うと、「フリースタイルフットボール」という、それこそサーカスのような曲芸を披露する競技においては、
日本人選手が優勝するなど世界大会の表彰台に上がるケースが多く、そういうことをやりたいならそちらがおすすめです。
但し、ボールの扱いの華麗さは関係なく、プレーしている姿そのものが華麗に見える選手は優秀と言えるかもしれません。
優秀な選手は総じてプレーがシンプルで無駄がなく、エレガントに見えます。
◆日本のサッカーは組織的でチームワークがあり、海外は個人主義?
これはサッカーだけに限りませんが、日本人が持っている最大の誤解です。
そもそも、チームワークという言葉の意味が、日本と海外では異なります。
日本でのチームワークとは、一言でいえば和を乱さない、という事。
もっと言えば、命令系統を乱さない事です。
一方で海外のチームワークとは、自分の役割と責任を果たす事であり、
言われた事をやるというよりは、自らこうすべきと考えて行動します。
(もちろん国毎にそれぞれのポジションの役割に対する共通理解はあります)
したがって、その為に障害となるような指示には異を唱える事が多く、
例えば、得点を求められる選手が、過度に守備を強要されると、
得点機を逃してしまいかねないので、当然文句を言います。
(と言っても最近は、世界的に守備の割合が増えていますが)
文句と言いましたが、"交渉"と言った方が正しいでしょう。
ポジションによっては得点が少ないことで干されたり、最悪クビになることもあるので、必死になるのは当然のようにも思えます。
練習や試合の中で、こういった"交渉"が常に行わているのが当たり前なので、サッカー選手には高いコミュニケーション能力が求められます。
ただ、これが日本人であれば、監督に物申すようなタイプの選手はほんのごくわずかです。
海外に渡った日本人フォワードがいつのまにかポジションを変えられたり、不慣れな守備要員にされ、いつの間にか契約満了している原因はこれです。
(それによって新たな可能性に目覚める選手もいなくはないかもしれませんが、僕はそういった事例をあまり知りません)
言われたことだけをこなして、自ら強い意志を持たない選手は、時には都合がいいですが、最終的には必要なくなるか、チーム内での優先順位が下がるのです。
◆指示待ちの日本人選手、自ら考える海外選手
もっと言うと、日本の少年サッカーの練習風景などでは、監督が一方的に指示を出し、それをただただこなしている風景をよく見受けられます。
そして試合ではその内容を忠実に再現しようとし、それがうまくいかなくなると、指示を仰ぐようにベンチをチラチラ見るようになります。
一方で海外の育成年代のチームでは、選手に考えることを促すカリキュラムが組まれ、目まぐるしく変わる状況の中で、大人が覚えるのも難しいくらい複雑なルールを設けることで、選手たちは瞬時の判断が求められます。
またその日によって異なるカリキュラムを、「攻略可能ではあるが難易度の高いゲーム」のように行わせることによって、子供たちは練習に飽きることがありません。
ちなみにNHKの番組で、元フットサル日本代表監督のミゲル・ロドリゴさんが、「大事なのは、早く考える事だ」と子供たちを指導していたのは印象的でした。
なので、育成世代では勤勉で技術に長け、好成績を上げていたはずなのに、成長過程で徐々に消えていく選手が日本人で多いのはそのせいです。
◆体格に劣っているので、日本人は勝てない?
ここが僕が最も誤解だと感じる点です。
正直言うと、確かに体幹の強さなどが、圧倒的に海外の選手の方が有利に見える時代がこれまで続いていました。
ただし、これまでは、です。
ですが、近年トレーニング方法が進化し、日本人選手であっても海外選手に負けない体づくりができるようになりました。
実際、ドイツのブンデスリーガで遠藤航選手が、外国籍選手だけでなく、ドイツ国籍の選手も含めた中での年間のデュエル(対人プレー)の勝率がナンバーワンとなり、名門リバプールに引き抜かれ、先日のカラバオカップでは見事優勝を果たしました。
同じくプレミアリーグに所属する富安選手については、空中戦での勝率で90%近い数字を挙げています。
つまり、個人だけを見れば、日本人と海外選手の身体能力の差はほとんどないように見えます。
今後は彼らをモデルケースとして、同様の活躍ができる選手が増えていく可能性は高いです。
また、日本人の方が身体能力的に優れている部分もあります。
それは「巧緻性」の高さです。
巧緻性は、一般的に手先の器用さというニュアンスで使われることがありますが、スポーツの中では目的に合わせて巧みに調節された動作のことを指します。
つまり、跳ねたボールをうまくミ―トしてシュートする、など、自分の動作を思った通りにコントロールする力が非常に高いという事です。
ただこれも、姿勢の悪さだったり、骨格のゆがみなどがあるとうまく働かず、また日頃から自分の脳内の動作のイメージと実際の動作を一致させる訓練(武井壮さんがよく言っているやつです)を日頃から意識して行っていかないといけません。
いかがでしょうか?
皆さんが想像するサッカーと、実際のサッカーとでは、イメージの差が大きい、という事を知ってもらえるとすごくうれしいです。
今後もこのような啓蒙活動を続けていきたいと思います。
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