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#87 米国発スタートアップ飲料水ブランド「Liquid Death」の時価総額が7億ドルに

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(Cover photo:Liquid Death Instagram

Briefing

米国発スタートアップ飲料水ブランド「Liquid Death」の時価総額が7億ドルに

米国のスタートアップ飲料水ブランドLiquid Death(リキッド・デス)は、直近の7000万ドルの調達によって、創業3年目にして時価総額が7億ドル(約1010億円)に達したと『Bloomberg』は伝えている。同社は2019年に飲料水事業をスタート。2021年の売上高は4500万ドルだったが、今年はすでに1億3000万ドルに達する勢いだという。

Liquid Death社は、ビール風のスタイリッシュな缶に入れて販売した点にある。天然水をクールなパッケージで売ることで、お酒やエナジードリンクのようにポップに見せ、バーやクラブで飲んでも雰囲気を壊さずに飲めるようにしたことで商機を得たとCEOの Mike Cessario氏は語っている。加えて、アルミ缶を使用することでペットボトル飲料水よりも環境によいとされている点も評価された。同社のサイトには、Liquid Deathを楽しむファンや子供などの写真が掲載されており、現在はフレーバー付き炭酸水やオリジナルグッズもリリースしている。

今回の資金調達は、新フレーバー開発費用とヨーロッパ市場への参入に充てられる予定である。日本ではまだ未発売だが、飲料水の固定概念を覆すことで人気となったプロダクトがより多くの国で展開することになったら、どう評価されるのかが楽しみだ。

メキシコで非公式のSHEIN店舗が立ち上がっている現象

世界のテックニュースを届ける非営利メディア『Rest of World』によると、メキシコ全土、特に人口密度の低いかつ低所得層の多い地域を中心に、中国発ファストファッションブランドとして言わずとしれた「SHEIN」の製品を非公式に扱う実店舗が増加傾向にあるという。

メキシコ国内のインターネット普及率は約75%だが、詐欺被害への不信感やキャッシュレスの普及途上、物流網の脆弱性を理由に、買い物におけるオンラインショッピングの割合は約9%にとどまっている。こうした地域柄を逆手に取り、地元の個人経営のブティックなどがSHEINの商品を購入し、自分たちの店舗で非公式に販売する現象が起きている。しかもSHEINでは大量購入によって送料や商品代金が大幅に割引されるため、、店舗側の利益を上乗せすることなく、公式と同価格で販売しても店舗側が利益を創出できるというからくりも隠されている。

そんなメキシコは、SHEINが注力している市場の1つでもあり、これまでの2年間で少なくとも4回の公式ポップアップが展開されている。同国内で増える非公式店舗に対してSHEINは、コピー商品への注意を呼びかけるとともに、公式サイトのからの購入を推奨するにとどめており、摘発や取り締まりをする意向はないようだ。


Editor’s View

『米国発スタートアップ飲料水ブランド「Liquid Death」の時価総額が7億ドルに』を読んで

ポッドキャストで詳細を話しているが、Liquid Deathはただ良いパッケージデザインを出したから売れた水ブランドではない。そもそものブランドコンセプト、サステイナビリティをエンタメ風に推し出す方法、SNS戦略、ビジュアル・クリエイティブ、ディストリビューションの考え方、パートナーシップの考え方ががあるからこそ年間$130Mの売上を達成出来た。特にSNS(TikTok)の使い方、クリエイターをスポンサーしなくても勝手に使ってくれること、そして今後はLive Nationとの提携によって色んなカルチャーモーメントに根付くチャンスを作り続けていることがすごい。あるスーパーでは591mlのAquafinaの水ボトルと比べて500mlのLiquid Deathが$2.09だった。1ml単位だとAquafinaの方が安いのに、商品価格はLiquid Deathの方が下回るので安く見えるのも細かいが重要な戦略的判断。── Tetsuro(@tmiyatake1

Liquid Deathの面白いマーケティングは、ぜひInstagramのアカウントなどからチェックしてみてほしいです!また最近、小さい床屋やタトゥーショップなどのインディーショップに卸すDeath Peddlers(死の売人?)というプログラムを開始。クリエイティブからディストリビューションに工夫がたくさんあり、パケのかっこいいただの水とは言い切れない魅力がありますね。──Miki(@mikikusano

『メキシコで非公式のSHEIN店舗が立ち上がっている現象』を読んで

メキシコでのSHEINの非公式店舗の広がりは、誰でも大量購入による割引システムを使えば元の値段と同じ価格で販売できてしまうSHEINの仕組みがまずひとつの強みとして機能している。人気が出れば転売や共同購入が起きるのは自然な流れだが、通常はそこに販売側のマージンを乗せるので、プレミアがつくものでないとなかなか売れないが、SHEINの場合は店舗側がほぼ卸売と同じ感覚でやっているのだと思う。そしてなにより、SHEIN側がこれらを取り締まることなくあえて野放しにしているところも面白い。そもそもSHEIN側が直営店舗を持っていないので、彼らにとってはこうした非公認店舗は直接的な競合ではなく活用すべきネットワークのひとつという認識なのかもしれない。──Asami(@qzqrnl


Podcast

今回はこんな話をしています!

・Liquid Deathはただの「かっこいい水」じゃない!
・企画の打ち出し方がYouTuberっぽい
・1本あたりの値段もそんなに高くないんですね!
・SHEINの人気とサステナブル思考の矛盾
など

News


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