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心肺蘇生の普及はなぜ大事?

心停止は全身に血液を送っている心臓の機能が突然停止してしまう状態です。
止まってしまった心臓の代わりに心臓マッサージで全身に血液を送り、心臓を止めてしまう不整脈をAEDで治療することが心肺蘇生の目的です。

心肺蘇生は医療従事者でなくても誰でも行うことができる、命を守るための大切な処置です。心肺蘇生に関してちょっと詳しくなる話を見てみましょう。


1. 心停止って何?


みなさんの心臓は休むことなく動き全身に血液を送っています。血液は脳や体中の臓器をめぐり、酸素を届けることで機能を維持し、活動することができます。
心停止は、何らかの理由で心臓が突然血液を送ることができなくなってしまう状態です。全身に血液がめぐらなくなると、脳や臓器は機能を維持できなくなり、意識を失い、死に至ります。

2. 心停止に対する処置


心停止してしまった人に対して行う処置が心肺蘇生です。心肺蘇生の役割は大きく2つあります。一つは止まってしまった心臓の代わりに全身に血液を送ることです。そのために心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行います。もう一つは心臓が止まってしまった原因を取り除くことです。そのために行えることはAEDを使っての電気ショックです。
病院についてからは心停止の原因になる病気や状態への治療を行いますが、病院に運ばれるまでに行えること、そしで誰でも行えることは心肺蘇生です。
市民の方による心肺蘇生が実施されない場合、心停止した人の1カ月後生存率6.6%1カ月後社会復帰率3.3%と非常に低い割合です。その場に居合わせた市民の方が心肺蘇生を行うことで1か月後の生存率は1.9倍、社会復帰率は2.7倍に上昇します。
みなさんの勇気と処置が、心停止した人の人生を左右するのです。

3. 心肺蘇生法① 心臓マッサージ


まず、心臓マッサージについて説明します。
マッサージと言っても気持ちが良くなる程度に優しくしても血液は全身に回りません。渾身の力を込めて、胸の真ん中(胸骨という骨の下半分)を成人であれば5-6cmはしっかり押すことでようやく血液を心臓から送り出すことができます。心臓から送り出すだけでは心臓マッサージは不十分です。押した部分をしっかり戻すことで、全身から心臓に血液を戻し、次に送る血液を充填することができます。自転車の空気入れをしたことがある人は、送り出した後にしっかり戻すイメージができると思います。
心臓マッサージの速さも重要です。遅すぎると全身に十分な血液をめぐらすことができず、早すぎると深さが浅くなってしまうことがわかっています。1分間に100-120回の速さで押しましょう。
そして最も重要なのは絶え間なく行うことです。心臓マッサージは止まってしまっている心臓の代わりです。心臓が止まっている時間は1秒でも短くしましょう。

心臓マッサージの詳しい行い方はマイページから動画を見てみましょう!

4. 心肺蘇生法② AED


次にAEDについて説明します。
AEDは誰でも使うことができるように工夫された、心停止した人に電気ショックを行うための装置です。全国に約60万台設置されており、皆さんの周りにも、公共施設や教育施設、スポーツ施設などに必ずあると思います。AEDが使用できなかったことによる様々な不幸な事例を受けて、全国でAEDの設置が進み、日本は世界で最もAEDの設置が進んだ国になっています。しかし、AEDがいくらあっても、正しい使い方を知らなければ、本当に必要な時に使おうとしなければ意味がありません。
AEDが効果を発揮するのは、心室細動と呼ばれる不整脈がおこり、心臓の正常な動きが出来なくなってしまい心臓から血液が送り出せていない状態になっている場合です。
でもそんなの見た目で判断できないですよね?
大丈夫、AEDが自分で解析して判断します。皆さんが考える必要はありません。AEDの電源を入れてパッドを心停止した人の胸に貼り、AEDが心電図を解析するのを待ちます。AEDが心室細動を検知すると電気ショックを行うための準備を自動で行います。
心室細動による心停止だった場合、どれだけ早くAEDで電気ショックを行ったかが予後に大きく影響します。市民の方が電気ショックを行った場合、1か月後の生存率は50.3%、社会復帰率は42.6%と非常に高くなります。
AEDが必要かどうかを皆さんが悩む必要はありません。AEDを装着すればAEDが判断します。電気ショックが必要な方を見過ごすことのないように、心停止した人に遭遇した場合は心臓マッサージを行いながら、他の人にAEDを持ってきてもらい、出来るだけ早くAEDを装着しましょう。

AEDの詳しい使い方はマイページから動画を見てみましょう!

5. 一歩踏み出すために


ここまで、心停止した人に対し心肺蘇生を行うことの大切さを話してきました。
誰かが心停止した場面に出くわした時、一歩踏み出すのはとても勇気がいります。周りからどう思われるか、自分じゃなくてもいいんじゃないか、いろいろ考えると足がすくみます。しかし、皆さんが自信を持って心肺蘇生をすることで助けられる命が目の前にあります。
心停止した人に遭遇することなんでそうそうあるもんじゃない、と思う人もいるかもしれません。しかし、皆さんの周りの人が、大切な人が、突然心停止になってしまった時、私たちは皆さんに後悔してほしくありません。正しい知識があり処置ができて、あの時やれることは全てやったと皆さんが思える、そして大切な命が助けられることが私たちの目指す未来です。
常に自信を持っているためには、繰り返し知識や技術を学び返す必要があります。忙しい生活の中でモチベーションの維持は大変です。
そこで、ライフサポートサーキットでは皆さんがモチベーションを保てるように様々な情報をお伝えし、何度でも動画を視聴できるようにしています。動画を見るだけでなく講習会を受けたいなと思った時、どこに情報を求めたらいいかわからないと困りますよね。そんなときのために、講習会情報もまとめています。ぜひご活用ください。
心肺蘇生を自信を持ってできる人が増えれば、皆さんだけでなく、より多くの人の力で、より多くの大切な命を救うことができます。この記事を読んでいただいたのはそのための第一歩です。

参考文献:令和5年版 救急・救助の現況(総務省消防庁ホームページ)


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