歌誌『塔』2024年2月号掲載歌「海のなかにもまた海がある」
みなさま、こんにちは。
早いものでもう3月に入りました。
今日はまだマフラーが必要な寒さです。
この記事には載せておりませんが、選から漏れてしまった歌にこそ、よりよい歌を詠むためのヒントがありますね。
今月は私にとって挑戦的な?テーマだったので「これはダメ、あれはセーフ」と多くの学びをいただきました。
それでは『塔』2024年2月号の掲載歌。山下洋選です。
夕顔…と聞いて私が真っ先に思い起こすのは『源氏物語』です。
夕顔という女人は、光源氏と恋に落ちるものの、六条御息所の生霊に憑りつかれて亡くなってしまう・・・。
物語では「らうたげにあえかなる…」と記されています。
かわいらしい様子で華奢なうつくしい人という評です。
こういうイメージがあって、「夕顔はほのかに…」の歌が生まれました。
夕顔は妖しくて儚い花。
余談ですが…CiNiiで面白い論文を見つけました。
タイトル:『源氏物語』において「あえか」という言葉が果たした役割
著 者:吉村研一
書誌情報:学習院大学大学院日本語日本文学(10号, p. 16-30, 発行日 2014-03)
https://glim-re.repo.nii.ac.jp/records/3230
論文の冒頭を引いてみました。興味を持った方はぜひご一読ください。
本も良いですが、論文を読むのもまた愉しいものです。
論文は研究者だけのものではありません。人類の共有財産です。
「睦言をかはしし時に…」の歌は、「さにづらふ」という言葉を使いたいと思ってあれこれ思案していたときに生まれた歌です。
下の句「君をあはれと思ひけるかな」は、吉井勇の歌の雰囲気に近いものが出ていたら嬉しいなと思います。
たとえば「砂浜の船に腰懸け君に聴く恋ものがたりあはれなるかな」などを思い浮かべていただければ…。
昨今流行している現代短歌では「思ひけるかな」という言い回しはほとんど見かけません。言葉遣いが古いことと、この七文字にはほとんど意味や内容がない(ように見える)ことが原因でしょうか。
内容がないことは決してマイナスではなく、私にとってはむしろプラス。
意味を詰め込みすぎている歌が多いなと思っています。歌のいのちは韻律にある、というのが私の立ち位置でしょうか。
このあたりのことは歌誌『塔』3月号に掲載される選歌評で少し書きましたので後日noteに掲載します。
それでは、また。
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