由季 調『歌集 互に』(ながらみ書房・平成18年)
みなさま、こんにちは。
今日は、由季 調さんの『互に』という歌集を取り上げたいと思います。
この歌集の特色のひとつとして、ひらがなが多用されている点が挙げられます。ひらがなを用いた歌人としては、会津八一が有名ですね。会津八一は総ひらがなの万葉調の歌を遺しています。
それでは、由季さんの歌の世界へ。
ひらながの歌は一首を読むときの滞在時間が長くなります。
「あゐいろ」は「藍色」よりも深い色合いを思い浮かべます。
「いんくびん」は「インク壜」よりもどこか可愛い感じがします。
・・・こんなふうに言葉ひとつひとつを見ていくのが愉しい。正解はないので、自分の感じたイメージを大事にしてほしいですね。
メタ的な視点も感じる歌の歌、三首。
「けれどもうたふときにはひとり」たしかにその通りだ。恋はひとりではできないけれど、恋歌を詠むその瞬間はひとり。
そして相聞歌。
滅びの美学。「こはれゆく」ものが一体何であるか、ここでは明示されていません。説明していないのがいい。私はこういう歌が好きです。
私はこの歌からデンマークの画家 ヴィルヘルム・ハマスホイの静謐な室内画を思い浮かべました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?