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優しさは地球を循環するエネルギーのように

君の思いつきでホットケーキの素を買いにスーパーへ行ったのは、夕方の3時ごろだった。

2人は下北沢に借りたアパート戻ってくるとすぐに、レジ袋を開けて調理に取り掛かった。

普段から料理をあまりしない僕たちは、あまり上手に焼けなかったが、2枚目に作った方は意外と綺麗に膨らんだ。

1枚目は割とぺたんこで少し焦げてしまったのに比べて、2枚目は綺麗な狐色に焼き上がっていたんだ。

君は何も言わずにそちらを譲ったんだ。

綺麗に焼けたホットケーキを譲った君。

これが優しさなんだ。

小さな小さな自己犠牲。

優しさの本質って、きっと自己犠牲にある。

おばあちゃんに電車の席を譲ったり、
あの人を傷つけないための嘘をついたり、

優しさの種類は多様だけど、どれも多かれ少なかれ「自己犠牲」が伴うはずなんだ。

だからこそ、本当に人に優しくするのは難しい。

僕らは、誰かから優しくしてもらった経験のおかげで人に優しくできる。

もらった分だけ与えられる。

こういう意味では、優しさは有限なのかもしれない。

優しさは地球を循環するエネルギーのように。

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