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「少女」のように不確かな輪郭で

夜の街を歩いてみれば、過ぎゆく人たちの輪郭はぼやけている。

孤独を紛らわすかのように身体を寄せ合う。

そう。いつだって曖昧な輪郭を補い合うように。溶け合うように。

孤独や不安、焦燥感のなかで、僕らは自己存在の不確かさを感じずにはいられない。

複雑な因子が雑然と絡み合うこの世界で、もはや僕らは内と外の区別すらつかない。

芸術家イケムラレイコの言葉を借りるとするならば、「少女性」とでも言えようか。

ここでの「少女」とは、無論、生物学的なそれではない。

「存在の不確かさ」「複雑な悩みが織りなす憂鬱」

大人であっても「少女性」を孕んでいる世の中なのだから、

ましてや制服に身を包んだ彼、彼女らが、この類の感情に悩まされないはずがない。

それでも、輪郭が曖昧だからこそ他者と溶け合えるのかもしれない。

氷と氷では互いに混じり合うことは決してないが、溶けてしまえば自然と交わる。うち流れるように。静かに安らかに。

僕らが今にも消え入りそうなのは、ひとりで苦しむためじゃない。

誰かと溶け合うためなんだ。

身体を寄せ合うためなんだ。

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