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工場の商品開発の目的のひとつは「顔作り」


熊本県の精密板金加工の丸山ステンレスさんの活躍をTVや雑誌などで見られた工場の皆さんが、ウチと同じような工場が頑張ってるぞ!という同じ気持ち、ウチも頑張りたい!って同じ衝動にかられて強い気持ちでいらっしゃった方が増えいるなと感じます。

ですが、その殆どの会社が下請け企業さん。下請けといえども、その仕事は僕らが普段目にしている有名な飲料や有名な企業の製品や震災で命を守った製品やオリンピックのスポーツのハイテクな品々や宇宙関係のお仕事など。それはそれは素晴らしい実績をお持ちの工場や職人さんたちです。

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でも、手掛けた仕事は彼らの会社のWEBサイトには載ってはいないし、会社案内に記載することも許されない。なので業界以外の方々は社名を聞いても知らない。製造業に就職したい学生にだってリクルートサイトで凄さを伝える事が難しい。

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普段の仕事では高い技術を頼られている会社だけれど、下請けや分業でいると、自分たちは何をつくっているのか、どこで頼りにされているのか皆目わからない。そんなところが結構多い。

以前、僕らと取り組んだ愛知県瀬戸市の陶磁器原型職人の吉橋さんは、細かな手彫りの技術を持ちながら、活かすことがなかなか難しかった。秀でた技術を広くアピールすることもなかったので、陶磁器業界内でも知られず、ましてや業界外が知る由もなかった。

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職人の技術をわかりやすく点の強い企画にするために当初考えてらっしゃったシンプルなお皿ではなく、手編みセーターの網目のような凹凸のある器をつくったことで、「秀でた手彫り技術の職人」という顔を手入れることができたのです。

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自らの技術を商品という形にしたことでわかりやすくデザインでき、
陶磁器業界以外からも認識され、自社の認知につながりました。

何のためにつくるのか? 「2つ目の理由は?」

そういう工場から相談を受けるのは商品開発。いつも聞くのは「何のためにつくるのか、2つ目の理由」色々な想いや課題を抱えているのはどこの社長さんも同じ。
1つ目はもちろん売上や業績の向上。それは皆さんが共通している課題。2つ目の要望や課題にその会社のお悩みが潜んでいる。

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小さな工場が大手と同じような戦略は選択できない。仮に自社商品が出来上がったとしても会社の資金面、生産数や設定価格面から考えても大きなリスクを持った開発は難しい、低コストで展開が難しければ、大きななヒットへつなげるには難しいことも多い。

そんな工場に僕が思うのは商品開発の目的のひとつは下請け企業の「顔作り」でもあると思います。日本の下請けで活躍されている事業に従事している人たちは、人間で言えば首から下は凄い身体をしている会社ばかり。どんなことでも対応できる凄技を持っている集団。頼まれればなんでもできる。まさに筋肉隆々のバッキバッキボディのところもあるかと思います。

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問題はその上の顔。他の業界の人たちから認識してもらえる顔(=売り込める仕事)がないのです。社員さんの家族だってお父さんがどんな仕事をしているのか知らないし、お父さんも胸を張って言える仕事があったらどうでしょう。じゃあ知ってもらうにはどういう顔なら良いのか。


自分たちが誇れる「顔」を新たにつくる。

「凄いんだ!」ってところをどうやて見せつけるのか一番自分たちの技術の何を知ってもらいたいのか。優秀な身体(技術)の工場の「イイ顔」ができれば、周囲の皆さんが認識をされますよね。

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そして工場の皆さんたちも「顔」ができれば自分(工場)の目で、次の景色を見ることもできます。その景色はコレまでとは違った景色。

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視座が変われば自分たちや周りの対応も変わってくる。
そうすると皆さんの意識も変わってくる。その流れをコレまでたくさんの現場で見てきました。そういう現場に出会っていくたびに本当にこの仕事はやりがいのある言いし仕事だと僕は思っています。


デザインは人を救うことだってできる素晴らしい仕事だと思ってます。

下記が以前出した本。

で、中国語版も発売されました!

中国にお知り合いがいらっしゃいましたらぜひ。







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