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墨田の自動車部品の下請工場が生き残るために取り組んだこと。

今ある設備と技術から、違う業種へと舵を取る。

墨田区の方々と出会ったきっかけになったのは
墨田区内の事業者の育成を目的にした「すみだブランド事業」のコラボレーターとして参加させてもらったことがきっかけ。

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墨田区との関わりが深くなって新しい拠点づくりのプロジェクトに参画させていただくことになり、現地の皆さんや銀行さんのラブコールもあって一昨年引っ越しました(笑)

で、コラボレーション事業で80年以上の歴史を持つ金属プレス工場、笠原スプリング製作所の4代目笠原さんと出会いました。

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笠原スプリング製作所の工場のはじまり

そもそも笠原さんところの工場のはじまりは板バネの製造で、次第に金属プレス加工、溶接加工、平面研削加工と設備と技術を広げ、金属加工の腕が見込まれて大手自動車メーカーなどの部品を生産する下請けをされてました。

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が、バブル崩壊で仕事が減り、リーマンショックで主軸の下請け仕事がゼロに。
日本の町工場の殆どはメーカーや商社から試作品は依頼されるのですが、量産となる部品関連は海外の生産工場に振られてしまうことが多く、笠原さんの工場も厳しい経営環境にありました。

厳しい脱するために自社で収益を上げられる商品開発をしたいけれど、現状の部品加工の現場で何を作ればいいのかわからない。ただ部品だけをひたすら作っている現場にいることで何ができるのか、良いのかもわからない状態でした。
新商品を作るにもプレス機械を使うには金型も必要となります。金型を外部に委託していたこの現場では新商品を作るにも新たなリスクが発生する。なかなか難しいなと感じていました。

墨田区の事業がきっかけで出会ったときに笠原さんが話していたのは僕らが最初に作っていたハッピーフェイスクリップを作った現場と同じ技術を持っているからと言う理由でした。

同じ設備で何かができないだろうかというのが最初の笠原さんとの会話だったかなと。早速笠原さんの工場へ伺いました。そして工場の待っている技術と設備、素材を工場内を散策していきました。

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機械だけを見てもわかりませんので何ができる機械なのか、それぞれをバラバラに機能などまとめて整理したところ、複雑で細やかなプレス加工に長けていることと現場にあったこれまでの試作サンプルなど見て、技術的に難しいとされている細い幅の長い金属もなんとか加工できそうなことがわかりました。

ちょうどその頃、ウチの会社のレストラン事業で、依頼されたケータリングやパーティの仕事で毎回終わったときに使用済みの竹のピックを廃棄していました。
経営者としては毎回購入してはゴミになる。捨てないで再利用できればなといつも感じていていました。

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(毎回ケータリングではピックは結構な量を使います)

で、そのことを思い出して、もしステンレスで製作できればどうだろうかと。

現場のスタッフと話していて考えたのが「TREE PICKS(ツリーピックス)」でした。洗って何度も使用できるカトラリーのようなステンレス製フードピック。飲食チームのスタッフや関係の方々にも聞きつつフォルムの細かな設計から最終仕様が決定。

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試作を開始し始めていくのですが本生産に入っていく中で、

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金型のセッティングや設計など製造面での不安もあり笠原さんと何度も打ち合わせを重ねました。(原価も大きく変わってきますので)

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今回は金型をどう設計するかも生産を続ける上で重要だったこともあり、細かな調整や設計のことを僕にわかりやすく説明するため工場の床にチョークで書きながら笠原さんが説明中。

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細くて長い形状をきれいに反らないように抜くのは量産を考えると金型のセッティングもかなり難しいこともわかりました。

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枝の部分に色とりどりの食材を盛り付けると、実がなった木のように見えます。

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そして展示会にも出展。ブース設計から営業まで僕らは伴走。

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展示会に合わせてクラウドファウンディングにも挑戦し、東京や大阪での交流会などトークイベントにも参加してもらいました。異業種やメディアの方や多くの方々に見てもらい、取り上げられるよう、各所に情報を配りました。

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(東京で購入者向けのトークセッションも開催しました)

そしてホームパーティだけでなく、ケータリングビジネスでも使ってもらいたいとこれまで笠原さんが繋がりのないフードスタイリストの方にも注目してもらえるよう、協力してもらうような流れも作っていきました。

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(また近々SNSでお願いしようかと思います!)

たった1人で部品の下請けをしていた金属加工の町工場は「プレス加工に優れた町工場」という顔を手に入れることができ、様々なメディアにも出演できるきっかけが増え、新たな収入の道を見出すことができました。(まだまだ本業に繋がる仕事が回復するまでは時間がかかるかと思いますが、それまでに違う仕事はすこしでも増えてほしいなと思ってます)

「会社の顔を作る」となると大げさで大変で難しいことをするのかと受け止められてしまうかもしれませんが、これまでの状況から景色を変えるためにまずは身近な周囲からでも変わっていくのであることを知ってもらうことで、たくさんの接点を作る。「会社の顔を作る」というのはそういう機会を増やすことでもあると思います。

ぜひ家でお子様と一緒にどうぞ!(笑)




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