ボーイング

（写真はみんなのフォトギャラリーから頂きました）

昨日はレッスンでした。
お伺いすると、K先生は、いつもならチェロを弾いているのだが、なぜか昨日は、椅子に座ったまま、私を見て、開口一番、「あ、松の葉茶ありがとう」と言う。
松の葉茶は、私がおススメする松の葉のお茶で、解毒に効くほか、多数の効能があり、日本人が古来より飲んでいた、ビワの葉茶みたいなもの。知っている人は知っていて、健康維持のために取り入れているけれど、知らない人には？？？なのかもしれない。

ではなぜ「松の葉茶ありがとう」なのかと言うと、私が、御年70歳になったK先生の健康が気になり、健康オタクではないものの、自然なお茶や古来の植物の力を信じる私は、K先生の健康のために、買って送り付けたのだった。
それももう3週間前で、先々週にすでにレッスンで会っているのだが、なぜか忘れた頃にありがとうと言うK先生。
「先生、続けて飲んでくださいね」と私が言うと、
「それが、飲むとお腹こわすんだよね、、、でも悪いものは出て行ったと思う。ありがとう」
そうですか、、、まあ、私の気持ちは届いたので、まあいいか。
別に私がK先生の健康を気遣う必要はないのだが、K先生に何かあったら、私を上手くしてくれるチェロの先生を見つけるのは至難の業なので、私のチェロの道が断たれてしまうのだ。なので、K先生にはいつまでも元気でいてもらわないと困る、という、相手を気遣うというふうにみえて、実は超利己的？な私なのだった。いや、こうみえて、私も師弟愛が強いのだ。K先生はへたくそな私など眼中にない感じだが。というか、「え？ワタシあなたのこと弟子って認めたことないけど？」とか言いそうだが。

さて、レッスン。
この日は、私のボーイングが、長い刀を扱いきれず、振り回しているような、ぎこちないボーイングをどうにかしなければ、、、という質問から始めた。K先生はそれには気がついており、「ボーイングもかなり良くはなってきているけど、これからは、その問題を解決していこうよ」と仰られた。

昨日はK先生がいろいろと手取り足取り見てくれて（いつもだが）、長い刀を振り回すようになるのは、結局は、私が肘をきちんと使えず、自由が制限されていることにあるのでは、ということだった。ゆっくり、弦の上で弓をとめて、右手、右指、右肘の高さを確認して、、、と細かい指導をして頂いた。そのことで、弓のUP/DOWNの際に、どの軌道を描いて、どの動きを先にして、などがやっとわかったような気がしている。もちろん、ボーイングは多様であって、その基礎的な形のひとつなのだろうとは思うけれど。ひとつずつ、質問で問題提起することによって、視界がひらけていくのが嬉しい。苦節十数年、、、、「あんた何やってたの？」と言われても（自分が一番そう思っている）しかたがない上達のなさで、技術うんぬんより、自分の考え方が悪いのではないかなど、自分という人間を全否定してしまうような進歩のなさだったが、カメの歩み（亀に失礼かもしれない。実は亀より遅い）の進歩でどうにかやっているのだ、、、
こ、細かい！と思うことがほとんどだけれど、それが美しい音の源なのだなーと思う。「神は細部に宿る」というけれど、細部にこだわるから美しいのだなと思うのだ。

少し脇にそれるが、この「神は細部に宿る（Der liebe Gott steckt im Detail）」という言葉の語源はいつなのかと、気になって調べてみたら、そんなに古くはないのでした。19世紀のドイツの美術史家ヴァールブルク、あるいは20世紀初頭の建築家ミース・ファン・デル・ローエが言ったとされるこの言葉なのだそうで、細部（ディテール）へのこだわりが作品の本質を決めるという意味なのだとか。
 
K先生に、いつだったか、私がまだ音大生だった頃だと思うが、音楽家として目指すものは何か？と訊いたら、「完璧を目指す心かな、、、」と仰った。
当時、別の答えを予想していた私には、意外な言葉であったように記憶している。

うまくなれない期間はながけれど、K先生と丁寧な時間を過ごせるのは、いいことかもしれないな、と少し思う。

と、静かに感動していたら、次の生徒さんが、オーケストラを受験する生徒さんで、K先生は急に浮足立ち、私はレッスン室を追いやられて帰ってきたのでした。まあ、私も、音楽の仕事をできるように頑張らなければ！！

K先生には次は梅干しを持っていこう！

（次回につづく）

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