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ウクライナの芸術家シリーズ

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ロシアの芸術家と思っていた人の大半が,実は現ウクライナの出身だったりして驚いてます。その芸術家が生まれ育った当時はソ連の一部だったりしたわけですが,それにしてもウクライナはロシア…
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2023年11月の記事一覧

【Vladimir de Pachmann, 1848-1933🇺🇦ウクライナの芸術家シリーズ9】

ピアノギークなあなたなら,きっと知ってる伝説の名ピアニスト,ヴラディーミル・ド・パハマン (1848-1933)もオデッサ(ロシア帝国,現ウクライナ)出身。ショパンは1810年に,リストは1911年に生まれているので,その少しばかり後の子ども世代になる。 オデッサ大学の教授だった父親はかなりの腕前のアマチュアのヴァイオリニストで,ウィーンでベートーヴェンやウェーバーらにも会ったことがあるとか。パハマンはこの父親に18歳まで音楽を習い,その後,ウィーン音楽院でピアノをカール・

【Leo Sirota, 1885-1965🇺🇦 ウクライナの芸術家シリーズ8】

ピアニストのレオ・シロタ(1885-1965)を知っているだろうか? ちょっと検索してたらたまたま出てきたこの名前,どこかで聞いたことがあるんだけど...と気になって調べたら,実は日本のクラシック黎明期の重要人物。 シロタの生まれはロシア帝国(現ウクライナ)だが,娘は「パパはキーウ生まれよ」と,シロタの弟子は「ウクライナ南西部の出身って聞いてるで」と言ってるとのこと。ユダヤ系の一家の生まれで,父親は洋服屋。二人の兄は指揮者と音楽エージェントになっている。 シロタは5歳でピ

【Leonid Kogan, 1924-1982🇺🇦ウクライナの芸術家シリーズ7】

20世紀の名ヴァイオリニスト🎻の一人,レオニード・コーガン(1924-1982)はソビエト連邦エカテリノスラーフ(現ウクライナ, ドニプロ)の生まれ。アマチュアのヴァイオリン弾きでもあった写真家の父親がレオニードの才能に驚き,音楽の勉強をさせるためにモスクワに行き,10歳からモスクワ中央音楽学校(1934-43)で,その後モスクワ音楽院(1943-51)で,アウアーの弟子のヤンポルスキー(Abram Yampolsky)に師事する。 コーガンは,モスクワ音楽院で同門となった

【Vaslav Nijinsky, 1890-1950🇺🇦ウクライナの芸術家シリーズ6】

バレエ界の神話的存在のニジンスキー(1890-1950)はロシア帝国キーフ(現ウクライナ)生まれ。両親はポーランド人の旅回りのダンサーで,姉も妹もバレエダンサーになっている。中性的な身のこなし,飛んだまま降りてこないとまで言われた跳躍,抜群の表現力で見る人々を魅了した。 ニジンスキーは1909年に,後に恋仲となったディアギレフが組織したバレエ・リュスに加わって「シェヘラザード」,「火の鳥」,「ペトルーシュカ」等の初演に出演したほか,「牧神の午後」,「春の祭典」などの振り付け

【Maria Grinberg, 1908-1978🇺🇦ウクライナの芸術家シリーズ5】

マリヤ・グリンベルク(Maria Grinberg, 1908-1978)はロシア帝国オデッサ(現ウクライナ)生まれの伝説的なピアニストの一人。同じ年に同じくオデッサに生まれた芸術家にはダヴィド・オイストラフが、少し上 (1904生まれ)にはナタン・ミルシュタインがいる。 グリンベルクは18歳まではオデッサでピアノを学ぶが,その後,前回紹介したブルーメンフェルトに師事している。ホロヴィッツはキーフで1920年ころにブルーメンフェルトに師事していたが,グリンベルクが弟子入りし

【Felix Blumenfeld, 1863-1931🇺🇦ウクライナの芸術家シリーズ4】

ホロヴィッツの師匠でもあり、名ピアニストで作曲家のブルーメンフェルト(Felix Blumenfeld, 1863-1931)はロシア帝国キロヴォグラード(現ウクライナ)生まれ。すでに紹介したゲンリフ・ネイガウス(1888-1964)の叔父だ。 1881年からサンクトペテルブルク音楽院で作曲をリムスキー・コルサコフに師事しており,卒業後もとどまって1918年までピアノを教える。この時期の弟子の一人が名ピアニストのシモン・バレル。この間にマリインスキー劇場で指揮者としても活躍

【Sviatoslav Richter, 1915-1997🇺🇦ウクライナの芸術家シリーズ2】

20世紀最高のピアニストの一人と言われるリヒテル(1915-1997)はジトーミル(ロシア帝国,現ウクライナ)で生まれ,幼少期をオデッサで過ごす。オデッサ育ちのギレリスの1歳年上なので,同時期にオデッサに住んでいたわけだが,この時期に交流があったかはよくわからない。 父親がドイツ系ピアニストとのことなので,基本的な手ほどきは父親から受けたようだが本格的に習ったわけではなく,独学で腕前を上げてリサイタルを開くようになった。ちなみにだが,父親は第二次大戦直前にドイツのスパイ容疑

【Emil Gilels, 1916-1985🇺🇦ウクライナの芸術家シリーズ1】

20世紀の名ピアニストのエミール・ギレリス(Emil Grigoryevich Gilels, 1916-1985)はオデッサ(ロシア帝国,現ウクライナ)生まれ。両親は共にユダヤ人の音楽家だったとのこと。妹のエリザベート・ギレリスはヴァイオリニストで,レオニード・コーガンと結婚している。見出し写真はエミールとレオニードだ。 「鋼鉄のタッチ」と呼ばれるテクニックの持ち主で,どちらかというとルバートは控えめな一方,端正で緻密でありながら強烈な音量のコントロールによる表現が魅力的

【Heinrich Neuhaus, 1888-1964🇺🇦ウクライナの芸術家シリーズ3】

リヒテルやギレリスを育てた名ピアニストのゲンリフ・グスタヴォヴィチ・ネイガウス(Heinrich Gustavovich Neuhaus, 1888-1964)はロシア帝国エリザベトグラード(現ウクライナ,クロピヴニツキー)出身のドイツ系ピアニスト。母方の伯父は名ピアニスト・作曲家のブルーメンフェルト(Felix Brumenfeld),従兄弟に作曲家のシマノフスキ(Karol Szymanowski)がいる。子どものスタニスラフ・ネイガウス(Stanislav Neuhau