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ゲームがうまくなるために必要なこと

 ゲームの楽しさには様々な種類がありますが,そのひとつは勝利という目標に向かって挑戦し,その目標を達成するというプロセスから得られると考えられます。一般に,ゲームにはルールがあり,ゲームの多くはルールに基づいて勝ち負けが決定されます。勝ち負けが決まるゲームにおいて勝つことを目標としたとき,その目標を達成するためには,プレイヤーが上達する必要があります。一般に,プレイヤーは少しだけ勝つよりも,上達してたくさん勝ったほうがうれしいと考えられます。今回は,ゲームがうまくなるために必要なことについて,自分の経験と心理学の視点から述べたいと思います。


練習して熟達する

 ゲームがうまくなるというのは,言い換えればゲームを練習して熟達することにほかなりません。どのようなプレイヤーも,最初はゲームの操作方法やシステムを覚えます。覚えたことを実際のプレイで試してみて,動かせるかどうかを確認したり,目標達成に向かう正しい行動であるかどうかを考えたりします。心理学では,特定の経験や練習を通して行動を変容させていく過程を学習と呼びます。ゲームプレイも学習とみなされます。つまり「ゲームがうまくなった」ということは「プレイヤーが学習した」と言い換えることができます。

 一定のゲームプレイ経験がある人は,新しいゲームをプレイするとき,それまでの経験を生かし,共通点を見出しながら素早く学習を進められます。心理学では,前に学習したことが後のほかの学習に影響を与えることを転移と呼びます。とくに,その学習が促進されるような場合を正の転移といいます。たとえば,ある格ゲーのプレイ経験が豊富な人が,新しく始めた格ゲーの上達が早いのは,この正の転移が起きているからだといえます。この話は格ゲーに限ったことではありません。幼い頃からたくさんゲームをプレイしてきた成人と,ほとんどプレイしてこなかった成人の2名が,新しい(2名ともプレイしたことがない)ゲームをプレイしたとき,たくさんゲームをプレイしてきた成人のほうが上達が早いということは想像しやすいと思います。これも正の転移の例です。

 いずれにしても,ゲームがうまくなるということは,プレイヤーが学習するということであり,学習が進んで熟達していくということです。したがって,ゲームがうまくなるためには,練習という行為が必要になるといえるでしょう。一般に,格ゲーで勝つためには各技のコマンド入力や連続技(コンボ)の練習から始まります。RPGやシミュレーションジャンルでは,無作為に行動をすればよいというわけではなく,強化や勝利を達成するために必要な最適行動を覚え,それに時間をかけていきます。いずれにしても,プレイヤーが上達する道筋が,練習(学習)を通して熟達に向かうという点は,ほとんどのゲームで同じだといえます。


反省して改善する

 私はそれなりに長くゲームを続けてきて,それなりの経験を積み,近くで上手なプレイヤーを見る機会に恵まれてきたと思っています。私は数あるジャンルのなかでも,素早い反応が求められる「アクション」が好きなタイプで,格ゲーに関してはやり込んできたほうだと思います。一方で,よく思考してから行動を選択することがが求められるようなジャンルでとても強いプレイヤーを近くで観察する機会もありました。これらのジャンルにおいては要求されるスキルがまったく異なるものの,上手なプレイヤーには共通した特徴があるように思われます。その特徴とは,反省して改善すべき点を見出すことが得意だということです。

 反省は失敗したときや負けたときによく行われます(もちろん,成功したときや勝ったときでも,よりよいプレイのための反省というものはあります)。反省とは,具体的には「何が悪かったのか」や「どうすればよかったのか」といった自分自身のプレイの振り返りを指します。上達しない(あるいは,上達が遅い)プレイヤーは,反省せずに次のプレイを始めてしまうことが多いと思います。一方,上手なプレイヤーは反省から改善すべき点を見出し,次のプレイに生かします。学習は特定の経験や練習を通して行動を変容させていく過程だということを先に述べましたが,ここで大切なことはどのように行動を変えていくかということです。反省することによって,勝つ(強くなる)ための方策を見つけ,次の行動を変えるヒントを得ることができるというわけです。

 したがって,ゲームがうまくなるために必要なことは,反省して改善することをつねに念頭に置くことだといえます。これによって学習が促され,素早く熟達に向かうことができるようになります。


まとめ

 ゲームがうまくなるために必要なことは以下の2つです。これらはほとんどの種類のゲームに当てはまります。

①練習して熟達すること
②自分のプレイを反省して改善点を見つけること

 まとめてみると,とてもシンプルであることがわかります。心理学の視点から,ゲームプレイという行為は学習の一種であり,プレイヤーの上達は学習の積み重ねによる熟達から生じるものと説明することができます。


 ゲームがうまくなるために必要なことは,勉強にもそのまま当てはまります。上記の①も②も勉強に必要なことであって,スポーツや仕事などの多くのことにも当てはまることです。心理学では「持続的な行動の変化」を学習と呼ぶので,一般的な「学習」とは少し意味が異なります。しかし,どれも人間の行動である以上,上達のために必要なことは根本的には共通しています。おおざっぱな見方になってしまいますが,結局はゲームも勉強も,学習という用語で共通点が見出せることから,異なるものとして見る意味はあまりないのかもしれません。

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