【D】髙橋宏斗の今季を振り返る
WBCという大舞台で、MLBの名だたる打者を三振に抑えて帰ってきた時は、「もう今年は2桁行けるな」と感じたものだ。ただ、結果は7勝止まり。今回は、そんな未来のエースの令和5年を振り返っていこう。
課題は点の取られ方
なぜ髙橋宏が7勝止まりだったのだろうか。三振は取れ、規定投球回には達成している。ひとつの要因はやはり援護のなさだったのだろうが、援護に乏しい中でも勝てる投手は勝てるのだ。やはり問題なのは彼自身の点の取られ方だ。これが改善されたら勝ち星は倍になるのではないか。
点を取られて気持ちがいいということはないが、気持ちの悪い点の取られ方はある。打者を必要以上に怖がって四球が嵩んだり、それを続けてしまって球数が嵩み6回で100球を超えてしまうというケースが多々あったのだ。もちろん、これでは長い回を期待することは出来ないのだ。同じ球数で毎回の登板で投球回をひとつずつ増やすだけでも、中6日と考え単純計算だが24回多く投げられる。ということは、味方の援護も24回分多く期待できるのだ。今季、髙橋宏がマウンドを降りてから味方が点を取るというケースが多々あったので尚更そう思う。彼に必要なのは、技術的な制球力ではなく心のコントロールだろう。
「脱力投法」来季も続けて
そんな髙橋宏は今季終盤、あるものを掴んでいるように見えた。彼の魅力といえば、150キロの中盤を常時記録する直球。彼と同い歳の我々が小学生だった頃には考えられないことであり、そのようなことが出来るのは大谷翔平のように人間離れしたバケモンだけであると考えていた。しかしながら、彼はそれを難なくやってのけていた。
ただ、剛速球は身体への負担が凄まじいもの。例に挙げた大谷も2度トミージョン手術を受けている。髙橋宏はまだまだ若いが、それでも故障は心配である。そんな彼が今季終盤、モデルチェンジをした。ピンチ以外での球速は極力抑え、150キロ前半でスピンのかかった球を投げるようになったのだ。この投法となってからは非常に安定しているように見えた。明らかに投げた瞬間ボール球と分かるような悪球もなくなり、直球と数キロほどしか変わらないフォークボールやスライダーがさらにキレているように見えたのだ。これを続けていけば、最多勝も夢ではない。背番号の先輩である吉見一起氏のように、予告先発に名前が出た瞬間に勝ちを確信できる投手となって欲しいものだ。
「中日のエース」に
このnoteにも過去に、Twitterの引用リツイートで「髙橋宏斗に厳しすぎる」とのご指摘を頂いたことがあるが、厳しいのは期待しているからだ。並のローテーション投手だと思っていれば、今季の活躍は手放しな褒めているところである。
やはりあれだけの投球ができて、なおかつ地元の中京大中京高を出ているということがあると、スターになると信じて疑わないのだ。中日を長い低迷から1人で持ち上げられる存在だと感じている方々は僕だけでは無いはずだ。それだけに、打てないことを勝ち星がつかない原因と決めつけたくないのだ。中日のエースといえば髙橋宏斗と言われるように、吉見氏以来途絶えている絶対エースの系譜に名を連ねる存在になって欲しいと切に願うばかりだ。