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【物語:自由詩シリーズ】第2話 風の中の季節

小さい頃のように二人で手を繋いで丘に出た。

もっと風が強かったわと私が言えば、
僕らが小さかったのさと兄が笑った。

岩陰に揺れる黄金のハリエニシダのように、
私たちは足を踏ん張って顔を上げ、
海からの風に向かう。
頬をかすめる冷たさが、けれど心地よかった。

帰ってきたのねと私が言えば、
これから始まるのさと兄が笑った。

私たちが愛してやまない色と形、
荒野を紫に染めるヒースの季節が近づいてくる。

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