第127号(2021年4月26日) 苦しいロシアの軍需産業 プーチン教書演説 ほか
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【インサイト】ロシアの新軍備計画と軍需産業の現況
4月13日、ロシア政府附属のロシア連邦軍需産業委員会(VPK)評議会のアンドレイ・エリチャニノフ第一副委員長が国営紙『ロシア新聞』のロングインタビューに答えました。
現在策定中の「2033年までの国家兵器プログラム(GPV-2033)」について、大まかな方向性が初めて示されるなど、興味深い内容が多いので、その概要を以下に紹介してみましょう。
新たな装備近代化プログラムの策定状況について
・GPV-2033の基本的な構成は今年9月1日まで作成される見込み
・さらに「2038年までの兵器、軍用装備、特殊装備開発の主要な方向性」という文書を策定し、GPV-2033のさらに先を見据えた装備開発の項目を盛り込む
・3月末の時点では、GPV-2033と新たな国防産業コンプレクス発展プラグラムを作成するための統一的な方法論が合意されている
・これに加えて2053年までの安全保障上の脅威を分析・評価した報告書を作成する。7月1日までに経済発展省が草案をVPK評議会に提出し、9月1日までに取りまとめて大統領に提出する
・GPV-2033については2022年9月1日までに顧客(主に国防省)からの提案を受け取り、VPK評議会で選別した上で関係省庁に諮る。特に産業貿易省との間で、軍需産業がこれに応える能力があるかどうかを協議する。その上で2023年7月1日にGPV-2033について大統領に報告する
GPV-2033の予算額と目標
・GPV-2033の総費用は国家経済の悪化にも関わらず減少しない
・2010-2020年のGPV(GPV-2020)は21兆2000億ルーブル、2018-207年のGPV(GPV-2027)は21兆7000億ルーブルであった。GPV-2033は21-22兆ルーブルとなろう
・2020年までにロシア軍の兵器、軍用装備、特殊装備の近代化率は70.1%に達成された。2023年には72.9%になる
・しかし、外国でも同等の装備が出現しており、これを上回る新型または近代化型の兵器をロシア軍に供給する必要がある。ここには国家の経済力と技術力も考慮せねばならない
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