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第180号(2022年6月13日) ロシア太平洋艦隊大演習と首折れ鯖

【NEW CLIPS】サルマート重ICBM特集 その3

【NEW BOOKS】バルトでの情報戦とロシアのハイブリッド戦に関する研究書二冊 ほか

Janis Chakars and Indra Ekmanis, eds, Information Wars in the Baltic States: Russia’s Long Shadow, Palgrave Macmillan, 2022.


Anna Autunyan, Hybrid Warriors: Proxies, Freelancers and Moscow's Struggle for Ukraine, Hurst & Co, 2022.

 今月に入ってからロシアの安全保障関連の研究所が割と豊作で、中でもアウトゥニャンの著作はロシアがハイブリッド戦争の一環として用いている非国家戦闘員に真正面から切り込んだものということで期待しています。
 一方、チャカルスとエクマニスの扱っているバルトでのロシアの情報戦というテーマについては東大先端研ROLESでも中井遼先生の研究成果がレポートとして最近公表されました。

 あとはSNSでの情報工作に特化したものとして、米RAND研究所からもレポートが出ています。
 その他、今回の戦争がらみで興味深かった日本語記事のうち、これまでご紹介できなかったものをいくつかまとめて供養しておきたいと思います。

「「小国は大国に従え」 ウクライナ軍事侵攻の背景にプーチン氏の旧ソ連的思考」『東京新聞』2022年6月14日 

「プーチン大統領が思い描く結末は「帝国の復興」」『CNN』2022年6月13日

 「強じんでないロシア経済 戦争続けられるのか 欧州の専門家が解説」『毎日新聞』2022年5月24日 

「ロシアの戦死者、若年・貧困地出身・少数民族が大半」『AFP BB NEWS』2022年5月24日

「ロシア軍の死者、侵攻3カ月でアフガン侵攻9年間に相当か 英国防省」『朝日新聞』2022年5月23日 

「“インターネット鎖国”を目指すロシアと、抜け道を探すVPNプロバイダーとの終わりなき攻防」『WIRED』2022年5月9日

 

【今週のニュース】教育を受けたければ軍に10年? 北海道沖でロシア海軍が演習 ほか

ウクライナ東部でロシア軍がじわじわと前進中

 ウクライナ東部のセヴェロドネツクを巡る戦いで、ロシア軍がじわじわと優勢を強めていると報じられている。同市のハイダイ市長が13日に認めたところによると、ロシア軍は市につながる三つの橋を全て破壊し、市内に残る防衛部隊の撤退やこれに対する補給が不可能になった。

 おそらくこれはセヴェロドネツク市街とその周辺に限った話で、おそらく現地のウクライナ軍主力は包囲殲滅を避けて撤退したと見られるが(上記の記事中にもそれを示唆する文言がある)、やはりロシア軍の攻勢に対してウクライナが苦戦していることは変わらない。
 その背景にあるのは砲兵戦力の差であるようだ。開けた東部の地形で戦えばロシア軍の火力の優位がものを言い始める、ということは早い段階から各国の専門家が指摘しており、それゆえに火砲やロケット砲の供給が優先されたが、どうもそれだけではロシアの優位を相殺できていないらしい、という話を最近の『産経新聞』が手際よくまとめている。

 また、元米陸軍人のヘンリー・シュロットマンがTwitter上で公開した分析によると、ロシア軍の火力発揮能力はウクライナ軍の約10倍に及ぶ。

https://twitter.com/HN_Schlottman/status/1536519251007356928?s=20&t=U52qZ1qSb3XaJWNl-DCwmA

 ただし、それでもウクライナがここまで持ち堪えた(そして現在も総崩れになっていない)のは、8年に及ぶロシアとの戦争で培った実戦経験や戦時動員による兵力の優位によるものと考えられる。また、ロシア軍の大隊戦術グループ(BTG)がそもそも定数を満たせていないんじゃないかという話も前回紹介した通りで、要はロシアもウクライナもそれぞれに弱点を抱えながら戦っているということになろう。
 なお、ウクライナ軍は最近、フランスから供与されたカエサル装輪自走榴弾砲の運用を開始している。


ロシア海軍で新造艦の起工相次ぐ

 6月12日の「ロシアの日」に合わせて、ロシア海軍向けの新造艦が相次いで起工された。主なものは以下のとおり。

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