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第251号(2024年1月22日)ウクライナ軍事援助に求められる「システム的思考」


【今週のニュース】受難のロシア空軍 ほか

北朝鮮がロシアに弾道ミサイルの供給を開始

 昨年夏以降、北朝鮮は砲弾やロケット弾数百万発分を供与していると見られてきた。さらに年明け以降、ウクライナに対して発射された弾道ミサイルの中には北朝鮮製のKN-23が含まれるようになり、どうやら弾道ミサイルの供与も始まったことが確実なようである。ロシアはこれまで、イランに対しても弾道ミサイルの供与を求めたものの拒絶されたと報じられており、北朝鮮の対ロシア軍事援助が際立ったものであることが改めて確認されよう。
 なお、米国はKN-23だけでなくKN-24の供与も疑っているようだ。

ロシア軍が新型自走榴弾砲の配備を開始

 1月5日、ロシア国営軍需産業ホールディングス「ロステフは、新型の2A88コアリツィア-SV152mm自走榴弾砲がロシア陸軍に納入されたことを明らかにした。2023年中に国家試験が完了したことを受けてのもので、部隊配備はこれが初となる。

受難のロシア空軍

 ウクライナ国防省情報総局(GUR)は、何者かがロシア空軍のSu-34戦闘爆撃機に火をつける様子を写した動画を公開した。のちに16歳のダゲスタン人少年が逮捕されているが、その思想的背景などは明らかになっていない。

 さらに1月14日には、A-50空中早期警戒管制機とIl-22M空中指揮機が何らかの攻撃を受け、前者が墜落、後者が激しい損傷を負った。誤射の可能性なども含めて真相ははっきりしないが、ウクライナ側は自軍が撃墜したと主張している。A-50のような空中早期警戒管制機は航空作戦の要であり、尚且つ高価で数も少ないので「高価値目標(HVU)」と位置付けられる。それゆえに通常はかなり後方から作戦するものだが、あるいはウクライナの対空戦闘能力に対して侮りがあり、前方に出ていたところを奇襲されたのかもしれない。
 なお、英国防省は、A-50がより後方の地域で活動するようになったことを根拠として、やはり1月14日は撃墜だったのだろうと結論している。

【インサイト】ウクライナ軍事援助に求められる「システム的思考」

 前号では、ウクライナのプラン-Bについて考えました。今回はもう少し掘り下げて、ウクライナに対する軍事援助の現状を詳しく見ていきたいと思います。

米仏が「火砲連合」を結成

 1月18日、フランス政府はウクライナ支援のための「火砲連合」の発足を発表しました。文字通りウクライナへの火砲供給を主眼に置いたもので、2024年中に72門のカエサル自走榴弾砲を生産してウクライナに供給する計画です。まずはその第一陣として、6門が供与される予定であると『ル・モンド』は伝えています。

 火砲連合はウクライナ防衛コンタクト・グループ(UDCG)、いわゆるラムシュタイン会合によって昨年10月に設置が決定された「能力連合」の一つで、このほかには英国とノルウェーによる海上兵器連合、エストニアとルクセンブルクによる情報技術連合、米国とオランダを中心とする戦闘機連合、フランスとドイツによる防空兵器連合があります。
 これに対して火砲連合はフランスと米国が中心ということになっていますが、前号でも扱ったように米国の対ウクライナ軍事援助は再開の目処が立っておらず、当面はフランスが中心とならざるを得ないでしょう。

依然として深刻なウクライナ軍の砲弾不足

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