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第241号(2023年10月30日) 長引く戦争に備えたロシア・ウクライナ双方の動き


【NEW CLIPS】ロシア戦略核部隊演習

 前回紹介したように、ロシアは10月に入ってから戦略核部隊演習に向けた動きを見せていた。結局、演習は25日に事前の予想通りに実施された。内訳は以下の通りである。

・667BDRM型SSBNトゥーラによるシネワSLBMの発射(バレンツ海からカムチャッカ半島のクラ射爆場へ)
・RS-24ヤルスICBMの発射(プレセツク宇宙基地から同じくクラ射爆場へ)
・Tu-95MS爆撃機2機による空中発射巡航ミサイルの発射

 演習の模様は以下で公開されている。

 他方、予想されていたオホーツク海からのSLBM発射は行われなかった。

【今週のニュース】長引く戦争に備えた動き

アウディーウカで激戦続く

 今月初頭以降、ドネツク北部のアウディーウカに対してロシア軍の激しい攻撃が続いている。攻撃が始まったのは10日ごろで、装甲車両を中心とした大規模な機甲戦を意図していたようだ。

 その後もウクライナ軍は3週間にわたってアウディーウカを保持し続け、ロシア軍に多大の損害を強要し続けてはいる。ゼレンシキー大統領によれば、ロシア軍の損害は丸ごと1個旅団分にも及んでいるという。

 ただ、ロシアが徐々に地歩を固めていることもまた事実であり、このままだとどこかの時点でウクライナ軍が包囲を受けるか、あるいは部隊保全のために撤退を余儀なくされるかという、これまでの戦争で見られたパターンが繰り返される可能性は排除できない。かといっていたずらに増援を送り込めばただでさえ停滞している南部戦線での攻勢がますます困難になるのは必定であり、ウクライナとしては頭の痛い問題と言える。

反転攻勢の新たな局面?

 こうした中で、ウクライナ軍はヘルソン東方でドニプロ川に渡河作戦を展開している。ウクライナ軍はこのエリアに3個海軍歩兵旅団を集中しており、川向こうのクリンキを占拠して小さな橋頭堡を築いたようだ。

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